労働法

2017年2月28日 (火)

労働者派遣法 鎌田耕一・諏訪康男編著 三省堂

鎌田耕一教授から、「労働者派遣法」を送ってもらいました。
鎌田先生ありがとうございます。立法過程に関与された労働法学者の著書は大変に参考になります。他の著者は、編者のほか、山川隆一教授、橋本陽子教授、竹内(奥野)寿教授です。

Rdshahakenho


同書の第6編、第5章にて、「派遣労働契約の無期転換後の労働条件について」が論じられています。

労働契約法18条により、派遣社員の派遣元との労働契約が通算5年を超える場合に、派遣社員は無期転換を申し込めます。派遣元はこれに承諾したとみなされますから、無期派遣労働契約が成立することになります。そのとき(労契法施行後5年の2018年4月)が迫っています。

この点については、実はいろいろな見解が示されていますが、

本書(鎌田教授執筆)では、

①無期転換になったときには、従前の有期派遣労働契約と同一ですから、そのときの派遣先の労働条件と同一になる。

②しかし、無期転換の当時、派遣先との労働者派遣契約が終了して更新されなかった場合にどうなるか。これについては、派遣労働契約は終了することなく、派遣元会社は、他の派遣先を紹介することなどにより雇用を継続する義務を負う。単に従前の派遣先との労働者派遣契約が終了したというだけでは解雇できない

と解釈されています。

②については、派遣労働契約も終了するという使用者側弁護士の書いた本も読んだことがあります。しかし、派遣労働契約は継続するという著者の解釈は当然です。立法過程に関与した著者の解釈は重みがあるとおもいます。

ただ、②については、無期転換の契約が成立した時点で、労働者派遣契約が成立しても、成立した無期労働契約の労働条件(特に賃金)は、従前の派遣労働契約の賃金が契約内容になるかどうかという問題もあります。

私は、新たな派遣先が見つかるまでは、従前の有期派遣労働契約の賃金が保障されると解釈すべきだと思います。

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2016年11月20日 (日)

「同一労働同一賃金の原則」について思う

 最近は、「同一労働同一賃金」について講演や学習会を頼まれることが増えています。これは、安倍総理が「働き方改革」として「同一労働同一賃金の原則」を実現すると表明したから俄然、関心が高まったということがあります。

■「同一労働同一賃金の原則」は男女差別を是正する法理
 私は、「同一労働同一賃金の原則」は男女差別是正の法理であって、非正規の労働条件の格差を是正する法理としては、「均等・均衡待遇の原則」と呼ぶ方が良いと思います。こういうと結構、質問、反論があります。例えば、「均衡」の考え方が不明確であるというふうに。


■「均等」と「均衡」
 私は、「均等」と「均衡」を相互対立的・排斥的な関係ととらえる必然性はないと思います。語義的には、「均衡」とは「釣り合いのとれていること」を意味します。また、「均等」は「複数の物事が互いに平等であること」という意味です。

 語感的には、「均衡」の方が広い概念と思われます。つまり、「均等」とは、ある物事について「釣り合い」をとるには「平等」でなければならない場合があるという意味に考えられるからです。

 「均衡」と言うと、あたかも「軟弱だ」とか「敵」であるかのように非難する論者もいます。昔、私が「均衡も均等も本質的な違いはないのではないか」と言ったら、「均等でなければならず、均衡で良いと言うのはおかしい」と非難されました。当時、丸子警報器事件の長野地裁上田支部判決が出されましたが、支部判決に対しても「均等と言いながら、2割の格差を認めた判決はおかしい」と非難していました。


■日本の法律は「均衡・均等」
 労働契約法3条2項が「職務の均衡を考慮」すること、パート労働法1条も「均衡のとれた待遇」と定め、労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律6条は、派遣労働者について「均等な待遇及び均衡のとれた待遇の実現を図る」と定めています。

 日本の労働法には、「同一労働同一賃金の原則」という「文言」は規定されていません(ILO第100号条約のことは後述します。)。だから日本の実定法解釈としては、出発点は「均衡」及び「均等」の理念だというべきでしょう。こう言うと、すぐまた「そもそもその実定法が怪しからんのだ」という人がいます。でも、それを言っても仕方がありません。現に存在している法律をどう解釈するのかが、実務家の仕事なんですから。(もちろん、立法の問題点と限界を指摘することが重要なのは認めますが。)


■非正規労働者の格差是正


 現時点の実定法の解釈としては、雇用形態が異なる非正規労働者の労働条件の改善・是正のための趣旨は、均衡及び均等の待遇確保を理念とすべきでしょう。これを定めた実定法は、労働契約法20条の有期契約による不合理な労働条件の禁止、そして、パート法8条のパート労働を理由とする不合理な労働条件の禁止と同法9条の通常の労働者と同視できる場合の差別的取り扱いの禁止などがあります。
 ただし、労働契約法20条の「不合理」の内容及び判断基準は明確ではありません。例えば、長澤運輸事件の東京地裁判決は、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲が同一の場合には特段の事情がない限り不合理となるとしました。他方で、同事件東京高裁判決は、③その他の事情も含めて幅広く考慮して不合理であるかどうかを決めるべきとしました。

 私は、「不合理」であるかどうかを判断する指針を「均等・均衡待遇の理念」とし、これは「およそ人は、その労働に対して等しく報われなければならない」という「人格の価値を平等とみる市民法の普遍的理念である」を根拠にすると考えればよいと思います(丸子警報器長野地裁上田支部判決)。「職務」が同一で、「職務内容及び配置の変更の範囲」が同一であれば、労働条件の格差を正当化する事情がない限り、原則は均等に取り扱われるべきでしょう。

 しかし、例えば定年再雇用という事情、あるいは産休代替の一年間だけの限定した有期契約という事情などがあれば、必ずしも正社員と100%同一でなければならないとはいえないでしょう。ただ、どの程度の相違であれば許容されるのかが問題です。


■「同一労働同一賃金の原則」と男女差別是正法理

 「同一労働同一賃金の原則」は、ILO第100号条約の「同一価値労働同一報酬の原則」のことです。これは、男女の賃金格差(差別)を是正する法理です。日本もこれを批准しています。しかし、これは男性労働者と女性労働者を比較して、同一価値労働の場合には同一報酬とするという原則であって、これを超えて、性別にかかわりなく同一価値労働をしていれば同一報酬であるという一般的な規範ではないと言わざるを得ないでしょう。

 なお、「同一価値労働」というのは、同一の労働(職務)でなくとも、同一価値労働であれば良いという意味です。例えば、看護師と検査技師の職務は同一ではありませんが、同一価値であるかどうか比較できるということです。

 この「同一価値労働同一報酬の原則」(「同一労働同一賃金の原則」)は、実際には、主として雇用形態が同じくする男女間の賃金について差別であるか否かの規範となるものでしょう。つまり、正社員同士の「総合職」と「一般職」との格差をどうするかという問題に主として適用されることになります。

 例えば、男性は全員が「総合職」となるが、女性は極一部だけが「総合職」となり、大多数の女性が「一般職」という企業の場合、男性「総合職」といっても、ほとんど総合職らしい仕事をせず、女性一般職と同様な労働をしていること多いでしょう。形式的には「総合職」には配置転換があるとされているが、普通の男性「総合職」は実際には配置転換はない(優秀な一部の男性正社員のみが配転や昇進していく)。にもかかわらず、優秀な女性一般職は、レベルの低い普通の男性「総合職」よりも賃金が少なく昇進もできない。

