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2015年5月 6日 (水)

「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録と日韓対立への懸念

■「明治日本の産業革命遺産」世界遺産に登録を勧告と韓国の反発

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150504/k10010070041000.html

ユネスコの諮問機関・イコモスは、世界遺産に登録することがふさわしいとする勧告を出したとのこと。今年6月28日から7月8日かけてユネスコの世界遺産委員会で審議が開始されて決定されるとのこと。
産業革命の遺産には、三池炭鉱(宮原坑、万田坑)、高島炭坑、端島炭坑(通称、軍艦島)や、長崎造船所が含まれています。
これに対して、韓国が猛反発をしています。

韓国国会の外交統一委員会は4日、日本政府の取り組みを非難する決議を採択したうえで、「多くの朝鮮人が強制徴用された場所を世界遺産に登録するべきではない」として、登録を認めないよう求める書簡を6日、外交統一委員長が世界遺産委員会の各委員国に送りました。

炭鉱や長崎造船所などで朝鮮人が強制労働に従事された施設であり、「隣国の痛みが残る施設を世界文化遺産に推薦することは、遺産登録の原則と精神にふさわしくない」とのことです。

■世界遺産となる理由は
イコモスがどういう観点から世界遺産登録に記載するように勧告したのかは報道されておらず、詳細は判りません。しかし、非西洋である日本が明治期に産業革命を達成したという事実が世界遺産としてふさわしいと評価された背景にあるように思います。

明治期の日本の「近代化の成功」は、「非西洋世界は宿命的な後進性を有する」という偏見を払拭するための第一歩であったという意味で世界史的な出来事だったと思います。
これに対して、韓国は、韓国・朝鮮人が端島炭鉱や長崎造船所などで強制労働をさせられた事実をあげて、このような韓国に痛みを与えた施設は、世界遺産にふさわしくないと反発し、抗議しています。

確かに、昭和期になって端島炭鉱や長崎造船所で韓国人に過酷な強制労働が課せられたのは事実です。

しかし、日本が韓国を植民地化したのは、1910(明治43)年「日韓併合」以後であり、韓国・朝鮮人への強制労働が行われたのは、これ以後だったのではないでしょうか。1894年の日清戦争、1904年の日露戦争を通して、日本が韓国統監府をおいて韓国を支配していくことは歴史的事実ですが、強制労働や強制徴用は日中戦争が開始してからでしょう。明治時代には、日本の明治期の産業革命期に、日本政府が韓国人を強制的に徴用して炭鉱等で強制労働させていた歴史的事実はないように思います。

また、イコモスの対象は、あくまで「明治期の産業革命遺産」ですから、日本の昭和期の韓国人への強制労働を免罪する意味をもちません。

■歴史には「光と影」がある

「産業革命」は「光」の面ばかりではありません。これは洋の東西を問いません。産業革命以前の「原始的蓄積期」で農民が土地を奪われて貧困にあえぎます。そして、産業革命の工場、炭鉱、鉱山で「自由な労働者」として雇われて過酷な労働を強いられました。これは日本も韓国も同様でしょう。

当時、洋の東西を問わず児童や女性でさえ過酷な環境で1日12時間以上の労働を強制されました。エンゲルスの「イギリスの労働者階級の状態」や夏目漱石の「坑夫」で描かれています。

明治期の産業革命も「光と影」をもっています。しかし、非西洋の社会(たまたま日本)が明治期に産業革命を達成したという歴史の普遍的・世界史的な意義を見るべきでしょう。

韓国の人々が、韓国・朝鮮労働者の強制労働が行われた炭鉱や工場が世界遺産とされることに反発する気持ちは判らないわけではありません。しかし、物事には光と影がある。その両面を踏まえて、普遍的に物事を見るべきではないでしょうか。

これは日本人にも言えます。明治期の産業革命の影の部分、足尾銅山の鉱毒や鉱山や炭鉱での労働者の暴動と警察・軍隊による鎮圧という歴史があります。明治政府の「開発独裁」によって達成されたのが産業革命でした。その「開発独裁」の行きつく先が、アジアへの侵略と第2次世界大戦の敗戦だったのですから。

■両国民の感情的対立回避を

韓国がイコモスの韓国に猛抗議をして政治外交問題化することは、両国民の感情的な対立を深めることになるのではないかと懸念します。

米国は原爆ドームの世界遺産登録に反対しましたが、節度ある態度でした。
日韓両国民の感情的対立を避けるために、韓国政府には「世界遺産登録を断固阻止」という姿勢ではなく、「世界遺産登録するかどうかはともかく、端島炭鉱などに韓国人の強制労働の影の部分があることを忘れてはならない」とコメントする節度ある態度を期待したい。日本人的な中途半端・あいまいな考え方で理解されないのかもしれませんが。

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