フリーランスに係る取引適正化のための法制度の方向性の問題点と課題(その2)
フリーランスの法制度の方向性について、フリーランスに仕事を出す事業者の遵守事項として検討されているのは、次のとおりです。
(ア)業務委託の開始・終了に関する義務
①業務委託の際の書面の交付等
業務委託の内容、報酬額 等
業務委託に係る契約期間、契約の終了事由、契約の中途解除の際の費用等
②契約の中途解約・不更新の際の事前予告
30日前の予告、契約終了理由の開示
(イ)業務委託の募集に関する義務
①募集の際の的確表示
②募集に応じた者への条件明示、募集内容と契約内容が異なる場合の説明義務
(ウ)報酬の支払い義務 60日以内
(エ)事業者の禁止行為
①フリーランスの責めに帰すべき理由なく受領を拒否すること
②フリーランスの責めに帰すべき理由なく報酬を減額すること
③フリーランスの責めに帰すべき理由なく返品を行うこと
④通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
⑤正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
⑥自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を供与させること
⑦フリーランスの責めに帰すべき理由なく給付内容を変更させ、又はやり直させること
(オ)就業環境の整備として事業者が取り組むべき事項
①ハラスメント対策
事業者は、その使用する者等によるハラスメント行為について
必要な体制の整備その他の必要な措置を講じる。
②出産・育児・介護との両立への配慮
就業条件に関する交渉・就業条件の内容等について必要な配慮をする
「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(令和3年3月26日 内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚労省)の中で独禁法や下請法で問題となる行為とされたものが、ほぼ事業者の禁止行為とされています。
これに、業務委託の際の書面交付等の義務付け、募集の際の義務、ハラスメント対策と出産・育児・介護との両立の配慮を加えており、方向性としては評価できると想います。
しかし、遵守事項の内容、その具体化には課題があります。
①書面の交付等の義務付けの内容ですが、報酬額のみならず報酬額の算定基準等の明示、そして、中途解約する場合の事業者側の事由(中途解約事由)を記載させることも必要です。
②また、フリーランス側からの中途解約事由も記載することも必要です(募集の際の条件等を契約内容が異なるときや出産・育児・介護等の場合の解除など)。
③ハラスメント対策では、事業者が使用する者等の中に、顧客や関係者が含まれることを明記すべきです。
④ハラスメントの体制整備や措置義務の内容は、相談体制の整備等が想定されていると思いますが、より実効性の高い措置義務を検討すべきです。
⑤出産・育児・介護の配慮義務ですが、一つはこのような事情が生じた場合にはフリーランスの側に解除権を付与して、それを制限することを禁止すべきです。さらに、出産・育児の援助については、非労働者を含めたこども保険制度の創設などの抜本的改革をしないと絵に描いた餅になります。
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