 これを是正するために、「同一価値労働同一報酬の原則」が基準となり、具体的には労基法4条や雇用機会均等の解釈適用の問題となります。

 これに対して、非正規労働者の格差是正の法理は、労契法20条やパート法8条・9条であり、これらは「均衡・均等の待遇の理念」として区別して整理するのがわかりやすいと思います。

  これを「同一労働同一賃金の原則」と呼ぶと、上記の男女差別是正法理と混同されてしまいます。ただし、雇用形態による格差是正の法理を確立させることは、男女差別是正にとっても良い効果があります。

 今時、女性だから差別しているんだと自認する使用者はいません。実際には、「雇用形態が違うから」ということで、女性が多い比率の非正規労働者の労働条件が低くされているわけです。女性労働者の約56%が非正規であることが如実にその事実をあらわしています(男性の非正規は25%程度)。だから非正規の労働条件の是正をすることは、女性労働者の格差是正に直接につながるのです。


■そもそも、日本で「同一労働同一賃金の原則」が労働契約の基本になるのか


 「均等・均衡待遇の理念」を批判して、「同一労働同一賃金の原則」を正面から労働契約法の原則として、効力規定を定めるべきとする論者もいます。
 その狙いは、正社員についても「同一労働同一賃金の原則」をあてはめるべきという考え方です。なお、この論者は、「同一労働同一賃金の原則」を「修正」して理解をしています。すなわち、「同一労働同一賃金」とは、同一労働であっても、年齢や勤続年数が異なれば必ずしも同一賃金でなくても良いとするのです。

 しかし、これを「同一労働同一賃金の原則」と呼ぶのは据わりが悪いように思います。「同一労働」(同一職務)であると「要件事実」を主張立証すれば、「同一賃金」(同一報酬)という「法律効果」が発生するというのが、「同一労働同一賃金」という規範からの帰結でしょう。
 「同一労働」を主張立証しても、それだけでは「同一賃金」の効果が発生しないというのであれば、「同一労働同一賃金の原則」を、どのような文言で表示されるのでしょうか。結局、不合理な労働条件の禁止と実質的に異ならない文言になるしかないように思います。それではもはや「同一労働同一賃金の原則」とは言えないのではないでしょうか。

 また、こんなふうに「同一労働」の原則を修正(緩和)してしまったら、男女差別を是正する法理としては役に立たなくなってしまうと思います。


■正社員の賃金の原則も「同一労働同一賃金」で良いのか


 正社員も含めて「同一(価値)労働同一賃金の原則」を法的効力のある実体法とした場合には、日本の雇用社会に「革命的」な影響を与えることになります。
 例えば、25歳と50歳の労働者が担当している職務が大して違わないことは多くあります。ところが、日本企業では年功的な運用がなされて、50歳の労働者の方が賃金が高くなっています。これが許されなくなります。
 また、ホワイトカラー職種では、IT技術を使いこなす若手のほうが効率的かつ質の高い労働力を提供しているものです。中高年の賃金のほうが高いのはおかしい。
 のみならず、同一労働同一賃金の原則からいけば、労働者が担当している職務が変われば、当然、給料も変わることになります。一般的な事務労働と専門的知識経験を必要とする労働では当然、賃金は変わります。
 日本では、労働者の配転には使用者に広い裁量が認められます。同一労働同一賃金の原則を貫けば、使用者の一方的な配転によって労働者の賃金はそのたびに変わることになります。それは、いままで戦後30年、50年を経て形成されてきた日本の賃金制度の前提と大きく異なり矛盾します。


■欧米の「職務給」や労使の力関係の相違点
 

 欧米社会では「職務給」が定着しており、職務の配転を使用者が裁量で行うことはできません。しかも、「職務」ごとの給料は、産業別労働組合が使用者団体と労働協約を締結して、いわば社会的に決まっています
 日本には、このような強力な産業別労働組合は存在しないし、近い将来にそのような産別労組が強化されることはありえないでしょう。
 したがって、正社員の賃金も含めて、日本において労働契約の原則として、同一労働同一賃金の原則を法定化することは、欧米との社会的実態が異なり、日本で導入することには慎重にしなければならないと思います。
 新自由主義の立場にたつ労働経済学者や経営者は、同一労働同一賃金の原則の日本での導入に積極的です。また、配転による賃金減額を争う裁判では、使用者代理人の弁護士が配転による賃金減額の正当性を主張するために「同一労働同一賃金の原則」を主張します。
 社会モデルとして、ヨーロッパ型の職務給と企業横断的な産別賃金協定は魅力的ですが、日本では、そのような基盤はありません。


 日本の労働組合は、長年にわたり生活給思想で賃金を要求してきました。
 そうである以上、今、いきなり法律によって、正社員も含めた「同一労働同一賃金の原則」を法律に定めるということは賛成できません。

 確かに、中長期的には、日本も「職務給」の方向に賃金がかわっていくように思いますが、それは徐々に、労働争議をともなう激しい労使交渉を経て実現していくものなのでしょう。賃金を法律ですべて決めることは土台無理なように思います。



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2016年11月 8日 (火)

長澤運輸事件東京高裁判決

 東京地裁民事第11部(佐々木宗啓裁判長)は、平成28年5月13日、長澤運輸という一般貨物自動車の正社員運転手が定年後継続雇用として有期雇用で再雇用(嘱託社員)されたが、賃金が減額されたことが、労働契約法20条違反であるとして、正社員当時と同じ賃金を支払えとの判決を言い渡した。

 その控訴審東京高裁第12民事部(杉原則彦裁判長)は、平成28年11月2日、東京地裁の判決を取消して労働者側を逆転敗訴の判決を言い渡した。

■事案の概要
  会社(長澤運輸)は一般貨物自動車運送事業者で、セメント、液化ガス、食品の輸送事業を営んでおり、従業員は66名いる。定年は60歳であり、嘱託社員就業規則では、定年後1年期の有期雇用契約をして継続雇用し、賞与・退職金を支給しない旨を定めていた。
 原告らは3名。うち原告X1は、平成26年3月31日に定年退職し、同年4月1日以降も乗務員として勤務している。正社員(無期契約労働者)と嘱託社員(有期契約労働者)の労働条件(賃金)は次のように差があった。

正社員当時⇒嘱託社員
基本給 11万2700円~12万1500円⇒ 12万5000円
職務給 8万552円~8万2952円 ⇒なし
歩合給  3.1%~3.7% ⇒10~12%
役付手当  組長1500円⇒なし
精勤手当  5000円  なし
住宅手当  1万円  なし
家族手当  5000円  なし
賞   与  5ヶ月分 ⇒なし
 
 労働契約法20条は、有期による労働条件の相違(正社員との労働条件の相違)について、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を考慮して不合理であってはならないと定めている。
 そこで、原告ら3名は、定年後の労働条件の相違(格差)が労契法20条に違反するとして会社に差額賃金(予備的に損害賠償)を請求して裁判を提起した。

■東京裁判決の内容
争点Ⅰ<定年後の有期再雇用に労契法20条の適用があるか>
 被告会社は、賃金を下げたのは有期が理由ではなく、定年後再雇用であるから賃金を切り下げたのだから、労契法20条は適用されないと主張した。しかし、東京地裁判決は、「労働条件の相違が、期間の定めの有無に関連して生じたものである」ことで足りるとして、労契法20条の適用があるとした。

