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2017年10月 9日 (月)

「リベラル」と「保守」、そして「左派」の違い

民進党が分裂して、立憲民主党が結成されました。立憲民主党はリベラル政党を自称し、共産党や社民党は、これと選挙協力をすすめています。「リベラル」と「左派」って何か。私の考えを整理します。

 

「保守」と「革新」

 

私は1959年生まれで、私の若い頃の理解では日本政治の対立構図は「保守」対「革新」でした。1955年~1980年代後半までは、この構図で政治的対立が描かれていました。

 

日本の「保守」はもちろん自由民主党(自民党)です。自民党という政党は、自由主義と民主主義を党名に掲げながら、政治的・市民的な自由や民主主義を真面目に尊重しません。
その証に、自民党は、基本的人権の尊重と民主主義をわが国で初めて宣言した日本国憲法を敵視し、自主憲法制定を党是とする大日本帝国憲法に親近感をもつ復古主義的・民族主義的な色彩の強い「保守」です。少なくとも、自民党は、自己の見解と異なる意見を持つ人々の政治的・市民的な自由を尊重する姿勢に乏しい存在です。ですから、日本における「保守」は、欧米とは異なり、政治的・市民的な自由主義を軽視する姿勢が強く、右派(右翼)の色彩が強いのが特徴です(
注1)。

 

これに対して、日本社会党が社会主義(ないし社会民主主義注2)を標榜して「保守」に対峙しました。もっとも、日本社会党も、真面目に社会主義を尊重したわけでなく、実際には「護憲」(基本的人権、国民主権、平和主義)を標榜する政党でした。支持した多くの国民も社会主義(ないし社会民主主義)を支持したわけではなく、あくまで「護憲」(基本的人権尊重、国民主権、平和主義)を支持したわけです。
この日本社会党と日本共産党を加えた勢力が「革新」でした。これはまぎれもなく左派(左翼)です(
注3)。

 

「リベラル」と「保守」

 

1991年ソ連崩壊、ソ連・東欧社会主義体制が終焉したことにより、日本では左派(左翼)は衰退し、日本社会党は社会民主党へ、さらに民主党へと変貌し、もはや社会主義や左翼を連想させる「革新」という言葉を使用しなくなりました。日本共産党のみが「革新」という言葉を使用します。

 

この頃、「革新」や「左翼」との関係を絶つために、もっぱら民主党や社会民主党が、「リベラル」という用語を使用するようになったように思います。

 

リベラルを教科書的に言えば、自由主義(リベラリズム)と同一であり、経済的には個人的所有を基本とした資本主義を意味し、政治的には政治的市民的自由が保障された議会制民主主義を意味します。ですから、自由主義を党名とする自民党も本来は、リベラルのはずです。

 

ところが、前記のとおり、自民党は経済的な自由主義(資本主義)ですが、政治的・市民的な自由主義に対して冷淡です。政治的・市民的な自由の尊重とは、多様な政治的言論の自由、思想や宗教の自由を尊重するものです。何よりも少数派の政治的・市民的自由の尊重こそがリベラルの要諦です。多数派の政治的・市民的自由のみを尊重しても、それは自由主義的(リベラル)とはけっして言いません。
その点で、自民党は、何かと言えば、「非国民」「反日」「在日」という言葉を投げつける方々と同じ心理的傾向をもっており、自らをけっしてリベラル政党とは規定しないでしょう。

 

以上、日本では、「保守」と「リベラル」は、資本主義を是とする立場は共通ですが、政治的・市民的な自由を尊重するか否か、つまり、日本国憲法の価値を擁護するか否かで大きな対立があるわけです(ただし、リベラルの中でも平和・安保については非武装中立から、専守防衛や集団的自衛権容認までの幅があります)。

 

「リベラル」と「左派」

 

上記のとおり、リベラルとは、経済的には個人所有権に基づく資本主義の立場にたち、政治的・市民的自由を尊重し、多様な価値観に寛容で、議会制民主主義を信奉する人々です。

 

左派は、資本主義の欠陥を指摘し、社会主義経済を指向しますから、資本主義経済を擁護するリベラルとは対立します。

 

しかし、両方からの相互接近があります。

 

左派からリベラルへの接近

 

現代の左派(日本だけでなく、ヨーロッパも)は、ソ連のスターリニズムや中国の共産党独裁の反省から、政治的・市民的な自由と権力分立などの立憲主義を尊重するようになりました(昔は「ブルジョア民主主義」と非難していた)。
また、暴力革命によって社会主義革命を遂行するという革命論から、議会制民主主義を通じての革命という社会民主主義的路線をとるようになりました。
さらに、社会主義計画経済の失敗により、市場経済の活用が必要との認識が左派でも共通となりました。今は、左派がリベラル化しました(ただし、左派の中も平和主義については非武装中立から専守防衛・自衛中立まで幅があります)。

 

リベラルから左派への接近

 

現代米国のリベラルは、①個人所有に基づく経済的な自由(資本主義)、②政治的・市民的自由の尊重を原則としつつ、三つ目③として、①と②の諸自由を社会全員が活用できるように、その物質的手段(生活保障、教育や医療等の福祉手段)の保障を求めるようになりました。この代表的な論者は、ジョン・ロールズです。
この③の要素は、古典的な自由主義(リベラリズム)とは異なるもので、ヨーロッパや日本で言えば、社会民主主義的な要素です。ですから、リベラル左派などとも呼ばれます。これが日本のリベラルに近いものです。

 

なお、米国では、リバタリアン(自由至上主義)という立場があり、③の政府の社会福祉施策を社会主義的だとして強く反対しています(例えば、「オバマ・ケア」廃止論)。

 

■リベラルと左派の違い

 

現代日本の「リベラル」と「左派」の理念的な違いは、経済的な自由主義(資本主義)に対する姿勢、つまり社会主義的要素を肯定するか否かの違いです。
ただ、現在の具体的な政策としては、企業活動に対してどの程度の公的規制を図るのかという程度問題に帰着します。例えば、長時間労働規制とか、非正規労働者の格差是正とか、法人税等の課税強化などです。実際には、それほど大きな違いはありません。

 

日本や米国のリベラルと「ヨーロッパのリベラル」との違い

 

ヨーロッパから見ると、社会福祉や社会的公正を取り込んだ現代米国のリベラル(リベラル左派)や日本のリベラルは、社会民主主義と見えることでしょう。
ヨーロッパの「リベラル」とは、より経済的な自由を強調する党派を意味しています(フランスのマクロン大統領などがこれにあたります)

 

以上のとおり、日本の「リベラル」と「左派」には理念的な共通性が基盤にあり、両者が協力することは不思議ではありません。

 

注1:自民党にも、旧自由党(吉田茂)系のリベラル派がいました。いわゆる宏池会です。このようなグループを保守リベラルと言います。

 

注2:社会主義と社会民主主義の理念的な違いはややこしい。ざっくり言えば、「最初は一緒のもので、途中で別れたが、今や実際上の違いはなくなった」のでしょう。

 

注3:左翼と右翼の違いは

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2012/11/post-54da.html

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