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2015年11月21日 (土)

ISへの米仏露の空爆に思う

■設問
次のような場合には、空爆すべきなのでしょうか
1万人の非イスラム教徒の居住地域にISが進攻しようとしている。ISがそこを支配したら、多くの非イスラム教徒が虐殺され、若い女性は奴隷とされる。
その国の政府は崩壊しており、その非イスラム教徒を救出できない。近隣の少数民族の軍事組織はISと戦う用意はあるが、ISのほうが軍事的に優勢である。
このままではISが進攻して、非イスラム教徒や少数民族が迫害されることになる。ISは国連の停戦の呼びかけには耳を貸さない。
米軍などが、ISを空爆すればISの進攻を阻止することができる。

しかし、ISの戦闘部隊を狙っても、ISの周囲にいる(人間の盾を含めて)一般の民間人をまきこむ可能性が高く、数百人単位の民間人が犠牲になる危険がある。
他方、ISの進攻を放置すれば、数百人の非イスラム教徒が虐殺されたり奴隷にされることは確実である。

■倫理問題として
こういう場合に、空爆すべきか否か?

●賛成説(軍事力容認)
米軍など軍事的能力を有する国家は、可能な限り、民間人を巻き添えにしないように努力しつつ、ISを空爆して、非イスラム教徒を救うしかない。それでも発生する民間人の犠牲(誤爆)はやむを得ない。

●反対説(絶対平和主義)
空爆をしても憎しみの連鎖が続くだけで、報復が無限ループになる。また、罪のない民間人を犠牲にすることは許されず空爆すべきではない。そもそも欧米の帝国主義の結果であり、欧米軍に軍事介入する資格はない。軍事的手段は控えて対話を呼びかけるべき。

倫理的にどちらが正しいか、といっても結論はでないでしょう。
あるいは、倫理的にはどちらも正しいのでしょう。

(追記)サンデルの「正義の話をしよう」に書かれた「道徳のディレンマ」です。
暴走電車から5人を助けるのに、あなたは隣にいる太っちょを転落させれば暴走電車を止められる。あなたは軽すぎて飛び降りても暴走電車は止められないとする。さあ、この場合に太っちょを転落させるべきか。
多くの人は、積極的に無実な人を手にかけることはできないと言うでしょう。
設問の場合も結論はでないでしょう。
・罪なき人をできるだけたくさん助けるべきだ。
・IS側にいる民間人をできるだけ殺さない努力を尽くすなら許される。
・いや、どんな理由があろうと無実の人を殺害してはいけない。

■現実的問題として

常識的には、賛成説が多数説になるでしょう。それが人類社会ってものです。
空爆には、強い米軍が後ろ盾になっているとか、米国の威信や世界支配力の維持のためとか、民主主義国家での国民からの支持を得るためとか、子どもを含めた民間人の犠牲を無視するとか、帝国主義的な行動だとか、そもそもイラク戦争を行った米国が悪いとか、きれい事ではないもろもろの事情がからまります。けっして、空爆が正しいとはいいきれない。


でも、平和主義の立場であっても空爆することに反対するのはむずかしいでしょう(相対的平和主義)。

その思いの底には、どの国(ISはもちろん、イスラエルやアメリカ、ロシア等々)であっても民間人への暴虐に反対するという気持ちがある。「悪行」に対しては、犠牲をはらってもたたかうべきだという建前を否定しきれないから。


確かに、「絶対平和主義の思想」は、すばらしいと思います。「暴力の連鎖を断ち切れ」、「右の頬を打たれたら、左の頬をも差し出しなさい」。

しかし、「言うは易く行うは難し」です。もし、非イスラム教徒側に、あなたの子どもや家族がいても、その絶対平和主義を貫けるでしょうか。

(追記)
IS側にあなたの子どもや家族がいれば、逆の立場の親同士が対立するでしょう。

両者の要求を調整するには、空爆ではなく、地上軍を派遣して誤爆をできるだけ避ける方策が最も良い現実的な解決手段かもしれない。しかし、それでは戦争範囲と戦闘行為は拡大する結果になり、泥沼におちこんでしまいます。



凡人には絶対平和主義実践不可能なことです。このような絶対的平和主義は、聖人君子だけの国があれば実践可能でしょうが。そのような国はどこにもありません。
これは実際におこった事柄です。
ISは、ヤジディ教徒を迫害し、異教徒の女性を奴隷としていました(これは確認された事実です)。米軍は、2014年にISを空爆を開始しました。

■報復的空爆と人道介入的空爆
今、フランスやアメリカ、ロシアがISに対して行っているのは報復的空爆のようです。ヤジディ教徒救出やクルド民族支援のための人道的な目的達成のための軍事力行使(空爆)とはいえないかもしれない。

(追記)
過剰な報復的空爆は、報復という目的であり、自衛手段としては正当化できない。報復の結果、過剰な民間人の犠牲者を出すことになり、まさに過剰防衛となります。

でも、ISの戦闘員訓練所や対外テロ支援施設、武器弾薬倉庫を破壊するという目的と武力行使の範囲であれば、やむを得ない自衛的な空爆となるでしょう。

フランス大統領も何らかの方法でISへの処置をしなければ、フランス国民の支持は得られず、極右の国民戦線が大躍進し、右翼民族主義者のルペンが大統領になりかねない。政治的指導者としては、選択肢はほかにないとも言える。

■判断基準

結局、空爆を支持するか否かは、「軍事力行使の目的の正当性と、軍事力行使の質と量が、正当な目的達成に必要最小限のものであるかどうか」によって判断されるしかない。まあ、あまりに法律家的な常識的な結論ですが。

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