争点Ⅱ<本件賃金の相違は不合理となるか>

(1)「上記①(職務の内容)と②(職務の内容及び配置の変更の範囲)を明示していることに照らせば、同条がこれらを特に重要な要素と位置づけていること」は明らかであるとして、(上記①及び②が同一である本件の場合には)「労働者にとって重要な労働条件である賃金の額について、有期契約労働者と無期契約労働者との間に相違を設けることは、その相違の程度にかかわらず、これを正当と解すべき特段の事情がない限り、不合理であるとの評価を免れない」とする。

(2) 他方で、「賃金コストの無制限な増大を回避しつつ定年到達者の雇用を確保するため、定年後継続雇用者の賃金を定年前から引き下げることそれ自体は合理性が認められる」としつつ、「しかしながら、(①及び②)が全く変わらないまま賃金だけを引き下げることが広く行われているとか、そのような慣行が社会通念上も相当なものとして広く受け入れられているといった事実は認められない」とした。

(3) そして、「原告らに対する賃金の切り下げは、超勤手当を考慮しなくとも、年間64万6000円を大幅に上回る規模である」と認定し、「これらの事情に鑑みれば、…定年退職者を再雇用して正社員と同じ業務に従事させるほうが、新規に正社員を雇用するよりも賃金コストを抑えることができるということになるから、被告における定年後再雇用制度は、賃金コスト圧縮の手段としてのい側面を有していると評価できる」。

 しかし、「被告において上記のような賃金コスト圧縮を行わなければならないような財務状況ないし経営状況に置かれていたことを認めるべき証拠はなく」、「被告の再雇用制度が年金と雇用の接続という点において合理性を有していたいものであったとしても、そのことから直ちに、嘱託社員を正社員と同じ業務に従事させながらその賃金水準だけを引き下げることに合理性があるということにはならない。」

■東京高裁判決
 争点Ⅰについては、東京地裁とまったく同じ解釈をして、定年後の有期再雇用の場合でも労契法20条が適用があるとした。

 争点Ⅱについては、①及び②の要件を地裁のように重視せず、「その他の事情」を含めて「幅広く総合的に考慮して判断する」とした。

(1)「定年後継続雇用者の賃金を定年時より引き下げることそれ自体が不合理であるということはできない」とする。その理由は、高年齢者雇用安定法により「全事業者」について「定年到達者の雇用を義務付けられてきたことによる賃金コストの無制限の増大を回避して、定年到達者の雇用のみならず、若年層を含めた労働者全体の安定的雇用を実現する必要がある」ことをあげる。

(2) 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の平成26年調査結果によれば、定年到達時と同じ仕事をしている割合(運輸業)は87.5%であり、継続雇用者の年間給与の水準の平均値が68.3%、中央値が70%で、従業員数50~100人未満は平均値70.4%であるとしている。

(3) 一審原告らの賃金減額は、超勤手当を考慮しなくとも年間64万6000円であるが、年間X1が24%、X2が22%。X3が20%であり、上記JILPTの調査による平均の減額率をかなり下回っている。このことと「本業の運輸業については、収支が大幅な赤字となっていると推認できること」から、「年収ベースで2割前後賃金が減額になっていることが直ちに不合理であるとは認められない」とした。

(4) その他、正社員の能率給に対応するものとして、歩合給を設けて支給割合を高めたこと、無事故手当を増額したこと、老齢厚生年金が支給されない期間について調整給支払ったこと、組合との間で一定程度の協議が行われ、一定の労働条件の改善を実施したことを考慮して、労契法20条違反ではないとした。


■コメント

 東京地裁判決も、東京高裁判決と同様、定年後再雇用の場合に、賃金を切り下げること自体を不合理とはいっていない。しかし、東京地裁判決は、同じ職務内容かつ職務内容及び配置の変更の範囲も同一の場合に2割強の減額が合理的というためには、特段の事情が必要であるとした。①と②の要件を重視する東京地裁判決のほうが自然な解釈であろう。

 他方、東京高裁判決は、JILPTの調査結果から、3割くらいの減額は社会的に許容されているとして、長澤運輸では2割強にとどまっているから合理性があるとしたものである。

 ただ、実際の減額は超勤手当も考慮しての賃金差額(原告3名の平均)は、定年前1年間の年収が527万円だったものが、定年後再雇用1年間の年収が374万円と29%の減収となっている。高裁が2割強と認定したが、これは超勤手当をのぞいた月額給与の差額と思われる。

 しかし、JILPTの調査結果が実態だとしても、労働契約法20条の施行前の実態を基準にすることは、有期雇用の労働条件を改善しようという労契法改正の趣旨に反するのではないだろうか。

 なお、東京高裁判決も「2割強の減額は直ちに不合理とはいえない」としたまでで、3割を超える減額まで合理的だとは言っていない。私が担当している定年後再雇用の賃金減額事件は、正社員当時の基本給から39%も減額された事案であり、その他の手当も含めれば月額で45%も減額された事案である。このような場合にまで合理性があるとするわけではないだろう。

 また、東京地裁も東京高裁も、個々の労働条件ごとに合理性を判断していないことが両判決ともオール・オアナッシング、「白か黒か」の硬直的な結論につながったように思う。


 貨物自動車のトン数や種類ごとに支給される職務給を、同じ仕事(同じ貨物自動車の運転・荷下ろし)をしているのに、有期社員に支給しないことが果たして合理的であろうか。この職務給が、貨物自動車に乗務する運転士の労働負荷に対応して支払われる労務対価であれば、同じ仕事に従事する有期社員に一切支給しないことは不合理であろう。


 賞与についても、正社員に支給される5ヶ月分賞与が給料の後払い的な性格が強いものであれば、正社員と全く同一水準であるかどうかはともかく、一切支給しないということが果たして合理的なのか否かを検討すべきではないだろうか。

 長澤運輸事件は最高裁に上告された。大阪高裁のハマキョウレックス事件判決(定年後再雇用ではない有期社員の運転士と正社員運転士との労働条件の相違が問題となった事件)も、最高裁に係属している。

 おそらくあと一年くらいで、両事件についての最高裁判決が出されるだろう。

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2016年3月21日 (月)

ベトナム労働法 印象記

■ベトナム労働法調査

 今年3月中旬に、ハノイのベトナム労働総同盟(ベトナムの労働組合中央団体)、ベトナム商工会議所(ベトナムの国営企業や民間企業、外資系企業が入会している使用者団体)、現地の法律事務所、ジェトロのハノイ事務所などを訪問して、短時間ですが説明を受けました。  現地の方の説明を私が誤解している可能性もあると思います。正確性に問題はありますが、ベトナム労働法事情の印象を簡単に記します。

■ベトナムについて  

 ベトナム社会主義共和国は、社会主義国ですが社会主義的市場経済を推進するという、ドイモイ路線を1986年から 進めており、労働市場も市場機能を重視しています。企業も、国営企業だけでなく、一般の民間企業、外資系企業があります。  労働組合も企業レベル、地方レベル、中央レベルで存在しており、賃金も各企業体で決める建前になっています。ストライキも、法的に容認されて実際にストライキが実施されています。社会主義国としては珍しい部類です。

■ベトナムの基本的な情報  

 

総人口は約9100万人。国民の平均年齢は約29歳、と子どもと若者が多数を占める。  

 

