読書日記「台湾-四百年の歴史と展望」伊藤潔著(中公新書)
台湾の歴史と今後のアメリカの対中戦略(妄想)
ウクライナの次は台湾ということで、やはり歴史が大事。はじめて台湾の通史を読む。1642年のオランダ支配下におかれてから、1990年の李登輝国民党総統の民主化までの台湾史の概説。面白かった。
今まで、日本の過酷な台湾植民地支配と台湾人の抵抗と蒋介石国民党政権のもっと過酷な支配ということしか知らなかった。五年前に台湾に台湾労働裁判所調査で訪れた(台北地方裁判所に見学に行って、労働事件の法廷を見せてもらった)。
中国の明帝国は、台湾を化外の地として自国の領土とは考えず、オランダに委ねた。清帝国も、大陸からの移民(移住)を厳しく制限して、ほぼ台湾を放置していた。台湾の先住民族は清朝下で迫害され抵抗し、移住した漢人も本国から様々な規制を受けていた。その後、日本の台湾出兵の後にはじめて清朝は台湾の経営しはじめるが、日清戦争後に1995年に日本に譲渡する。
そのとき、台湾人(主に漢人移住民)は、1995年直後、フランスに頼って、台湾民主国を設立したが、漢人の指導者は逃亡し、アジア初めての民主共和国は日本軍に蹂躙された(移住していた漢人と先住民族とが頑強に日本軍に抵抗した。先住民族と移住漢人が協力した最初だという)。
日本の植民地支配は過酷であったが、50年の間に植民地下の近代化(農業、工業、行政)が進んだ。台湾人の台湾議会設立運動等もあったが、日本はこれを認めなかった。
日本の敗戦後、国民党が支配するが、1947年「2・28事件」が大量の台湾の知識人・指導層を粛正・虐殺(2万8千人)した。この事件で弾圧された人々は、日本が半世紀の間に殺害した台湾人に匹敵すると言われている(国民党は、日本の植民地支配された奴隷台湾人を排除したと正当化)。1949年に蒋介石が台湾に渡るが、米国トルーマン大統領は台湾に干渉せずと発表したが、1950年に朝鮮戦争が勃発して、方針転換して、台湾と防衛条約を締結する。
その後は長い暗黒の国民党戒厳令下で、やっと1998年に民主化し、民進党が野党として認められる。
台湾は、常に外国(中国本土)に支配され、台湾人の抵抗の歴史である。
民族としては、先住民族と19世紀に移住してきた漢民族(本省人)、国民党と一緒に台湾に来た漢民族(外省人)が混合している。しかし、歴史を見れば、民族としては大陸の中国人(漢人)とは4百年の歴史から現在を見ると、もはや中国の漢民族とは別の民族ではないか。ちょうどマンチュリアンと漢民族が異なるように。
民族自決権から見れば、台湾人には独立の権利はあるように思える。「一つの中国」を押しつけることは民族自決権と台湾人の民主主義に反する。
しかし、台湾が独立を宣言すれば、中国は台湾に侵攻する。ちょうど、ウクライナがNATOに加盟を強行してロシアに侵略されたように。
ここからは妄想。アメリカは、ウクライナにNATO加盟を誘導してロシアを挑発してロシアの弱体化と自国に大きな利益を得た。次に、バイデン大統領は、台湾を独立へと向かわせて、中国を挑発する。この綱渡り米中対抗関係を作り出して、自国に有利な状況を作ろうとする危険なゲームを始めている。
米国は、中国がさらに強大化する前にたたいておこうというのが戦略だろう。
中国は、経済的に台湾を包摂して、香港のように親中国派を育てて併合支配しようとするだろう。
今の世界情勢を見たとき、台湾には独立志向をすることは控えるようにお願いして、中国に軍事力行使をしないように求めるしかない。でも、台湾がアメリカに誘導されて独立したいと民主主義の方向で決めた場合には悪夢の戦争が起こる。
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