ロシアのウクライナ侵攻と「日本国憲法9条」と日本の対応
ロシアのウクライナ侵攻は違法な「侵略」そのものである。ウクライナがNATOに加盟し、仮にそれがロシアの安全を脅かすものであったとしても、ロシアのウクライナ侵攻は国際法違反の他国への侵略行為にほかならない。
国連憲章上は、この侵略行為に対して、ウクライナは個別又は集団的自衛権を行使することができる(国連憲章51条)。国連の安保理は、その侵略行為に対して「緊急の軍事措置」をとることができる(同42条)。また、国連加盟国は、安保理の要請に従って兵力などの便益を提供する義務を負う(同43条)。
ロシアや米国や中国などの常任理事国が侵略を行った場合(米国のイラク侵攻もそうだった。)には、この国らが拒否権を行使するから、国連(安保理)は機能しない。
では、日本国憲法9条をもとにすると、この事態に日本はどう対応できるのか。
三つの立場があるだろう。
① 一つ目は、9条を絶対平和主義の非武装中立条項だと解釈して、ロシアやウクライナ、そしてNATO諸国に対して、軍事援助も含めて一切の軍事措置に反対して即時停戦を訴える伝統的護憲派の立場。
② 二つ目は、9条は非武装平和主義ではなく個別自衛権(武力による自衛)を許容していると解釈し、必然的にウクライナの自衛権行使やNATO諸国の軍事援助を容認し、日本もウクライナの側にたって援助する立場。ウクライナに対してどのような援助をするかは、「非軍事から軍事まで」の幅でいろいろな選択肢があり、情勢を見て個々に判断する。当然ながら軍装ヘルメットや防弾ベストは援助できる(おそらく国民の多数派であろう)。集団的自衛権は否定するので兵器や兵員の援助はできない。
③ 三つ目は、9条は国連の集団安全保障体制(軍事措置)を前提としていると解釈して、侵略行為に対して国連の軍事措置(42条)ができない場合であれば、国連憲章51条に認められた集団的自衛権に日本も協力することができるという立場。この解釈は、日本国憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」の定めを国連の集団安全保障だけでなく、集団的自衛権にも依拠すると解釈する(今の政府の立場)。もっとも集団的自衛権とはいえ、遙か遠い欧州の戦争まで軍事的援助(兵員派遣や兵器援助)ができるかは今の政府内でも異論が出るだろう(中国・台湾間の軍事紛争なら可とするだろうが)。
さて、どの立憲的な観点からは、どの立場が良いだろうか。
自衛隊が9条違反という立場に立つと、①の立場が論理的帰結となる。
他方、日本国憲法9条が個別的自衛権、専守防衛の軍隊(自衛隊)を許容しているという立場であれば上記②となる。ただ、憲法典の条文と憲法法典制定過程の国会審議に忠実で、その後の憲法事実の変遷を解釈に反映させるべきではないという法実証主義的な立場からすると、②と③の選択は憲法9条改正すべきことになる。
ドイツ政府(社民党、緑の党)は、ウクライナには最初はヘルメット援助だけだったが、徐々に兵器援助を広げてる。ドイツ政府は、自国が直接戦争に巻き込まれないか、ロシアがガス・石油等の輸出を止めないかという情勢判断に悩んでいるのだろう。
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