労働力人口は約5370万人。うち、農業従事者は約48%、工業従事者は約52%。  

 GDP成長率は、ここ数年6%を超えているとのこと。 2016年も6%後半の成長率が見込まれています。失業率は2%台。ということで完全雇用状態ですね。

 しかし、ベトナムの1人当たりのGDPは、インドネシアやフィリピンよりも少なく工業化は進んでいない。

■労働組合のナショナルセンター  

ベトナム労働総同盟一つ。

労組員数は約900万人との説明でした。  

労働力人口の中で半分が工業労働者として、組合組織率を推計すると約3割。  

社会主義国なので、もっと組織率が高いと思ったのですが、意外に少ない。


■ベトナム労働法

 労働法典が2102年に大改正されています。ジェトロの仮訳があります。  
 無期労働契約と有期労働契約(1年から3年)があるが、有期労働契約は1回のみの更新で2回更新すると無期労働契約となる(22条2項)。  
 ベトナムの労使とも「ベトナムでは長期雇用を推奨するのが政府の政策であり、企業の方針だ」と強調していました。

 他方で、実際の日系企業の経営者の方や地元の人は、ベトナム労働者は転職が頻繁で流動化が進んでいるため、今は労働者の雇用を長期化して、労働力の質を高めるのが課題というのが実情ということを聞きました。  


使用者が労働者を解雇できる場合を法律が限定列挙しています(38条)。  
a 頻繁な労働契約に定めた業務の不履行  
b 労働者の病気・事故によって一定期間(無期12ヶ月、有期6ヶ月後も回復しない場合)治療後も回復しない場合  
c 天災、火災又は政府が規定するその他の不可抗力の理由によりやむを得ず生産規模縮小及び人員削減を行う場合

   
 使用者が不法な解雇をした場合には、原職復帰(労働者の就労請求権)と労働者が復職を望まない場合の金銭解決の基準を法律で定めています(42条)。  
1 使用者は、労働者の復職認めて、解雇期間の給与、社会保険、健康保険及び最低2ヶ月の給与を支払う。  

2 労働者が原職復帰を希望しない場合には、使用者は1項以外に解雇手当(勤続1年に付き半月分の賃金相当額)を支払う。  
 ベトナムでは裁判所訪問はしなかったので、司法統計はわかりませんでした。事前勉強で日本に留学しているベトナム人弁護士に聞いたところ、個人的労働紛争の訴訟件数は、2013年で4417件、2014年で4682件があるとのことでした。ただ、ベトナムの人民裁判所の判決は公開されておらず、詳細はわかりません。

■集団的労使紛争について  

 集団的労使紛争(スト)は2011年で978件で多かったが、2012年は500件程度、その後、300件程度に減少している。


 集団的労使紛争が発生するのは、外資系企業が多く、台湾や韓国系の企業が多いのが現状であり、これらに比較して日系企業は少ないといわれている。  

 ベトナムでは、集団的労使紛争が件数をみてもわかるとおり、特に深刻化しているわけではないようだ。ストは法律に定めた手続がなされていない「山猫スト」が多いようだが、労働調停員や労働仲裁機関によって解決されている。


■近年の最大の関心事-賃金上昇


 ベトナム政府は、2018年に最低賃金を400万ドンにさせる方針を持っており、最低賃金を上昇させているとのこと。

 2014年で前年比14.9%、2015年も同14.8%をアップしている。一番高いハノイやホーチミン市では、月額310万ドン(約140ドル)となった。 また、最低賃金にだけでなく、平均賃金の上昇率は、ここ数年の平均が10%となっており、賃金上昇が顕著。ただし、中国やインドネシアとの賃金との比較ではまだ低い水準と言われている。


■ベトナム人の仕事観  

 ベトナムは、労働者の転職が結構頻繁で、職場への定着率を高めるのが労使双方の課題になっているようです。
 また、労働者の仕事観は、技師やエンジニアであればその仕事のみを行い、他の一般業務は行わないというジョブ型の発送が強いとのことです。欧州型のジョブ型的な仕事観のようです。
 現地の日系企業の管理者の方は、ベトナムの労働者は、真面目で嘘をつくようなことはないと言っていました。


■ベトナムとTPP-外資導入  

 労働組合も商工会議所もTPPに期待をかけており、TPPの批准によって、外資導入をすすめたいという姿勢でした。労働法改正による整備も外資導入という側面が強いように感じました。労使関係の要請として2012年の労働法大改正がなされたという観じはしませんでした。  

 最近は、日本は大型のベトナム直接投資は少なくなっているとのこと。韓国など直接投資が目立っているそうです。9000万人を超える人口をかかえて、国民も子どもや若者が多く占めていますから、これからさらに発展するでしょう。

■司法事情
 裁判所(人民裁判所)の判決が公開されておらず、どのような運用がなされているのか、不透明だとの意見もあります。社会主義国ということもあって、権力集中が特徴であり、司法部は独立しておらず立法機関(国会)の解釈権眼のほうが重視されているそうです。
 実体法の整備は、労働法を含めてそれなりに進められているのですが、司法手続の透明化は遅れているようです。
 法曹養成としては、弁護士は、大学の法学部、その後、司法学院(ロースクールと呼ばれる)に進み、座学と実務研修をして試験に合格したら弁護士になるそうです。

 裁判官と検察官は、弁護士養成と別ルートで、裁判所と検察に採用されて養成されることになっています。
 戦前日本の司法官制度のようなものです。刑事法廷も、裁判官、検察官の席は床より高く、床に被告人と弁護士が座るという形だそうです。

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2016年2月15日 (月)

「同一労働同一賃金原則」の法制化?

■安倍首相の答弁

安倍首相が、2月5日、衆議院予算委員会にて「非正規労働者の『同一労働同一賃金の原則』を実現する法制化を検討する」旨を述べたそうです。


安倍首相 「仕事の内容や経験が同じなら同一待遇を保障する「均等待遇」を検討する。」

http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/05/integrated-wage_n_9172176.html

首相は5日の予算委で、同一労働同一賃金について「必要であれば法律を作る」と述べ、法制化の検討に初めて言及。さらに「春に『同一労働同一賃金』実現の方向性を示したい。仕事内容や経験などが同じであれば、同じ賃金を保障する『均等待遇』に踏み込んで検討する」とも語った。  



ところで、賃金や労働条件は、使用者(会社)と労働者の「合意」(労働契約)で決定されます。しかし、労働者は使用者に比して弱い立場なので、正社員よりも低い賃金で働かざるを得ないのが現実です。非正規労働者の低い賃金も、いったん合意した以上、法的には有効とされます。両当事者の合意で決まった以上、労働局も裁判所も、法律上の根拠がなければこれを修正することはできません。

■ 今までの法規制  

漸進的ながら、労働契約法等が「同一労働同一賃金」的な規定を設けてきました。ちなみに、労働基準法4条に「男女同一賃金の原則」の定めがありますが、男女を超えた「同一労働同一賃金の原則」とは解釈されてきませんでした。また、ILO第100号条約(同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約)も同様なものとして解釈されてきました。そこで、同一労働同一賃金の実定法規は日本には存在しないとするのが、過去の裁判所の解釈でした。  


ところが、平成24年に改正された労働契約法20条は、「有期労働契約であることによる不合理な労働条件を禁止」しました。

また、平成26年改正のパート労働法も、同法8条で「パート労働者の不合理な労働条件を禁止」し、同9条で「正社員と同視できるパート労働者の差別的取扱いを禁止」しました。

平成27年には、いわゆる「同一労働同一賃金推進法」(正しくは、「労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律」)が「労働者が、その雇用形態にかかわらずその従事する職務に応じた待遇を受けることができるようにすること」を理念として掲げました。これは派遣労働者を対象とする法律です。ただし、基本理念を定めただけで具体的な手段は何ら定められていません。  

今回の安倍首相の答弁は、「労働者の職務に応じた待遇の確保」を念頭において、雇用形態(雇用契約)が違っても、「仕事の内容や経験が同じ」なら、「同一労働同一賃金の原則」が妥当することを法律として検討すると、かなり踏み込んだ内容となっています。これは、例えば、派遣労働者が派遣先企業に雇用されて働く正社員と「仕事内容や経験が同じ」ならば、「賃金を同一」にする法律を検討することを意味しています。

