映画日記「PLAN75」
高齢化、老人人口増加により、75歳以上になれば国家が制度として自ら死を選択する道を提供するというストーリーは昔からたくさんあった。かならずしも目新しいテーマや作品ではないし、衝撃的でもない。筒井康隆の小説でも、このテーマで面白おかしいコメディがあった。
この「PLAN75」の映画が目新しく面白いのは、日本人がたんたんと受け入れる様がリアルに描かれていることだろう。そして、映画を見ながら、現在の日本の状況と共振して、「日本人はそうなるだろうなあ」と納得させられる。
「人に迷惑をかけるくらいなら、国のプランに応募して死んでしまおう」
係累も子供も孫もいない後期高齢者。年金もなく、あるいは暮らせない僅かな年金で一人暮らしする老人らは、「未来」ではなく、今の「現実」を描く。政府の安上がりの高齢化対策に従順に従う老若男女の日本国民。何も考えずにたんたんと老人らの死の選択をサポートする若者たち。
そして、老人の最後の措置をするのが、外国人労働者たちである。でも映画では、外国人労働者たちのコミュニティを、日本人社会とは異なる連帯感に満ちた明るい姿として、対照的に描いている。映画の最後では、外国人労働者である彼女は思い切った勇気ある行動に出る。
この日本社会の閉塞感と滅びていく様子を描いているところが、この映画の新しいところ。
最後に夕日を眺める主人公の思いと歩みはどう受け止めるのかは、観客ひとり一人で異なるだろうと感じた。
この映画はフランスとの国際共同製作だそうだ(フランスからの予算をもらって製作)。編集はフランスで行われた。編集担当のフランス人は「こんな制度を政府が提案したら、フランスでは大反対運動を展開して暴動が起こる。日本はこんなに静かに受け入れるのか?」と驚かれたそうだ。インタビューで、監督は「たぶん日本では受け入れられる」と答えたそうだ。私もそう思う。
この映画はフランスとの国際共同製作だそうだ(フランスからの予算をもらって製作)。編集はフランスで行われた。編集担当のフランス人は「こんな制度を政府が提案したら、フランスでは大反対運動を展開して暴動が起こる。日本はこんなに静かに受け入れるのか?」と驚かれたそうだ。インタビューで、監督は「たぶん日本では受け入れられる」と答えたそうだ。私もそう思う。
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