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2021年11月 3日 (水)

2021年総選挙に思う 衆院比例区の分析

2021年総選挙に思う

11月3日は休日なので、今回の衆院選挙比例区の結果を整理してみた。

 

■比例区の政党得票率・数の近年の数値をあらためて見ると、各政党の得票数・率は、実はそれほど大きな変化はないのがわかる。

 

★主な衆議院比例区選挙の主要政党の投票数・率の推移表

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この比例区への得票数・得票率には、有権者の政党支持の様相が素直に出る。2013年参議院選挙は抜けているが、傾向をつかむのが目的。小選挙区は各政党の候補者数等の要素で変動が激しい。有権者の政党支持数・率は出てこない。その意味では、小選挙区でどう選挙戦をたたかうかは、各政党の戦術が重要であり、各党の手練手管が見物であり、勝負どころなのだろう。

 

■実は比例区では負けてない立憲民主党

 

上記表を見れば、立憲民主党は、2018年総選挙よりも、比例区は得票数・率とも増えている(20%で1149万票)。国民民主党も4.5%で259万票を獲得している。

 

立民・国民両党の合計では、24.5%で1406万票であり、民主党下野後の最高得票なのである。(2009年の民主党の42.4%、2984万票が特別の異常値だった)。

 

共産党は7.2%、416万人で実はずっと変わりがない。社民党も長期低空飛行で傾向が変わらず(今回よくもったというのが正直な感想)。そして、立民+国民+共産+社民を合計すると33.5%と1925万票で、今回の自民党比例票に匹敵する。これに「れいわ」が合流すれば逆転である。もっとも、そうなれば、自公に維新がつくだろう。

 

■立憲民主党は小選挙区でなぜ負けたのか(勝てなかったのか)

 

では立憲民主党は、小選挙区で共産党と議席調整したにもかかわらず、なぜ勝てなかったのか。

 

共産党との共闘の結果だ(中道や保守系が離反した)との説がある。

 

しかし、立憲民主党は、前回と比較して、比例区の得票率も得票数もわずかだが増えている。もし、共産党との共闘が嫌われたのであれば、比例票も国民民主党にもっと流れたはずである。国民民主党の比例票はおそらく前回希望の党を支持した層から来たものと推定できる。維新に投票する人の多数派はもともと反労組(特に強固な「反官公労」)の立場なので、立憲民主党にはいれないだろう。

したがって、データ上は「共産共闘敗因説」は成り立たないのではないか。少なくとも大きな要因ではないだろう。

 

今回は維新が比例区で14%、805万票を獲得した。前回2017年総選挙では6.1%、338万であったので躍進である。ただし、前回2017年は希望の党があり、17.4%で967万票を獲得しておりそのあおりで減らした(だから新党ブームのあだ花だと東京にいる私は思っていた)。前々回の2014年総選挙では維新は15.7%で832万票だから、希望の党が消滅したため、もとにもどったともいえる。

 

維新は、大阪を中心に近畿で小選挙区で躍進し、全国各地でも小選挙区で存在感を示し、比例区票も獲得した。この政党は、自力をつけた。もはや新党ブームのあだ花でなく、今後も有力政党になるであろう(私個人では、およそ賛成できない政策・体質だが、それはそれとして)。

 

立憲民主党が小選挙区で勝ちきれなかったのは、維新の躍進・復調に足下をすくわれたと言えるのではないか。

 

「れいわ」も、3.9%と221万票と健闘した。これも前回に希望の党に投票した人が、清新さを求めて、「れいわ」に投票した方が多かったのではないか。

 

前回希望の党にいれた17.4%の有権者の8%が維新に、4%が「れいわ」に、3.9%が国民民主党に投票したにではないか。その意味で立憲民主党は、希望の党にいれた中道右派層を獲得できなかったといえよう。この点で維新とのたたかいに破れたのではないかと思う。

 

こう考えると、立憲民主党は、維新や「れいわ」に比較して、新鮮さや清冽さ、党首の魅力、政策がリベラル岩盤層向けの規範主義的理想論(優等生的・学校的あるべき論)を並べ立てて現実の生活感覚から乖離したから、小選挙区で勝ちきれなかったと個人的に思う。言い換えれば、構造的な原因や共闘路線の失敗ではない。

 

立憲民主党の戦略的なパフォーマンスと政策提言の向上で勝機はあると思える。来年の参議院選挙までに立て直せるか?

 

■連合の組合員の投票行動は?

さて、日本のナショナルセンターの連合の組合員の票はどうなったかを検討してみる。
参考にしたのは、連合自身が2019年に組合員の政治意識調査をして発表している。

 

★連合「第7回政治アンケート調査」結果の概要2019年である。WEBに公表されている。

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連合の組合員数は約700万人。官公労は約100万人で、民間労組は約600万人だろう。このアンケート調査結果によれば、「支持政党なしが36%。国民と立民支持合計で35%、自民党支持は20%。」だそうだ。その他・答えずの約10%は、その他の野党又は公明党支持だろう。

 

組合員の投票率は85%を超える。この点はさすがだ。一般の投票率は55%程度だから立派なものだ。

 

というわけで、組合員で投票に行くのは全体の85%の600万人ということになる。そして、自民党に投票する組合員が2割で120万人となり、国民か立民に入れる固定層は216万人となる。

組合員の無党派の210万人の多くも野党系にいれるだろうが、組合員の大多数が大企業正社員かつ男性であろうから、維新に投票する組合員も多そうである。

 

さて、今回総選挙の国民民主党の比例区の得票数は260万票である。連合が立民の共産党との共闘を強く批判していたことからすると、連合組合員の多く(特に民間労組)は国民民主党にいれた可能性が強い。そして、上記の民主党系固定支持者の216万人の推計と、国民民主党の比例獲得票数260万票と一致する。

 

他方、立憲民主党の比例区獲得票数は1149万票で、連合の組合員数以上の国民の支持を得ている。連合の組合員、特に官公労の組合員の支持を得ているであろうが、より幅広い国民からの支持を得ている。他方で、国民民主党は大企業労組の組織政党の色合いが強い(言うまでもないか。当たり前かも)。また、国民民主党は明確な原発推進路線であり、幅広い国民の支持を受けるのには疑問符がつく。

 

上記のとおり、連合の組合員の多くは国民民主党に入れたと推測できるので、連合の組合員が支持する政党がなくなって戸惑ったとはデータ上は言えないのではないか。

 

要は、国民と立民の棲み分けはできており、あとは政党として、両党がどのような政策的、政治実践の連携をとるか、である。それこそが野党政治家に求められているミッションであろう。

 

路線の主導権をめぐって相互に叩き合うのは愚かなことではないかね。

 

 

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