■「同一労働同一賃金の原則」と「日本型雇用」という「壁」  

もっとも、日本の場合には、賃金は「職務」に応じてのみ決まるものではありません。
労働者の「潜在的職務遂行能力」とやらの「属人的要素」で決められることになっています。そもそも就職する際は、ほとんどの場合に「職務」が特定されず、会社の指示で「職務」や「配置」を一方的に指定され、その後も「職務内容」や「配置」が一方的に変更されることになっています。  

会社も正社員であれば、そのときその仕事を担当していたとしても固定されることはなく、将来、状況の変化に対応して「職務」や「配属」が変更されるものと考えています。職務内容のみで賃金が決まるのではなく、そのときの職務や配属が何であろうと、正社員は「同じように一生懸命働けば、職務や部署が変わろうと賃金は下がることなく昇給できる」と考えてきました。だから、塩崎厚労大臣は、「職務給を導入」することが前提であるとの趣旨を答弁したのでしょう。  

ですから、日本では「短期的に2、3年程度しか働かない非正規労働者と、定年まで様々な部署で残業を厭わず働く正社員の賃金とは、たまたま仕事が同一であったとしても、賃金が同じというわけにいかない。」と考えられたのです。濱口桂一郎さんは、このことを「『ジョブ型』と『メンバーシップ型』」としてわかりやすく説明されています。  

この「メンバーシップ型」の考え方が、労働契約法やパート法の条文の中にも入っています。労働契約法20条でいえば、労働条件の相違(格差)の不合理性を判断する際の考慮要素として「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」を入れています。これは、仕事内容や配属部署の変更の範囲が異なることが「格差」を合理化する要素になるという意味です。

非正規労働者の多くは、有期契約で、職務内容が特定され、将来も変更がないと想定されています(ジョブ型)。

他方、正規労働者(正社員)の場合は、無期契約で長期雇用が前提とされて、職務内容も配属部署も変更されることが予定されています(メンバーシップ型)。だから、賃金が異なるのは当然という考え方があります。  

しかし、「ジョブ型」も「メンバーシップ型」も理念的な類型にすぎないでしょう。
マクロ的に観れば、その説明は筋が通っています。しかし、ミクロ的に観れば、必ずしも正社員の働き方の実態というわけではありません。 確かに、正社員のうち一部の大企業では、プラチナカラーのエリート幹部(候補)正社員は、職務内容や配属部署の変更の範囲は広いでしょう。

これに対して、ノン・エリートの普通の正社員とジョブ型の非正社員の職務内容や配置の変更が、それほど違うわけではないのです。例えば、中小の信用金庫や地銀の預金業務や窓口業務担当する派遣社員と、預金業務や窓口業務を担当する一般正社員の職務内容は同一ですし、その普通の一般正社員の多数は職務内容や配属が広範囲に変更されるということもない(実態はほとんど配転がなく、支店統合の際に配転するのが大多数という職場も多い)。ただ、建前的に管理職などへの昇進の可能性がつく程度です。

今や非正規労働者も、正社員と同様の恒常的な職務について、5年を超えて働く契約社員や派遣社員は珍しくありません。 ですから、このようなノン・エリートの普通の正社員と非正規労働者の労働実態を比較すれば「同一労働」と評価でき、建前的な「メンバーシップ型」を過度に強調して格差を合理化することは適切ではないと思います。

メンバーシップ型の企業を考えるとき、多くは上場企業などの大企業を念頭において議論してしまう傾向があると思いますが、彼ら・彼女らエリート正社員は極少数派です。  

安倍首相の言うように「雇用形態が異なっていても、仕事内容と経験が同じであれば同一賃金」であるべきでしょう。また、完全に同一労働でなくても、実質的に同一であれば、それに応じた賃金(待遇)であるべきでしょう。

■「実質的な同一労働」と「同一価値労働」  

何をもって「実質的に」同一労働とするかは、欧米と異なり、日本のように社会的な職務分掌や評価手法が定まっていない社会では困難がともないます。得てして「同一労働同一賃金の原則」を労働者が主張した場合、裁判所は「完全な同一」労働の立証を求めがちです。これを厳格に求められると、細かな違いであっても「同一でない」とされかねません。

また、「同一価値労働」は、「職種」が同一ではない場合でもあっても「価値」が同じであれば良いという考え方ですが、職種の「価値」が「同一」と評価する基準を策定するのも、日本では困難があります。米国的な職務分析論の有用性が主張されますが、ジョブ型社会である米国の職務分析手法が「メンバーシップ型」の日本に妥当するか論争があります。日本では職種による賃金の違いよりも、同じ職種であっても企業規模による賃金の違いのほうが目立ちます。日本の雇用社会にも妥当する手法を確立する課題が残ります。  

厳格な「同一労働同一賃金の原則」手法よりも、「不合理な労働条件の格差の禁止」手法の方が「柔軟」で使い勝手が良い側面もあります。「完全に同一労働ではないが、賃金格差を合理化できるほどの違いではない。」とか、「同一労働ではないが、正社員の賃金の8割以下は不合理である。」とする余地があるからです。

もっとも、これには「不合理性の判断基準が不明確」であるという欠点があります。また、労働契約法20条に定められている「職務内容及び配置の変更の範囲」という要素(メンバーシップ型の要素)が強調されると、「不合理」性を限定することになってしまいかねません。 その意味では、「労働者の職務に応じての待遇の確保」の法理念に「同一労働同一賃金の原則」を入れ込む改正にも意味があります。

さらに、これを具体化する立法政策(派遣法改正含む)も必要不可欠です。そこまでやる気があるのか要注目です。アベノミクスの評判をあげるための、ただのリップサービスではないだろうとは思いますが・・・。

また、労働法学の「同一(価値)労働同一賃金の原則」だけでなく、日本経団連的な職務遂行能力を前提とした「同一価値労働同一賃金」や成果主義賃金と結びついた「同一労働同一賃金」(これは濱口桂一郎氏の「働く女子の運命」135頁に詳しい)が登場しており、今後の議論は錯綜しそうです。

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2016年1月31日 (日)

解雇の「労働局紛争調整委員会・あっせん申請」が少ないことに驚く

厚労省の検討会資料をみて

 現在、厚労省労働基準局の下で、「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」が開催されています。 

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou.html?tid=307309

 この検討会の検討事項は次の二つです。

(1)既存の雇用終了をめぐる個別労働紛争解決手続の有効な活用法。

(2)解雇無効時における金銭救済制度の在り方(雇用終了の原因、補償金の性質・水準等)とその必要性。

 
 一つ目の論点に関して厚労省の作成した資料の中で気になった点が一つあります。

 現在、「雇用終了に関する紛争」(解雇・雇止め)の紛争解決手続として、主なものとして、次の三つがあります。

 労働局の相談・あっせん手続

 裁判所の労働審判手続(労働審判)

 裁判所の訴訟手続(裁判)

 厚労省の作成した資料によると全国の「雇用終了に関する紛争」の平成26年度の状況は次のとおりなのです。詳細は上記WEBから資料が観られます。

 

 個別労働紛争解決 相談件数     3万89666件

    あっせん申請件数   1392件

② 裁判所の労働審判 新受件数      1742件

           調停成立      1242件

③ 裁判の解雇等訴訟 新受件数       967件

           終局事案          917

「個別労働紛争解決」とは、厚労省が都道府県においている地方労働局での手続で、相談、助言・指導、あっせん申請の三つ手続が用意されています(個別労働関係紛争解決促進法)。 

