読書日記「ウクライナ戦争における対ロシア戦略」遠藤誉著(PHP新書)
遠藤誉氏(筑波大学名誉教授)は、1941年に満州国新京(現吉林省長春)生まれの女性(現在81歳)。当時、ソ連軍の侵攻、国共内戦などの悲惨で過酷な戦争を経験した。1953年に日本に帰国するまで中国で教育を受けた。中国社会科学研究院社会学研究所の客員研究員・教授を歴任した。
著者は、ロシアのウクライナ侵攻に、ソ連軍の対日参戦の恐怖がよみがえったとして、ロシアのプーチンの残忍無比な蛮行を厳しく非難する。他方、プーチンをウクライナ侵攻に意図的に誘い込んだのはバイデンの仕業だったと厳しく批判する。プーチンのウクライナ侵攻を引き込んだバイデン大統領の意図的な罠を事実に基づき暴露、告発している。
私は、ウクライナ侵攻によって利益を得るの結果的には米国だと思っていたが、バイデン大統領が「米軍が軍事介入すると核戦争になるので控える」と言ったので、理性による抑制だと思っていた。ところが、実態は違った。バイデンの仕組んだトラップだとまでは思っていなかった。
2008年1月 ウクライナ世論調査 50%がNATO加盟反対
2009年7月 バイデン副大統領(当時)ウクライナのNATO加盟支持表明
2010年6月 親露派ヤヌコーヴィッチ大統領 NATO未加盟中立法制定
2013年11月21日 ヤヌコーヴィッチ政権 EU連合協定の調印破棄
2013年11月21日 親欧米派のクーデター「マイダン革命」(議会占拠)
2014年2月 ヤヌコーヴィッチ大統領ロシアに亡命
2014年3月 クリミア共和国の独立宣言
2014年4月 バイデンの次男がウクライナ大手エネルギー会社の役員就任し不正関与
2014年6月 ポロシェンコ大統領(親米派)~2019年5月)
2015年 ウクライナ検察の捜査着手→バイデン副大統領 検事総長解任の圧力
2015年1月 オバマ大統領 マイダン革命(クーデター)への関与認める
2017年6月 ウクライナ NATO加盟を優先する法律
2019年2月 ウクライナ憲法にNATO加盟の義務を定める改正
2019年5月 ゼレンスキー大統領就任
2020年 米国大統領選挙 バイデンの「ウクライナ・ゲート」をトランプが攻撃。
2021年9月1日 バイデン大統領がゼレンスキー会談 NATO加盟すすめる。(独仏反対)
2021年10月 ウクライナ軍が東部ドネツク州親ロ派地域にドローン攻撃
ドイツはミンスク合意の停戦協定違反とウクライナ批判
2021年12月7日 バイデンがプーチンに米軍はウクライナに派遣しないと表明
バイデンは、ウクライナをNATO加盟に誘い込み、ロシアの軍事侵攻を誘うように意図的に政治工作をし、最後に、ロシアが軍事侵攻しても米軍は派兵しないと明言してロシアを軍事侵攻に誘い込んだ。
バイデンが受ける利益は、「ウクライナ・ゲートのもみ消し」、「NATOの拡大と結束強化」、「ロシアの天然ガスから米国のLNGガスへの転換で莫大な利益獲得」、「兵器供与の利益獲得」、そして、長期的には「中国の同盟国のロシアの弱体化」を得る。
なるほど。流石にアメリカでずる賢くスマートに自国の利益をあげるものだ。
中国については、必ずしもロシア擁護いってんばりではないとし、アメリカにはめられたロシアを困惑して凝視しているとする。台湾への軍事侵攻はない(ただし台湾が独立しようとしない限り)。中国は、2035年までに経済的に台湾を包摂・支配して、半導体企業などを抱き込んで、親中政権をたてることを目指しているという。
これに対抗して、米国は、ウクライナでやったような台湾政府に罠を仕掛けて、日本や韓国を巻き込んだ挑発をするのではないかとの危惧を著者は抱いている。より端的に「米国は対中包囲網を築くと言いながら、情勢が変われば、日本を見捨てることくらい平気でする」と述べている。
今後のウクライナの停戦にとって、ウクライナがNATO加盟を断念することが必要となり、停戦のためには中国が重要の役割を担うことになり、習近平が虎視眈々と機会をうかがっていると分析している。
著者は、ベトナム戦争から中近東の戦争まで、常に米国は戦争ビジネスでもうけてきたと批判する。日本は米国の手玉にとられつづけてきた。今や、国際情勢を経済・政治・軍事・地政学的情勢を冷静に見据えて進路を誤らないようにすべきだと述べる。
著者の結論は、日本はアメリカに頼らないで「軍事力をもった中立国」を目指して中立外交を展開すべき、と言う。
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