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2022年7月30日 (土)

読書日記「台湾-四百年の歴史と展望」伊藤潔著(中公新書)


台湾の歴史と今後のアメリカの対中戦略(妄想)

ウクライナの次は台湾ということで、やはり歴史が大事。はじめて台湾の通史を読む。1642年のオランダ支配下におかれてから、1990年の李登輝国民党総統の民主化までの台湾史の概説。面白かった。

今まで、日本の過酷な台湾植民地支配と台湾人の抵抗と蒋介石国民党政権のもっと過酷な支配ということしか知らなかった。五年前に台湾に台湾労働裁判所調査で訪れた(台北地方裁判所に見学に行って、労働事件の法廷を見せてもらった)。

中国の明帝国は、台湾を化外の地として自国の領土とは考えず、オランダに委ねた。清帝国も、大陸からの移民(移住)を厳しく制限して、ほぼ台湾を放置していた。台湾の先住民族は清朝下で迫害され抵抗し、移住した漢人も本国から様々な規制を受けていた。その後、日本の台湾出兵の後にはじめて清朝は台湾の経営しはじめるが、日清戦争後に1995年に日本に譲渡する。

そのとき、台湾人(主に漢人移住民)は、1995年直後、フランスに頼って、台湾民主国を設立したが、漢人の指導者は逃亡し、アジア初めての民主共和国は日本軍に蹂躙された(移住していた漢人と先住民族とが頑強に日本軍に抵抗した。先住民族と移住漢人が協力した最初だという)。

日本の植民地支配は過酷であったが、50年の間に植民地下の近代化(農業、工業、行政)が進んだ。台湾人の台湾議会設立運動等もあったが、日本はこれを認めなかった。
日本の敗戦後、国民党が支配するが、1947年「2・28事件」が大量の台湾の知識人・指導層を粛正・虐殺(2万8千人)した。この事件で弾圧された人々は、日本が半世紀の間に殺害した台湾人に匹敵すると言われている(国民党は、日本の植民地支配された奴隷台湾人を排除したと正当化)。1949年に蒋介石が台湾に渡るが、米国トルーマン大統領は台湾に干渉せずと発表したが、1950年に朝鮮戦争が勃発して、方針転換して、台湾と防衛条約を締結する。

その後は長い暗黒の国民党戒厳令下で、やっと1998年に民主化し、民進党が野党として認められる。
台湾は、常に外国(中国本土)に支配され、台湾人の抵抗の歴史である。
民族としては、先住民族と19世紀に移住してきた漢民族(本省人)、国民党と一緒に台湾に来た漢民族(外省人)が混合している。しかし、歴史を見れば、民族としては大陸の中国人(漢人)とは4百年の歴史から現在を見ると、もはや中国の漢民族とは別の民族ではないか。ちょうどマンチュリアンと漢民族が異なるように。


民族自決権から見れば、台湾人には独立の権利はあるように思える。「一つの中国」を押しつけることは民族自決権と台湾人の民主主義に反する。

しかし、台湾が独立を宣言すれば、中国は台湾に侵攻する。ちょうど、ウクライナがNATOに加盟を強行してロシアに侵略されたように。

ここからは妄想。アメリカは、ウクライナにNATO加盟を誘導してロシアを挑発してロシアの弱体化と自国に大きな利益を得た。次に、バイデン大統領は、台湾を独立へと向かわせて、中国を挑発する。この綱渡り米中対抗関係を作り出して、自国に有利な状況を作ろうとする危険なゲームを始めている。

米国は、中国がさらに強大化する前にたたいておこうというのが戦略だろう。
中国は、経済的に台湾を包摂して、香港のように親中国派を育てて併合支配しようとするだろう。
今の世界情勢を見たとき、台湾には独立志向をすることは控えるようにお願いして、中国に軍事力行使をしないように求めるしかない。でも、台湾がアメリカに誘導されて独立したいと民主主義の方向で決めた場合には悪夢の戦争が起こる。

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2022年7月27日 (水)

ロシア・-ウクライナ戦争 開戦5ヶ月


ウクライナ妄想

この前、左派的な人と雑談をしていたら(私も左派ですが)、ロシアは違法な侵略戦争をしたが、このウクライナ戦争でアメリカが世界的に孤立している。中国が力をつけてきてアメリカが弱体化していると言っていたので、ビックリ。
ウクライナへのロシアの侵略に至る経過は次のとおり。


2008年1月 ウクライナ世論調査 50%がNATO加盟反対
2009年7月 これを切り崩そうと、バイデン副大統領(当時)ウクライナのNATO加盟支持表明

2010年6月 親露派ヤヌコーヴィッチ大統領NATO未加盟中立法

2013年11月21日 親欧米派のクーデター「マイダン革命」(議会の暴力的占拠・ウクライナ民族主義クーデター。アメリカの介入あり)

