「リベラル側の一致点はどこか」-ヘイトスピーチ禁止法についての補足
■ヘイトスピーチ禁止法の補足
ヘイトスピーチについての私のブログに対する批判的コメントの多くが、私の意図した趣旨を誤解しているように感じました。
私がいつものように「あーだ、こーだ」と書いて、何を言いたいのか判りにくい文章のせいなのでしょう。でも、この問題は、単純な二元論で結論を出すべきではないという気持ちもあります。
ヘイトスピーチに関しての私の意見(ブログ)の骨子は以下のとおり。
①「ヘイトスピーチ」とは、人種・民族差別による暴力・差別・蔑視を扇動する表現を意味する。人種差別的ではない批判・非難などは、これに含まれない。(* 「国連自由権規約20条2項」や「人種差別撤廃国際条約1条1項、4条」)
②日本は、人種差別的ヘイトスピーチの規制を求める「国連自由権規約」や「人種差別撤廃国際条約」を批准しているから、政府は、これへの対策をすべき条約上の義務を負っている。(*日本政府は「表現の自由を尊重する」という留保条件をつけているが、対策をせず放置することは許されない)。
③人種差別的ヘイトスピーチを禁止・処罰する法律は、適切な立法であれば、理論的には合憲となる。
④しかし、安倍政権の下では、適切な立法がなされない危険性が高く、広く「表現の自由」を侵害する弾圧立法となる公算が強い。
⑤したがって、現時点でのヘイトスピーチ処罰法には消極・反対する。
⑥刑罰規制ではなく、ヘイトスピーチに対する行政救済制度を設けることを提案する。具体的には、法務省の部局に、差別者に対して警告を行う措置や、裁判所に対して差別行為の差止め等を訴訟を提起する権限を認める。
⑦また、捜査当局は、現行法の威力業務妨害罪などを活用して人種差別的ヘイトスピーチを厳格に取り締まるべき。
多くの「右の方」のコメントは、①や⑤をほぼ無視して、主に②、③、⑥について批判する。
もっと判りやすく乱暴に要約すると私の趣旨は次のとおり。
(1)ヘイトスピーチ処罰立法には反対する。
(2)ただし、ヘイトスピーチを規制する必要はあるので、人種差別的ヘイトスピーチ是正の新たな行政救済制度を設ける。この行政救済機関(人権擁護局とか、人種差別撤廃委員会とか)は、差罰者に対して差別行為であることを警告・差止めを求めることができる。これに従わない場合には、この機関に差別者に対する差し止め訴訟を提訴する権限を付与する。最終的には、裁判所が、司法の場で差別行為の有無や差し止めの可否を判断する。
(2)を書いたのは、ヘイトスピーチに対するリベラル派の意見が分裂しているように感じたからです。
■リベラル側の一致点はどこか
リベラルな陣営が、ヘイトスピーチ禁止・処罰法について賛否が分裂していることが気になります。
○反対派:ヘイトスピーチとはいえ、表現の内容的規制は一切反対すべきだ。
○賛成派:ヘイトスピーチを禁止し、処罰する法律を整備すべきだ。
反対派については、ヘイトスピーチ規制そのものに反対するというだけでは現情勢では国民の共感を得ないのではないか。それでは、これを機会に表現の自由規制立法をつくろうとする安倍内閣や治安機関の思惑には対抗できないように思います。しかも、在特会など人種差別主義者グループは、これに反対するでしょうから、「反対」という結論が同じになってしまい政治的な対立構図として判りにくくなる。
賛成派については、この規制が新たな治安立法や弾圧立法になる危険性に、余りに無頓着ではないか。
そこで、リベラル陣営が広く一致する「政策」をつくることが求められているように思います。私のような「行政救済機関(人種差別撤廃委員会)の設置」とか、「ヘイトスピーチ禁止基本法」の制定とか、いろいろ検討して、一致した政策を模索すべきだと思います。
誰か、そのような政策をつくって欲しいと思います。こういうのをつくれるのは、センスある学者でしょうね。
弁護士会とか弁護士団体とかは、なかなか意見がまとまらず、無理でしょう。私のような(2)の意見を言うような弁護士は、仲間からも多くの批判を受けることになりがちです。
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コメント
人種差別撤廃国際条約では、「人種差別」を次のとおり定義しており、人種だけでなく、民族的若しくは種族的出身」による差別も含む概念です。法律的には、この定義に基づき議論がなされています。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html
第1条1項
この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。
投稿: 水口 | 2014年9月27日 (土) 06時36分