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2014年3月30日 (日)

国家戦略特区 福岡市は「解雇規制緩和」特区を提案していた

■2014年3月28日、政府の国家戦略特区審問会議の決定

諮問会議は、戦略特区を6地域(東京圏、関西圏、新潟市、養父市、福岡市)を発表しました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai4/siryo3_2.pdf

福岡市の部分には次のように記載されています。

<雇用・労働>

 創業後5年以内のベンチャー企業等に対する雇用条件の整備【雇用条件】

この「雇用条件の整備」の内容は不明ですが、この福岡市は、平成25年9月6日に国家戦略特区ワーキンググループに、ヒアリング資料を提出しています。このヒアリング資料は次に公表されています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/8-fukuoka.pdf

これを見ると、福岡市の特区は、「新たな起業と雇用を産み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区」と銘打っています。

新規事業の開業率を10年後に20%(現状6.4%)に向上することを目標としています。そのために福岡市は起業教育や起業支援を行い、国は「スタートアップ期に限定して、解雇規制の緩和」を行おうというものです。

これを諮問会議が認めたとしたら、福岡市の「ベンチャー企業等に対する雇用条件の整備」の内容は「解雇規制緩和」を意味していることになります。

つまり、高島宗一郎福岡市長は、企業の起業率向上や外資導入するために、創業(スタートアップ)時期に解雇規制緩和を実施するように求めたのです。

■国家戦略特区法では全国共通労働規制は緩和できないはず

国家戦略特区法制定の過程において、特区内で解雇規制や有期労働契約の規制緩和を行うことは強い批判が加えられました。

その結果、有期労働契約規制(無期転換ルール)については、特区での例外を定めることは断念されて、同法附則にて、全国共通の特例法を制定することになったのです。特区内での労働規制緩和はできないと「抵抗」したのは厚生労働省でした。

したがって、解雇規制を全国共通の規制を解除して、特区内だけで解雇規制を緩和することは、国家戦略特区法の制定経過にも反することになります。

だから特区諮問会議は「ベンチャー企業等に対する雇用条件の整備」という表現にしているのでしょうか。そうであれば、ごまかしです。

私は東京で学生生活を送っていましたが、転勤族の父親らが福岡市に住んでいたこともあり、大学時代に良く福岡に行ったので親しみをもっています。

その福岡市が、新たに新規事業拡大、起業率向上の施策を充実させることに異論はありません。ですが、解雇規制の緩和などをしなくても、九州中の若者が集い、アジアへの玄関口である福岡市であれば、他の支援策(経営者個人保証の緩和、投資支援等)を充実すれば、それで十分ではないでしょうか。

解雇をしやすくなったからといって正社員が増える保証はありません。もし、その程度の起業家なら正社員ではなく非正社員のみや派遣労働者のみで起業するでしょうから。

この福岡市の「雇用条件の整備」がどのようになるのかは要注目です。福岡市議会での審議、福岡の労働組合の積極的な調査や情報提供を期待しています。

ここで解雇規制緩和されれば、これが全国に波及すると思います。福岡の労働組合の役割は極めて重要です。

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