 相談 ⇒ 助言・指導 ⇒ あっせん申請

 この手続の概要は次のようなものです。 

 労働者は、解雇等の紛争に直面したら労働局に総合労働相談センターに相談できます。そして、必要な場合には労働局長が助言・指導を行います。

 また、当事者は、労働局の紛争調整委員会(弁護士や学者等)にあっせん手続を申請して、が相手方を呼び出してあっせん手続をすることができます。ただし、労働局のあっせん手続には強制力はありません。しかし、手続費用は無料で労働者が弁護士を依頼する必要もありません。

 要するに「あっせん申請」は紛争調整委員会が使用者に呼び出して、労働局の紛争調整委員会で当事者から事情を聞いて、あっせん案を提示する手続です。相談や助言・指導よりも解決に向けての手続なのです。


■あっせん申請の件数と比率が極めて少ない

 ところが、上記のとおり、労働局への解雇等事件の相談が、平成26年で3万8966件があったにもかかわらず、あっせん申請されているのが、わずか1392件で、全解雇等相談件数のわずか3.57%という点にひっかかります。

 手続費用と弁護士を依頼する必要がある解雇等事件の労働審判の平成26年度の申立件数が1747件なのに、労働局紛争調整委員会のあっせん申請が、これより少ない1392件であることが私には理解しがたいのです。 

 たしかに、労働相談は必ずしも全部が裁判や労働審判となるわけではありません。しかし、解雇された場合には、何らかの手続をしないかぎり、解雇された労働者はただ泣き寝入りするしかありません。 

 弁護士の私のところに相談にこられる解雇事件の相談者の8割は何らかの手続に進みます(弁護士交渉も含めて)。なかには解雇が有効と思われる場合や、解雇を争いたいが家族が反対するからということで手続を断念される方もいますが。 

 労働審判や訴訟は手続や弁護士に費用がかかって労働者にとってはハードルが高いですが、労働局のあっせん申請は、厚労省が行う無料の手続であり、ほかに解決手段がない労働者があっせん申請を躊躇する性質ものではないと思います。訴訟や労働審判と比べてコストがかかりませんから。あっせん手続では、使用者に出頭の義務はありませんが、使用者が出頭しなくてもダメ元ですから、躊躇する理由にはなりません。

 そういう意味では、労働局の解雇等事件の相談件数が3万8966件もあるのに、あっせん申請が1392件しかないのは、労働局のあっせん申請に、何らかのアクセス障害があるのではないかと思います。

 しかも、労働局には、ひどい解雇相談が殺到しているとも言われているのですから。⇒ http://www.jil.go.jp/publication/ippan/koyoufunsou.html

■今後の検討課題

 労働局紛争調整委員会の委員を担当されている弁護士も多くおり、労働局の相談員の知り合いもいますので、労働局の方々とも、是非、勉強会などができたらと思います。労働弁護団でも企画するよう持ち込んでみよう。

 

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2015年12月23日 (水)

読書日記「働く女子の運命」濱口桂一郎著

読書日記

「働く女子の運命」濱口桂一郎著 文書新書
2015年12月発行 読了 2015年12月22日


hamachanこと濱口桂一郎さんに、新著「働く女子の運命」をお送りいただきました。ありがとうございました。通勤電車内で熱中して読んで、つい降車駅を乗り過ごしてしまいました。

■「雇用システム」の違いからの分析

 濱口さんは、日本の企業社会における女性労働者がおかれている厳しい状況の原因を、「企業の雇用システム」の観点から、いつものとおり見事に腑分けしています。

 メンバーシップ型社会である日本企業は、「新卒採用から定年退職までの長期間にわたり、企業が求めるさまざまな仕事をときには無理しながらもこなしていってくれるだけの人材であるかどうかという全人格的判断がなされます。その中で、女性はいま目の前のこの仕事をどれだけきちんとこなせるかなどという些細なことではなく、数十年にわたって企業に忠誠心を持って働き続けられるかという『能力』を査定され、どんな長時間労働でもどんな遠方への転勤でも喜んで受け入れられるかという『態度』を査定され、それができないようでは男性並みに扱われないのです。ちなみに、この『能力』と『態度』の度合いを示す特殊日本的『職能資格』という言葉は、欧米社会の職業資格(ジョブ-引用者注)とは似ても似つかぬ概念です」というわけです。

 著者は、日本は、1990年代半ばから「市場主義の時代」となり、企業は日本型雇用システム(メンバーシップ型社会)の「中核(日本型正社員-引用者注)をより純粋に少数精鋭化しながら維持しつつ、もっぱらその周辺部を狙って規制緩和をしてきた」と結論づけます。

 その結果、「総合職という男性コースに入れてもらった少数派の女性たちは、銃後の主婦の援助を受けた「男性たちと同じ土俵で、仕事も時間も空間も無制限というルールの下で競争しなければなりません」。

 「他方で、一般職という女性コースはこの時期、企業からもはや存続の必要性が失われ、契約社員や派遣社員という形で非正規化が進行していきます」。今や、女性労働者の非正規率は過半数を超えています。


■欧米ジョブ型社会での男女平等

 欧米は、ジョブ型社会なので、社会的に公認された職業資格(企業を超えた共通な資格)が確立していて、労働者はジョブとスキルによって雇用と賃金が決定される。したがって、女性や男性の区別なくジョブとスキルが同じなら賃金は同一。例えば、アナウンサーというジョブとスキルが同じなら、賃金は当然同一であって、勤続年数や年齢、子どもの有無は賃金とは関係がないとのこと。
 ですから、欧米では、男女平等実現のため、男性が多く占める職種(ジョブ)に女性を積極的に雇用すること(アファーマティブ・アクション)。また、男性が多い職種の賃金と女性の多い職種の賃金を比較して両職種が「同一価値労働」であれば同一賃金とする是正の方策がとられます。具体的な「職務」(ジョブ)を基準としているので、すっきり分かりやすいことが説明されます。


■日本メンバーシップ型社会

 ところが、日本の職能資格制度では、「属人的」な要素によって評価されて昇格が異なり、昇給も異なります。評価要素は、「能力」と「態度」です。具体的な職務実績評価も含まれますが、それよりは「潜在的な職務遂行能力」への評価が重視されます。その職務遂行能力とは、要するに、「無限定かつ無定量の労働」に忠誠心をもって従事できるかということなる。この点で家庭責任を負う女性は不利になります。

 賃金も具体的な職務との関係ではなく、女房子どもを養える生活給を基本として職能資格制度が発生・運用されてきたので、女房子どもを養う必要がない女性には不利に運用されます。

 実は、私も昔は「潜在的な職務遂行能力なんて、情意評価で恣意的で訳がわからん。ナンセンス!」と思っていました。が、今自分が56歳を過ぎると「人」(私の場合は弁護士)の評価って、長期的に見るべきであって、たまたま担当の仕事(裁判)がうまくいったかどうかよりも、仕事に対する姿勢や態度、コミュニケーション能力、何よりも人柄のほうがずっと重要だとつくづく思います。若手の「伸びしろ」はそこで見た方が確かですし、一緒に呑みにいけば呑み方でもわかるしね。メンバーシップ型の働き方や人の育て方に一定の合理性があることは否定できないと思うようになりました。