2014年2月 ヤヌコーヴィッチ大統領ロシアに亡命
2014年3月 ロシアの介入 クリミアの独立宣言(ロシア編入)
2014年6月 ポロシェンコ大統領就任(親米派)~2019年5月まで
2017年6月 ウクライナ NATO加盟を優先する法律制定
2019年2月 ウクライナ憲法にNATO加盟の義務を定める改正
2019年5月 ゼレンスキー大統領就任

この経過を見れば、アメリカが一貫してウクライナに自由主義的な介入をしてきた。バイデンの息子がウクライナに食い込んだという絵歩ソードがあり、それを追求したウクライナ検察のトップがバイデンの介入で解任されたという事件もあった。アメリカが一貫してウクライナにNATO加盟を推奨してきた。ウクライナの中立派を親ロシアとして排除してNATO、米軍の援助を強めてきた。
プーチンは、このアメリカの挑発に乗せられて「予防戦争」としてウクライナへの不法な侵略戦争を開始した(相変わらずイワンのバカ)。

結果的に、アメリカは、ロシアの欧州へのガスパイプラインをストップさせて、自国の液化天然ガスを欧州に輸出するという将来的な経済的な特典を得た。また、軍事援助を行うことで、アメリカの軍需産業は莫大な利益をあげる。
さらに、政治的にはNATO結束をはかり、スウェーデン、フィンランドのNATO加盟という大きな成果を得た。独の社民党政権に軍事拡大させ、NATOへの積極的関与することができた。対中国への西側諸国の結束も手に入れた。
アメリカは、イラク戦争やアフガン戦争で、ロシアと同じく侵略戦争を行ったが、西側諸国や西側メディアからは非難されない。アメリカは、綺麗事を言いながらロシアと同じような汚い戦争をやっている。

ロシア・ウクライナ戦争が長引く限り、経済的にも軍事的にも得をするのはアメリカであることは間違いない。
国際情勢は、誰が得をしたのかを冷静に見ることでだいたいわかる。
ロシアのウクライナ侵略開戦から、5ヶ月。戦争が始まれば、行き着くところまで行くしかないのが、歴史の教えるところ。ロシアとウクライナの膠着状態が長く続く。アメリカはこの膠着状態を続けるように管理された軍事援助をしている。ロシアを弱体化させ、アメリカが儲かるという状況がこれから1年以上は続くだろう。
アメリカは、ここから5年先、10年先の中国との対決を次に描いているだろう。中国も習近平政権が今秋継続してから、10年後を見据えた米中対立のゲームを進めるんだろう。

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2022年7月 9日 (土)

映画日記「シン・ウルトラマン」-メフィラス星人が提案する安保条約

この映画を公開直後に観て、しばらくして事務所の若手と2度目を観にいった。二度見はシン・ゴジラと同じ。

映画の1度目はストーリーとメイン映像に目を奪われる。でも、2度目はディテールに気がつく。劇場映画はTVと違って「名画」と一緒。何回観てもワンシーンに発見がある(それが名作の所以)。

 

以下、ネタバレあり

 

この映画は、やはり子供に楽しんでもらおうと意識した怪獣映画。私が小学2年生当時(1966年)、ウルトラマンのTV放映をワクワクしながら観た。その世代には、この映画も楽しく懐かしめた。それを知らない人はよくわからないかもしれない。そういう人々には女性隊員が巨大化するのがセクハラにしか感じられないのだろう。

また子供目線だと、「禍特隊」が単なる国家公務員の寄せ集めで格好よくなく実力も感じられないのが残念で、ストーリー展開に説得力が弱い。

大人目線だと、この映画はメフィラス星人(山本耕史)が出てくる後半が断然に面白い。メフィラス星人と日本国が星間条約を締結して、異星の進んだ科学技術を日本が提供を受ければ、日本の安全保障は盤石。

メフィラス星人は、日本に星間条約を提案する際に「私メフィラス星人を上位概念においてくれ」と言う。総理大臣はこれを了解する。メフィラス星人は、その星間条約をタブレットに写して示すが、その画面には「5条」のタイトルが読める。これは2回目観て気がついた。

さて、この5条とは、日米安全保障条約第5条ですね。外務省はウェブで次のように解説しています。

 第5条は、米国の対日防衛義務を定めており、安保条約の中核的な規定である。
 この条文は、日米両国が、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」に対し、「共通の危険に対処するよう行動する」としており、我が国の施政の下にある領域内にある米軍に対する攻撃を含め、我が国の施政の下にある領域に対する武力攻撃が発生した場合には、両国が共同して日本防衛に当たる旨規定している。

