2014年総選挙の「民意」の有りどころ
今年の衆議院選挙の評価、「議席数」は小選挙区制で歪められているので、議席数を見ては「民意」が分からない。衆議院比例区の「投票率」、「得票率」、「得票数」によって、国民の政党の支持の変化を判断するのが一番、わかるはずです。
2012年と2014年の総選挙を比較すると次のとおり。
【衆議院比例区】
2012年 2014年
投票率 59% 52%
自民党 27.6%(1662万) 33.0%(1765万)
民主党 15.9%(962万) 18.3%(977万)
維新 20.3%(1262万) 15.7%(838万)
公明党 11.8%(711万) 13.7%(731万)
共産党 6.1%(368万) 11.4%(606万)
社民党 2.3%(142万) 2.4%(131万)
次世代 - 2.6%(141万)
生 活 - 1.9%(102万)
「勝者」は、自民党と共産党。
「敗者」は、維新と次世代
自民党は、投票率が低いとはいえ、比例区の得票率は33%の得票率です。議席占有率よりも低い。しかし、前回27%より5%アップし、しかも100万票を上積みしています。総議席を減らしたとはいえ「勝利」でしょう。
民主党は、比例区は前回よりも2.4%アップで18.3%となり少し回復したように見えますが、得票数は15万人増えただけ。「踏みとどまった」だけです。
維新は、比例の得票率が20.3%から15.7%に減少し、400万票の減少ですから、議席数にかかわらず「敗北」でしょう。
公明党は得票率を2%アップしていますが、得票数はほぼ変わらずで「現状維持」です。
共産党は得票率も2倍近く増加し、250万票を上積み。「大勝利」でしょう。この政党が将来、政党名をかえて、共産主義から欧州社民路線、非武装中立をやめて「専守防衛」路線になれば、けっこう大きな政党になるかもしれません。
社民党はほぼ同じ。共産党が伸びているのに、なぜ社民党は伸びないのか? 「敗北」でしょう。社民党は性的少数者保護やジェンダーフリー提唱など「市民的リベラル」を売りにしているのですが、なかなか選挙の結果には繋がらないですね。
次世代は、比例で2.6%の得票率で得票数141万。社民党程度の勢力を持っている。右派の国民の票が自民と維新にもとられて、次世代は存在感が示せなかった。田母神氏が都知事選で60万票をとったので、もっと増えるかと思いましたが「大敗」です。この日本版ネオナチ・極右政党が国民の支持を受けずに消えてしまえば良いのですが、維新がリベラル色を強めると、また息を吹き返すかもしれません。
総括すれば、安倍自民党への国民の信任は続いており、もうしばらくアベノミクスの様子を見ようということでしょう。少なくとも民主党の経済政策よりも、アベノミクスを国民は評価している。集団的安全保障や原発再稼動、沖縄倍軍基地問題などは多数派日本人の投票行動には影響を与えない。
小選挙区のおかげで、自民党・公明党は議席3分の2を維持している。しかし、国民の支持は比例区選挙結果から見れば圧倒的とは言えない。このギャップを軽視して、自民党が政権運営を誤ると次回は勝利できるかどうか分からないですね。
安倍首相は自信を深めて、2016年参議院選挙で衆議院同時選挙を視野にいれているとの観測があります。10%への消費税値上げ前に、総選挙をして自民党単独3分の2を狙うということでしょうか。
それには何よりも「景気」がどうなるか次第です。景気が悪くなったときには、政権が選挙に勝つことは困難です。今回、安倍首相は、消費税増税により景気悪化するぎりぎりの局面で、解散総選挙の賭けに打って出て勝利。2016年の参議院選挙は10%消費税アップ前です。今回、安倍首相は2016年秋には必ず10%アップすると断言しました。でも、景気が悪いとウルトラCとして消費税アップ再延期を打ちだすかも?
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