« 憲法9条の成立過程について | トップページ | 大飯原発差し止め判決 福井地裁 »

2014年5月 9日 (金)

有期社員の差別是正を求める裁判提訴(労契法20条訴訟)

■労働契約法20条の施行

 2013年4月1日に施行された改正労働契約法20条は、有期を理由とした不合理な労働条件の格差を禁止しています。

(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

この規定を使って、二つの格差是正訴訟を提訴しました。

■東京メトロコマース訴訟

http://www.labornetjp.org/news/2014/0501metro/newsitem_view

東京メトロコマース㈱は、東京地下鉄㈱の子会社、駅構内の販売店等を経営し、従業員約840人(正社員と有期社員の合計)、営業収入約169億円の会社です。
原告4名は、メトロの駅販売店で販売を担当する有期社員です。有期1年の契約を更新して、約7年から約10年にわたり勤務してきました。
販売店では正社員と同様に配置されて、正社員と同様に働いています。
しかし、労働条件は次のような著しい格差があります。

               有期社員(時給制)   正社員(詳細不明)

基本給   1050円(月例約17万円)   約25万円

住宅手当 なし               9200円

賞 与  約24万円(年間)       約150万円(年間)

退職金  なし              約300万円(10年勤務)

5月1日、全国一般東京東部労働組合に所属する同社の有期社員の組合員4名が労働契約法20条を根拠に上記労働条件の格差は違法であるとして、損害賠償請求を提訴しました。
誰もがよく知っている 地下鉄駅構内の販売店です。販売店での有期社員と正社員の労働時間は同一ですし、仕事内容も同一です。昇進は配置転換も販売担当の正社員と異なるところはありません。
にもかかわらず、上記のような著しい格差があるのは、労働契約法20条に違反するものです。

また、東京東部労組は、東京メトロコマースとの団体交渉の場で、同社の正社員の給与規程や正社員の実際の賃金について明らかにするように要求したにもかかわらず、東京メトロコマースは、東部労組は正社員の組合員がいないので回答しませんでした。しかし、労働契約法20条で正社員との労働条件の不合理な格差を禁止しているのですから、有期社員の労働条件に密接に関わることで、会社が回答しないのは、明白な不当労働行為(不誠実な団体交渉)です。労働契約法20条がある以上、会社は団交での回答を拒むことはできなくなっています。

■日本郵便訴訟

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140508-00000107-mai-soci

日本郵便株式会社の従業員は全体で約39万人、正社員以外の有期社員は約19万人で49%を占めています。有期社員には、時給制契約社員(約18万人)、月給制契約社員(約1万人)、エキスパート社員(約1400人)がいます。

原告となった3名は、時給制契約社員です。職種は、郵便外務事務(郵便の集配業務)、郵便内務事務(郵便局内で窓口、郵便の仕分け業務等)です。

それぞれの時給は960円から1500円です。
有期社員と正社員は同じ仕事に業務をしています。郵便集配業務であれば、正社員と有期社員が同じ郵便局の同じ集配部に配属されて、同じ班で同じ勤務シフト制で勤務時間が決まり、労働時間・残業時間・休日労働も同様です。

にもかかわらず、労働条件が異なります。
最も明白な労働条件の格差は諸手当です。 例えば、年末年始の繁忙期、年賀状などの配達で郵便労働者は、正社員、有期社員の違いなく、年末年始の郵便業務に従事します。 正社員には、年末年始手当が1日4000円から5000円が支給されます。同じく年末年始に働く有期社員には、この手当が支払われません。

そのほか、住居手当や外務手当も正社員とは異なり支払われません。
賞与も夏冬それぞれ月例賃金の3割が支払われるだけです。正社員は年間合計賞与は月例賃金の約3ヶ月です。 夏季冬季休暇や病気休暇も正社員にはとれますが、有期社員にはありません。

5月8日、この格差是正を求めて、病気休暇を取得する地位、諸手当の支払いを求めて提訴しました。

原告の3名は、郵政産業労働者ユニオン(組合員約2500人)の組合員です。 この諸手当の格差も労働契約法20条に違反する不合理な格差であり、正社員と同様の諸手当の支払い求めての提訴です。
郵政産業労働者ユニオンは、大阪でも提訴の準備をしており、全国的な取り組みになるでしょう。

■格差是正の大きな労働運動を

民主党政権が、労働者の権利をまもるために制定した改正法です。これが、民主党の唯一の(?)成果です。

施行1年経過後、有期社員とそれを応援する労働組合が立ち上がって提訴しました。 この2社ような格差が多くの職場にあります。でも、個人だと是正を要求したら、雇止めされるのではないかと不安になり声を上げられません。そのような相談も多く受けました。

企業側からは、「有期社員の労働条件を改善するなら、正社員の労働条件を下げざるを得ない」とのおどしがあると思います。しかし、正社員労働組合が、この企業の脅しにひるめば、労働組合は一層弱体化し、結局、自分の権利も守れないことになるでしょう。

全国の労働組合に、有期社員の労働条件是正の取り組みを強めてもらいたい。

|
|

« 憲法9条の成立過程について | トップページ | 大飯原発差し止め判決 福井地裁 »

労働法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/104432/59611611

この記事へのトラックバック一覧です: 有期社員の差別是正を求める裁判提訴(労契法20条訴訟):

« 憲法9条の成立過程について | トップページ | 大飯原発差し止め判決 福井地裁 »