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2017年10月 8日 (日)

前原誠司さんを批判する「信なくば立たず」

■前原さんのツイッター


前原誠司さんは、民進党の「希望の党」への事実上の合流について、ツイッターで説明しています。
http://blogos.com/article/250906/

前原さんは、<憲法改正に積極的に取り組み、北朝鮮問題を踏まえた現実的な外交・安全保障政策を打ち出す。共産党や社民党との協力という「左傾化」に反発し、希望の党に合流し、日米同盟基軸の保守政党として安倍自民党政権を打倒する>と述べられています。 


私は、この前原さんの「政治思想と方針」を是としたとしても、この間の前原さんの政治行動と決断は、「一国のリーダー」となる資質を欠くことを自ら証明してしまったと思います。


■全て想定内

10月3日、前原さんは、民進党議員の一部が小池百合子代表から排除され、結果的に民進党が希望の党と立憲民主党に分裂したことについて、「全てが想定内だ」と明言しています
(時事通信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017100301055&g=pol)」。

 

つまり、前原さんは、当初から民進党の全員が希望の党へ合流することは不可能であり、一部の者が排除されることを承知していたことを自ら認めました。(※注1)

 

ところがそれ以前、前原さんは、9月28日の民進党両院議員総会では次のように発言していたのです。

■誰かを排除しない

「もう一度二大政党制にするためだ。誰かを排除することじゃない。もう一度政権交代を実現する、安倍政権を終わらせる、理想の社会を実現するためだ。」
(毎日新聞
https://mainichi.jp/senkyo/articles/20170928/mog/00m/010/001000c

 

そう、前原さんは「誰かを排除するためではない」と明言していたのです。民進党議員全員の希望の党への合流をさせるとも述べていました。民進党議員は、不安な気持ちながら、代表の前原さんが「そこまで言うのであれば」と前原さんの代表としての提案を了承したというわけです。

 

ところが、実際の経緯は、ご承知のとおり、民進党は事実上解体し、「立憲民進党」と「希望の党」に分裂してしまいました。

 

前原さんは、安倍政権を打倒するためには、これしかないと強調されます。それはそうかもしれません。しかし、それでは何故、両院議員総会にて、自ら思ってもいない、「誰かを排除することではない」「全員を合流させる」などと発言したのでしょうか。

 

前原さんは、堂々と、民進党両院議員総会にて、ツイッターで語った自らの「信念」と「決断」を述べ、合流を提案をすれば良かったのです。そして、反対派がいるなら分党すれば良かったのです。

■政治は非情-ニヒリストたち 

こんなことを言うと、「青臭い書生論だ」、「政治は権力闘争であり、選挙直前ではああでもしなければ希望の党への合流などは決められない」、「騙されるほうが無能」、「反対派を切り捨てるため、だまし討ちもやむを得ない。それが政治の世界だ」と政治玄人(ニヒリスト)から嘲られるでしょう。

前原さんは、あの戦国武将・真田昌幸ばりの「表裏卑怯の者」(表裏比興の者)であり、老獪な策士
なのであると。(※注2)

しかし、果たしてそうでしょうか。

■一国のリーダーたる資質

古今東西の歴史を見れば、中国の三国志や日本の戦国時代、生き残りをかけた権力闘争では、権謀術策、裏切りとだまし討ちにあふれています。所詮、「勝てば官軍」です。これは企業間の経済競争も同じでしょう。

 

確かに、企業や軍隊(部隊)が生き残るために、異論を言う者や足手まといになる者を、非情に切り捨てる方が合理的かつ効率的です。政党も、それが合理的なのかもしれません(短期的には)。

 

内田樹さんが「企業が無能な者を切り捨てるのは競争に勝ち抜くために効率的で合理的だが、その手法で国を運営して良いのか。」と指摘されていました(「株式会社化する日本」)。一国のリーダーである政治家は、企業のCEOや軍隊のコマンダーのように非情で効率優先であってはならない。なぜなら、国民は国が気にくわなかったからといって別の国に移るわけにはいきません。国と国民は一蓮托生の「共同体」なのです。

 

したがって、一国のリーダーたる者は、「登山隊のリーダー」のような資質が求められます。登山隊のリーダーは、メンバー全員の安全を確保し遭難を回避することが使命です。一国のリーダーにとって、メンバーとは全国民です。企業のCEOや軍隊のコマンダーのように、国の維持発展のために足手まといな国民を切り捨てるという人物では、一国のリーダーとしては成り立たないわけです。国民にそう思われたらおしまいです。 

まさに「民信なくば立たず」 

前原さんは、自らを優秀な企業のCEOや軍隊のコマンダーであることを証明されました。しかし、チームのメンバーの無事を使命とする登山隊のリーダーの資質がないことも国民の前に明らかにされたのです。これが前原さんが政治家として失格だと私が思う理由です。

今後、誰が前原さんの言葉を信用するのでしょうか?


※注1:前原さんは、単に小池百合子さんに騙されただけで、希望の党との合流にあたって、政策面や合流の条件などを詰めて文書化することを怠っただけの、ただのバカという説もあります。ただのバカより、稀代の悪人(「表裏卑怯の者」)のほうが格好良いので前原さんは開き直っただけとの説もあります。京都人から見ると、前原さんは典型的な「ええかっこしい」らしいです。


※注2:今回の
衆議院選挙は、所詮、野党の分裂、希望の党の失速により、結局は、自民・公明の勝利となる可能性が高そうです。そして、「自民+公明+維新+希望の党の一部」による連立政権となりそうで、安倍総理は続きそうです。

 

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