人質事件で安倍首相を「言語道断」という国会議員に思う
ISIS(イスラム国)の日本人拉致人質殺害事件について、安倍首相の対応について批判した民主党や共産党の国会議員らが批判にさらされている。
産経新聞
http://www.sankei.com/politics/news/150127/plt1501270006-n1.html
民主党幹部も議員に「不規則発言をしないように」と注意しています。共産党の議員のツイッターに対しては、共産党の委員長でさえ不適切だと指摘しました。不適切との指摘に同意します。もっとも、共産党委員長の場合には、少し過剰反応かと思います。「議員本人がツイッタ~上でお詫びして削除しているのだから、結果的に適切に対応されている」とコメントすればよかったのにと思いますけどね。
確かに、今、このタイミングで、国会議員がISISのテロ=犯罪行為を利用して、安倍内閣を批判するのは、まさに「 為にする批判」という印象が強いと私も思います。単なる条件反射的反発です。
そもそも、問題の根っこは、小泉首相がイラク戦争の際に「米国の側につく」と高らかに宣言し、大規模な資金援助をし、さらにはイラクやインド洋に自衛隊派遣してきたことから、イスラム過激派から「米英」らと同列におかれて「敵」とされたことにあるわけです。安倍首相だけの問題でない。批判するなら、そこから批判しないといけないし、今は批判を理解してもらうタイミングではない。
今回、安倍首相がイスラエルなど中東を訪問するタイミングをねらって、ISISは人質による要求を出してきたわけですが、それは安倍首相のせいと言うよりも、テロ集団であるISISが自ら最大の効果を狙った結果です。
確かに、安倍首相が、この時期にアラブ諸国だけでなく世界から非難されているイスラエルに訪問して、ISISのテロと対決すると表明したことは、きちんと外交的に分析した上で問題を指摘すべきだと思います。
が、だからといって、この中東訪問が今回のISISの日本人人質事件の直接の原因になったとは言えないでしょう。実際、この訪問前に日本人は拉致されているのですから。ISISは、人質を利用する有効なタイミングを狙っていたわけで、遅かれ早かれ、安倍首相であろうとなかろうと、人質を利用した要求を出したでしょう。
また、政府は、現在、ヨルダンやトルコを通じて日本人解放の対策をとっていると思われます。事柄の性格上、水面下の交渉で内容もわかりませんが、経過が見えないからといって、「政府は何もやっていない」「口先だけだ」と断定する根拠はないと思います。
実際、ISISは、当初の2億ドルの非現実的な身代金要求から、ヨルダンが拘束する自爆テロ犯(死刑囚)との交換要求に変更しました。何らかの説得や交渉が反映していると見るのが素直な見方でしょう。まったく楽観はできないとはいえ、なんらかの交渉が進められて人質解放の望みはまだあるように見えますし、ぜひ、そう期待したいと思います。
米国は、この「身柄の交換自体もテロ犯に対する譲歩だ。禁じられるべき。」と言っています。しかし、米国自身は米軍捕虜と交換にタリバンの幹部を釈放しています。身勝手でしょう。日本政府としては、この米国の指示に屈せずに自国民保護の使命を果たすべきです。
ということで、この段階で、いかに安倍首相を政治的に嫌っていたとしても(私個人は安倍首相の政治スタンスには絶対反対ですが)、国会議員が上記の感情的な一方的なコメントをツイッターにながすことは、所属している政党としては迷惑な話でしょう。
単なる個人のツイッターや批判的ジャーナリストや識者であれば、批判はもちろん自由ですが、政党所属(しかも比例区選出)の国会議員という「組織人」である以上、慎重に検討してから意見をいうべきでしょう。「若さゆえの勢い」から批判したくなる気持ちはわかりますが。
もちろん、私も今回の事態に対して、日本政府のこれまでの外交方針を踏まえて批判すべき点が多々あると思いますが、それは今回の人質事件の推移を見てから批判しても遅くはないし、そのほうが適切だと思います。
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