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2021年4月18日 (日)

映画「ノマドランド」

「ノマドランド」を映画館で観てきた。リーマンショックの不況下、米国のとある町の大企業が閉鎖されて、町自体が消滅。夫が亡くなり、自宅も失い、自家用車(ヴァン)を住処とする高齢の女性ファーン。車中泊のまま行く先々で働き、生活の糧を得る漂流高齢労働者(ノマド)。

 

不況の中、社会的セーフティネットもなく、住む場所もなくなったアメリカの高齢労働者たちの過酷な状況を描く。

 

ただし、社会的告発調の映画を想像していたが、実際にはだいぶ印象が異なる。

高齢労働者が「Amazon」の配送センターで働く姿もあるが、描写される「Amazon」社は、高齢者を搾取する企業のようには批判的には描かれていない。かえって高齢労働者にとっては実入りが良い仕事を提供する、人間らしく働ける職場として描かれている。だから、Amazon社は映画撮影を許可したのだろう。

世界恐慌下の「怒りの葡萄」(ジョン・フォード監督、ヘンリー・フォンダ主演)の移動農業労働者のような過酷な労働者や搾取への怒りは描かれない。諦念と孤独が色濃い。これは現代の映画の文法(語り方)。告発調やプロパガンダははやらない。だから、その過酷な出口の見えない米国の現実をえぐっている。

 

映画の主人公には車上生活から普通の屋根のある家で生活する機会が二度来る。一度は中産階級の姉から一緒に住もうと誘われる。不動産業を営む姉夫婦に違和感があり断る。また、同じノマド仲間だったが、息子の家に住みはじめたデイヴに一緒に暮らそうと誘われるが、これも断る。

 

主人公は、自らの意志で働きながら漂流する道を選ぶ。姉は、妹のノマド生活を幌馬車の開拓精神のアメリカの伝統かもしれないと述べる。

 

監督は、クロエ・ジャオという中国人(中国籍)の女性監督。中国国有企業の幹部の娘で、米国の高校、大学を卒業後、米国で職を転々とした後、監督としてデビューして高く評価されているそうだ。

 

アメリカの荒涼とした砂漠と山並みの映像は美しい。この監督の尊敬する映画監督は、ギリシャのアンゲロプロス監督だそうだが、確かに白黒のロードムービーの「旅芸人の記録」に似ている。今のアメリカの厳しい社会的現実を、美しく、諦念と喪失感を、ありのまま切り撮ったところが評価されているのだろう。

 

https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html

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