■「育休世代のジレンマ」

 育休制度が立法化されて、職場で二つのジレンマが見られるそうだ。

 一つは、、出産した女性労働者が、残業なしの限定された職域や職種に配置されるという「マミートラック」に固定されるというジレンマ。

 二つは、出産した女性労働者が定時で帰宅し、また子どもの都合で度々休まざるを得ないことから生じる負担をかぶる上司や社員の不満というジレンマです。


■「マミートラック」ではなく、「ノーマルトラック」へ


 そこで、著者の処方箋は、通常の労働者(=正社員)の働き方を、マミートラックのような働き方にしようというものです。職務や労働時間を限定にした限定型正社員を「通常の労働者」として、男女が子育てしながら働き続けるノーマルトラックをもうける。

 ところが、企業の中枢には「いつでもどこでもどんな仕事でも働かせることができるという究極の柔軟性を駆使することで世界の冠たる競争力を実現したという成功体験をもった人々」が多数をしめいており、強い抵抗感があるそうです。

 著者が<無限定正社員の男性並みに「活躍」するように女性を駆り立てるのはもう止めよう>と述べたところ、「総合職を減らして昔の一般職を増やそうというのか?」と批判を受けたそうです。

 著者は、昔の一般職とは補助的業務を前提とした女性用コースであり、これに対して、限定正社員とは男女共通の一定の限定がある制度だと反論します。これから過去の無限定正社員を維持することは不可能で、将来の別モデルを構想すべきだと述べます。


■感想:労働時間の限定こそが男女平等の基本であることは大賛成

 著者が「無限定な正社員の労働時間」が最大の問題であるとされる点について、全面的に賛成です。選別された男性正社員が無限定かつ無定量の長時間過密労働にさらされていることが最大の問題です。

■感想:ジョブ型社会じゃないとできないのでしょうか?

 しかし、労働時間の限定は、限定型社員でなければできないのでしょうか。

 労働時間の限定は、労働契約上の限定だけでは実現しないと思います。日本では新たに厳格な労働基準法の定め(例えば、残業を厳格に禁止して、例外も一日最長2時間のみとする)を立法化して、一斉に全事業に適用しないと「時短」は不可能でしょう。「労使自治」にまかせては、「時短」は絶対に進まない。

 厳格な労働時間規制をすれば、メンバーシップ型社会でも労働時間は大きく短縮され、男女とも利益を得るのではないか。(もっとも、これができないからみんな頭を悩ましているのでしょうが。)


 また、欧米型ジョブ型社会には、個人的にあこがれますが、強力な産別労働組合という対抗プレイヤーがいないと社会的に成立も機能もしないのではないか。日本が欧米のようなジョブ型社会に移行するには、社会意識の劇的変化(戦争や大不況をくぐらなければ変化しないのでは?)や教育制度・内容の変更、産別労働組合による職種毎の産別協約賃金の設定などない限り、実現不可能でしょう。仮に今すぐ社会的合意ができても、これから3世代はかかるでしょう。


■感想:海老原氏の提言が現実的ではないか

 私は、海老原嗣生さん(「日本で働くのは本当に損なのか」)が提言する「入り口は日本型メンバーシップ型のままで、35歳くらいからジョブ型に着地させるという雇用モデル」がもっとも共感できます。

 日本的なメンバーシップ型の働き方(チーム労働)の良さも維持でき、今の雇用の実態にあっているように思います。海老原氏の提言については過去のブログでふれました。


○読書日記「日本で働くのは本当にそんなのか-日本型キャリア VS 欧米型キャリア」海老原嗣生著 PHPビジネス新書

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/11/vs-f7cd.html  


 濱口さんは、この海老原さんのモデルについて、働き続ける女性がジョブ型に移行する歳(35歳頃)まで子どもが産めず、高齢出産になりかねないことが問題だと指摘します。

 しかし、現実には20代で子どもを産んで育休をとりながら働く女性も少なくないと思います。また、キャリアをきずいてから35歳以上の高齢出産をするのか、子育てではなくキャリアを優先させるのか、所詮は個々の女性の選択です。社会が介入すべき事柄ではないでしょう。

 なお、この著書には、ほかに「皇国勤労観と生活給」、「戦時体制がつくった日本型雇用」、「生活給とマル経」、「日本型雇用システム礼賛と男女平等」、「経団連的な同一価値労働同一賃金の原則」などの興味深い論点(ネタ)が記述されています。勉強になります。

 なお、同書の帯に、「上野千鶴子氏絶賛!」とあります。上野氏の「女たちのサバイバル作戦」(この作戦目標は「同一価値労働同一賃金原則の実現」、「日本型雇用システムの廃止」等)についての批評も昔ブログに書きました。本ブログと関係します。


○読書日記「女たちのサバイバル作戦」上野千鶴子著 文春新書

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/11/post-f079.html

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2015年11月 8日 (日)

派遣と有期契約労働者の2018年問題

労働法の「2018年問題」

■平成27年改正派遣法の「2018年」問題

労働者派遣法が「改正」されて、派遣可能な期間の制限が見直された。 有期雇用の派遣社員(派遣会社と有期雇用契約を締結して派遣されている派遣労働者)は、個人単位で、派遣先で働けるのは3年までとなった。

事業所単位では、派遣社員は同一組織(課単位)単位でも3年までしか、派遣を使用できません。ただし、延長することができて、過半数労組ないし労働者過半数代表の意見聴取をすれば延長できます。

平成27年派遣法改正は、9月30日以降、労働者派遣契約が締結・更新された場合に適用されます。ですから、今年の10月1日から3年後の2018年(平成)30年)9月30日までしか派遣先では働けません。他方、派遣先は、労働者の過半数代表の意見を聴取して、派遣社員を入れ替えて3年間が延長されて派遣社員を使い続けられます。

ただし、無期で派遣会社に雇用されている派遣社員は、この3年の期間制限はありません。

■平成24年改正労働契約法の「2018」年問題

2012(平成24)年8月に労働契約法が改正され、2013年4月1日から、5年無期転換ルール(労契法18条)が施行されました。

ですから、2013年4月1日に有期労働契約を締結・更新した場合には、2018年4月1日以降、有期雇用契約を無期に転換するように申し込むことができます。

有期で派遣会社に雇用されている派遣社員も、いわゆる専門26業務の場合には、契約を更新して3年を超えて働いている派遣社員がいます。

この派遣社員は、2018年4月1日をすぎれば、5年の無期転換ルールの適用を受けることができます。 つまり、2015年4月以降、派遣会社との有期雇用契約を更新してきた派遣社員が、2018年4月1日に以降も、有期雇用契約を更新すれば5年を超えるので、派遣会社に無期転換申込みができます。

そうなれば、派遣会社は無期雇用の派遣社員として雇用しなければなりません。 すると、雇用期間が無期である派遣社員は、3年の期間制限の適用をうけないので、期間制限なく働くことができることになります。多くの派遣社員は、無期転換の申込みをすることでしょう。

派遣会社が、こころよくこの無期転換を受け入れれば良いのですが、しかし、派遣会社は、派遣社員の無期転換を回避するために、2018年4月より前に有期雇用契約を雇止めをする可能性が高い。

■2018年問題

そうなうと、2018年1月から3月にかけて、派遣社員を含めて多くの有期契約労働者が雇止めされるなどのトラブルが生じるおそれがあります。

派遣社員にとっても、2018年は問題は、9月直前に生じるのではなく、2018年の2月から3月がヤマになると思います。


現在26業務の方にとっては、派遣会社との間で無期雇用契約への転換を求めていくといういうことが重要になると思います。

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2015年3月29日 (日)