そして、メフィラス星人の言う「上位概念」は、日本国憲法の上位に安保条約が置かれているという意味になります。これは、今の日米関係へのメタファー(暗喩)であり、皮肉と揶揄だよね。「メタファー」は私の好きな言葉です。

メフィラス星人と日本の星間条約締結を阻止する反逆者が「禍特隊」とシン・ウルトラマンである。そして、シン・ウルトラマンとメフィラス星人がバトルを繰り広げる。

ところが、シン・ウルトラマンの故郷の「光の国」から来たゾーフィ(ゾフィーではない)が二人の紛争に介入する。メフィラス星人は、ゾーフィの介入した事実に気がつくと、即座に撤退する。

ゾーフィは人類に過剰に肩入れするシン・ウルトラマンを光の国のルールに反したとして処罰し、危険な人類を滅ぼすことを決定して実行に移そうとする。

ここでは、メフィラス星人は米国のメタファーで、ゾーフィが中国のメタファーですね。

メフィラス星人(米国)は、ゾーフィ(中国)との決定的な軍事的な全面対決を回避して、地球(日本)を見捨てることくらい簡単に決断する。

さて、そうなるとシン・ウルトラマン自身は、何のメタファーと考えられるだろうか。

「真・善・美の化身」とされるウルトラマンだが、最初のテレビ作品の企画・脚本の中心は金城哲夫。彼は沖縄出身の作家でTVの「ウルトラマン」に社会的問題を反映させていた。今から見ればその意図は明白で、「戦争と沖縄」「正義と差別」に終生こだわっていたと言っても良いだろう。彼は「沖縄海洋博」の演出も担当し、本土と沖縄の間の葛藤をいっそう抱えていた。(by NHKドキュメンタリー)。

シン・ウルトラマンを制作した庵野秀明(1960年生)は、当時の金城哲夫の発信していた雰囲気やメッセージを世代的に理解できるだろう。樋口真嗣(1965年生)は世代としてはギリギリかもしれない。ただ、庵野秀明は宮崎駿や高畑勲監督と仕事をしており、樋口真嗣も平成ガメラの金子修介監督と一緒に仕事をしている。樋口真嗣も金城哲夫の隠されたメッセージは理解できただろう。

この二人は、ウルトラマン、金城哲夫の作品に最大限の敬意をはらっており、その隠されたメッセージを盛り込んでいるにちがいない。

シン・ウルトラマンの「真・善・美の化身」とは、疎外された自己(日本又は沖縄)であり、理想化された自己(日本又は沖縄)なんだろう。


「シン・ゴジラ」は福島第1原発事故がメタファーであったし、「シン・ウルトラマン」は、日本の安全保障がメタファーだったのである。

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映画日記「PLAN75」


高齢化、老人人口増加により、75歳以上になれば国家が制度として自ら死を選択する道を提供するというストーリーは昔からたくさんあった。かならずしも目新しいテーマや作品ではないし、衝撃的でもない。筒井康隆の小説でも、このテーマで面白おかしいコメディがあった。

この「PLAN75」の映画が目新しく面白いのは、日本人がたんたんと受け入れる様がリアルに描かれていることだろう。そして、映画を見ながら、現在の日本の状況と共振して、「日本人はそうなるだろうなあ」と納得させられる。
「人に迷惑をかけるくらいなら、国のプランに応募して死んでしまおう」
係累も子供も孫もいない後期高齢者。年金もなく、あるいは暮らせない僅かな年金で一人暮らしする老人らは、「未来」ではなく、今の「現実」を描く。政府の安上がりの高齢化対策に従順に従う老若男女の日本国民。何も考えずにたんたんと老人らの死の選択をサポートする若者たち。

そして、老人の最後の措置をするのが、外国人労働者たちである。でも映画では、外国人労働者たちのコミュニティを、日本人社会とは異なる連帯感に満ちた明るい姿として、対照的に描いている。映画の最後では、外国人労働者である彼女は思い切った勇気ある行動に出る。

この日本社会の閉塞感と滅びていく様子を描いているところが、この映画の新しいところ。

最後に夕日を眺める主人公の思いと歩みはどう受け止めるのかは、観客ひとり一人で異なるだろうと感じた。

この映画はフランスとの国際共同製作だそうだ(フランスからの予算をもらって製作)。編集はフランスで行われた。編集担当のフランス人は「こんな制度を政府が提案したら、フランスでは大反対運動を展開して暴動が起こる。日本はこんなに静かに受け入れるのか?」と驚かれたそうだ。インタビューで、監督は「たぶん日本では受け入れられる」と答えたそうだ。私もそう思う。

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