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2014年5月 2日 (金)

日本の労働時間-未だに長時間労働社会 日本

■労働時間規制撤廃と残業代ゼロ
産業競争力会議で長谷川氏は、またぞろ「労働時間規制の緩和、残業代ゼロ」の提言です。労働弁護団はこれに警鐘を鳴らしています。詳細は下記を参照下さい。

■日本の労働時間は何時間か-1800時間の嘘

ところで、労働時間の規制緩和を提言する政府は、日本の労働時間が1800時間を切って1700時間台になった喧伝しています。年間1800時間というと、「週40時間、残業無し、完全週休2日、年次有給休暇完全取得」という働き方です。日本の実態は全く異なるでしょう。特に正社員を中心にして長時間労働は変わっていません。1800時間はパート労働者を含めた平均労働時間であり、正社員の労働時間の実態を示していません。

■毎月勤労統計調査 サービス残業の集計なし

厚労省の労働経済白書では「月間労働時間」を発表しています。これを12倍すれば年間労働時間となります。厚労省「毎月勤労統計調査」に基づくものです。注意しなければならないのは、これは厚労省が事業者に問い合わせて回答された労働時間の統計ですから、サービス残業はカウントされていません。

【毎月勤労統計調査による年間労働時間】
年    総労働時間 一般労働者 パート
2010年  1754.4       2008.8      1095.6
2011年  1747.2       2006.4      1089.6
2012年   1765.2       2030.4      1105.2

■労働力調査が実態に近い
これと別に、総務省統計局の「労働力調査」では、全国で約4万世帯の約10万人に聞き取りをして、平均週間就業時間を発表しています。これは、月末1週間の労働時間を調査員が直接聞き取るものです。1年が52.14週ですから、大ざっぱに52倍すると年間労働時間となります。

【労働力調査による年間労働時間】
年      男女計   男    女
2010年   2106    2345   1778
2011年   2096    2340   1763
2012年   2096    2340   1768

上記は細かくみれば正確ではないのですが、大ざっぱな労働時間の実態を示している思います。詳細は、森岡孝二教授の「企業中心社会の時間構造」(青木書店・1995年)に解説されています。
■正社員の労働時間は年間2300時間を超えている

要するに、男性(正社員と非正規社員)は平均して年間2300時間を超えて働いています。正社員は、これ以上に働いているでしょう。
ですから、無限定正社員という批判が当てはまるのです。しかし、法的には、「無限定に長時間働かされる正社員」というのは違法にほかなりません。
今でも日本で求められているのは、特に正社員の「労働時間の短縮」(残業の禁止)であり、労働時間規制の撤廃や残業代ゼロではけっしてありません。
正社員の「時間短縮」を図ることで、「ワーク・ライフ・バランス」や「女性の活躍」(男女平等)、「少子化対策」に絶対必要な前提です。産業競争力会議の長谷川氏の案は、これに逆行するものです。


(追記)

森岡孝二教授の上記著書は、2013年8月に岩波現代文庫で新著になっていました。アマゾンで知って購入して、ブログ書いたあとに読みました。勉強不足でした。

「過労死は何を告発しているか」 現代日本の企業と労働

毎月勤労統計調査と労働力調査の調査方法の比較は、同書第二章に詳述されています。毎月勤労統計調査は、賃金台帳をもとにして労働時間が算出されており、事業者の回答は未払い残業は含まれていません。

労働力調査は、就業者ひとり一人に面談調査をして算出したものであり、サービス残業も含まれており、サービス残業も含めて実労働時間を反映している。

上記著書で、森岡教授は、日本の特徴として、労働時間の二極化が進んでいることを指摘されています。長時間労働者と短時間労働者が、砂時計の形のように二極化しているとのことです。その意味では、平均労働時間は余り意味は無い。

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コメント

正社員の長時間労働の解消が重要ということに、強く賛同します。 今の正社員は、長時間労働または退職の二択です。程々というものがありません。
家事、子づくり、育児などを放棄するしかありません。
毎日長時間労働で、就業から始業までの休息時間も不十分です。有給休暇の消化も義務化して欲しいです。angry(-_-X)

投稿: 田中稔 | 2014年6月10日 (火) 09時12分

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