管理職用「退職勧奨」マニュアル

人事コンサルタント会社が、大企業の管理職に提供した実際の「退職勧奨」用マニュアルを見せてもらった。30頁くらいの小冊子。なかなか興味深い内容だ。

解雇や退職強要に関する労働法や労働判例を詳しく解説しつつ、実践的な「退職勧奨手法」が書かれている。要するに、解雇は困難だから、この「退職勧奨」手法が重要であることを理解させる内容です。

■退職勧奨者の反応パターンと対応例があげられている。

対象者の典型的な反応パーターンを型にわけて対応例を示すというものです。

従順型 → 内面では、色々葛藤があるので、話しを十分聞いて受容してやる。
プライド型→ 周囲の者たちがどうみるかを客観的に説明してやる。
なんでもやらせてもらいます型→そんな余裕が会社にないことを伝える。
理屈型 → 説明に困ったら、次回にといって、理論武装して再度試みる。
愚痴型 → しばらく黙って聞く。繰り返しになったら、こういうことですねと先制する。
沈黙型 → 不明な点は質問して下さい。次回に考えを聞かせて下さいと拘束する。
感情型・泣き → 落ち着くまで待つ。いったん席を外す。明確に意思を伝えて、次回に回答するようにと伝える。
感情型・怒り → ひたすら話しを聞いて受容する姿勢を示す。相手の言うことが支離滅裂な場合には、こういうことでしょうかと要約して尋ねて整理をしてやり、落ち着くのを待つ。

「理屈型」のほうが管理職は対応が難しいようですね。労働者も「理論武装」が必要です。労働者の対応としては、退職の意思がないことを明確にメールや文書などで伝えることが極めて重要です。2度くらいは説明だけを聞くという姿勢で出席して明確に退職の意思のないことを伝え、退職勧奨の呼び出しにはもはや応じない。自分の業務に支障となると伝えることです。これが必ずやらなければならない対応です。

管理職の退職させる目標を課せられていますから、この人は退職に応じそうだと最初に思われたら、退職するまでネチネチと退職勧奨をされます。早い段階で明確に意思がないことを伝えることが大切です。PIPへの対応はその後です。

退職勧奨の手法は巧妙になっています。マニュアルには、録音されていることを想定して発言するようにとも書かれています。

明確に退職の意思がないのに3度以上、呼び出せば、もはや違法な「退職強要」と考えるべきです。

■管理職の逡巡と説得

また、管理職らも退職勧奨をして実績を問われるのは相当なストレスになっているようです。管理職らが感じる典型的な「逡巡」に対しても「アドバイス」をしています。これを見ると、管理職も内心は相当な葛藤と苦悩するようですね。

○従業員の会社への忠誠心は長期安定雇用で支えられている。仮に現時点では貢献が低くても、過去はそれなりに貢献してくれたではないか。
→確かに雇用の安定は大切。しかし、必要なら断行すべきです。そうでないとグローバル競争に生き残れないし、ご本人のキャリアパス形成にもなれない。他社で活躍する場を提供すべきです。

○いったん退職したら、この社会では再就職は難しい。失業者はごまんといる。なんとかならないのか。
→そのとおりです。でも、再就職支援サービスを提供される方々はまだ幸運なのです。だから、この機会に決断してもらうのがご本人のためでもあるのです。


○人事施策としてやむを得ないとしても、それは人事の仕事であって、われわれの仕事ではない。人事部担当者が責任をもって面談すべきだ。
→ご本人の仕事ぶりを熟知している上司でなければできません。人事は側面からサポートします。


○本人が了解しないかぎり、退職させることはできない以上、目標達成は難しい。
→会社の意図を明確に伝えて、相手の気持ちを理解して、再就職支援などを説明すれば100%達成はできます。

もっとも、目標達成しなければ、今度は退職勧奨される側になるわけですが。

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2014年11月 2日 (日)

二つある? 女性活躍推進法

「女性活躍推進法案」は二種類あるようです。

一つは、前回通常国会に上程されて継続審議になっている「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案」です。自公議員の議員立法です。

もう一つは、今臨時国会に内閣が提出したの「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」です。

両者の関係は、どうなっているのでしょうかね。政府・与党は、両法案とも成立させるのでしょうか。おそらく前者の法案に代えるものとして、後者の閣法が提出されたのでしょう。

前者の「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案」の法的枠組みは画期的なものだと思います。

この法律の基本理念は次のとおりです。

①職業生活その他の社会生活と家庭生活の両立が図られる社会の実現する。
②女性がその有する能力を最大限に発揮できるようにする。
③少子化対策基本法と子ども・子育て支援法の基本理念に配慮する。

第6条は、女性が活躍できる社会環境の整備を行うために、この法律施行後2年以内を目処として次の法制上の措置(立法)をすると定めています。何よりも、第7条にて、残業時間の大幅な短縮をすること、そのために2年以内に立法すると定めるところが画期的です。

(時間外労働の慣行の是正)
第7条 政府は、女性の活躍及び男性の育児、介護等への参加の妨げとなっている職場における長時間にわたる時間外又は休日の労働等の慣行の是正が図られるよう、労働者団体及び事業主団体と緊密な連携協力を図りながら、次に掲げる措置を講ずるものとする。

 一 時間外又は休日の労働に係る労働時間の大幅な短縮を促進すること。

 二 所定労働時間を短縮し、又は柔軟に変更することができる制度の導入、在宅で勤務できる制度の導入その他の就業形態の多様化を促進すること。

(支援体制の整備)
第8条 政府は、女性が人生の各段階における生活の変化に応じて社会における活動を選択し、活躍できるよう、次に掲げる措置を講ずるものとする。
 一 保育、介護等に係る体制の整備及び支援を促進すること。
 二 学校の授業の終了後又は休業日における児童の適切な遊び、生活及び学びの場並びに療育に係る体制の整備を促進すること。
 三 妊娠、出産、育児、介護等を理由として退職を余儀なくされることがないようにするための女性の雇用の継続及びそれらを理由として退職した女性の円滑な再就職を促進すること。
 四 起業を志望する女性に対する支援を推進すること。
 五 社会のあらゆる分野において女性が活躍できるために必要な能力及び態度を養う教育並びに再び学習することができる機会の提供を促進すること。

(税制及び社会保障制度の在り方)
第9条 政府は、女性の就業形態及び雇用形態の選択に中立的な税制及び社会保障制度の在り方について様々な角度から検討し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

(指導的地位への女性の登用の促進)
第10条 政府は、平成三十二年までに社会のあらゆる分野における指導的地位にある者に占める女性の割合を三割とすることを目指し、役員、管理職、高度の専門性が求められる職業その他の指導的地位への女性の登用を促進するための措置を講ずるものとする。

(国民の理解及び協力の促進)
第十一条 政府は、社会のあらゆる分野における女性の活躍に寄与した者の顕彰等を通じ、家庭生活における男女の協働及び社会における女性の活躍に関する国民、とりわけ男性の理解及び協力を促進するものとする。

もう一つの「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」は内容が乏しく、長時間労働慣行の是正もうたっていません。これが閣法ですが、自公の議員立法を葬るために作られたものなのでしょうか?

野党やフェミニストは、アベノミクスのために企業が女性を活用しようとする法律だと反対をしています。

また、自民党の右派や次世代の党も反対しています。理由は、「悪しき男女平等を推進する」からだそうです。この右派の男女さんは、信じられないほど「時代錯誤」な人たちというべきか、「さすが保守反動」というべきか(苦笑)。

私は、議員立法の「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案」の方が成立すれば一歩前進だと思います。

女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g18601038.htm


女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案要綱

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000060536.html

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