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2014年1月26日 (日)

「脱原発」の現実性

読書日記「原子力発電の政治経済学」伊東光晴著
(岩波書店)2013年10月第1刷、2014年1月25日読了

経済学者の伊東光晴京大名誉教授の脱原発論。伊東教授は、原子力発電所の継続は不可能であり、「脱原発」は経済的に見て可能だとされています。他の脱原発本より、伊東教授の見解は、事実に基づく立論で説得力があると思います。

■原子力発電は継続不可能

○核廃棄物処理の目処がたたない。
過去に1兆円をつぎ込んだ高速増殖炉「もんじゅ」は、1995年12月のナトリウム冷却漏れ事故、2010年10月炉内中継装置脱落事故、2012年11月と2013年2月の点検漏れ事件などが多発して運転再開の目処はたっていない。

もはや、日本も核燃料再処理事業から撤退するしかない。日本とロシア以外の米英仏伊独は全て撤退を決めている。高速増殖炉がなければ、日本の核燃料再処理事業、それを前提とした核廃棄物処理事業はすべて成り立たない。

○老朽化原発は廃炉しかない。
強い放射線に晒されて原子炉が脆弱化しており、緊急停止時に圧力容器が破壊される可能性がある(井上博満東大名誉教授の指摘。同教授によれば、最も危険なワースト7は、玄海1号、美浜1号、同2号、大飯2号、高浜1号)。

また、原発メーカーのウエスティングハウス社(WH社)は耐用期間30年で設計しており、同じくGE社は40年で設計しているという。日本では30年を超えて運転されている原発は20基、3基が40年をこえて10年の稼働を認められている。設計上の耐用期間を経過した原発の再稼動は認められまい。

■原子力発電がなくても電力はまかなえる

○短期的には節電をすれば乗り越えられる。
このことは既に2011年、2012年、2013年の夏場を乗り切って証明されている。

○問題は中長期的に経済的に可能かどうか。また、CO2を増加させないことは可能か。

伊東教授によれば、

同一発電量に対する電源別のCO2発生の比率をみると、石炭火力100に対し、石油が約75、天然ガスが約55である。他方、電力各社の発電量は、年度によって電源別比率が変わっているが、おおよそ石炭火力25%、天然ガス30%弱、原子力30%弱、石油等7~8%であり、その他水力8%となっている。(2011年11月「世界」掲載時点)

2012年度の電源別比率は、石炭27.6%、石油18.3%、天然ガス42.5%、原子力1.7%、その他水力10%

天然ガスはLNG発電新技術が導入されて発電効率が高くなっている。石炭火力の比率を落として、最新鋭の天然ガスのLNG発電に切り替えることで、CO2が大きく削減される

JR東海は、電力を大量消費するリニアモーターカーを作るよりも、その資金でLNGによる自家発電所を作るようにすべき。

○日本は天然ガスを割高に購入している問題点

日本の天然ガスの市価は15ドルと高い。アメリカは5ドル、ヨーロッパ各国は約10ドル強。これは価格が石油価格にリンクされた長期契約であるため。資源エネルギー庁による規制方法を改善すれば、これほどの大きな価格差は改善される。

○米国発の「シェールガス革命」による大変化

シェールガス革命は、世界エネルギー事情を大きく変える。世界一の埋蔵量は中国、次に米国、アルゼンチンが続く。世界的に見れば膨大なシェールガスが埋蔵されており、天然ガスの価格は下がる。このLNGガスが活用されれば、原子力に依存することなく電力供給は経済的に十分に成り立ち、CO2 抑制にも繋がる。

○有望な地熱発電

さらに将来的には、日本では地熱発電を活用することができる。この地熱発電所を作るメーカーは三菱重工、東芝、富士電機の三社で世界シェアの70%を占めている。国立公園法を改正する必要があるし、今から地熱発電所を建設してもあと10年はかかるから将来課題。

○夢のような新技術

もっと夢のような技術は、宇宙太陽光発電である。宇宙空間に太陽電池をつくり、マイクロ波で地上に送電する。JAXAは2030年代の宇宙太陽光発電を計画しているという。
日本での風力発電や地表での太陽光発電は効率が悪く、電力供給も不安定であり、これに期待する政策を遂行することは経済的に見て愚策。

■脱原発は夢物語ではない

伊東教授の指摘するように、脱原発は、経済的にも実行可能のようです。

政治、官僚、産業、科学者が利益共同体を形作り、利権構造が地域経済を含めて原子力発電システムを維持・活用してきました。しかし、「3.11」により、問題点が明らかになりました。

今度、原発事故が起これば、日本は大ダメージを被ります。日本のような地震大国では、しかも老朽原発が再稼動されれば事故の可能性が高いでしょう。

原発研究者や電力会社は安全だと強調するでしょう。しかし、あの「3.11」の際に醜態をさらし、いまだ事故原因も明らかにできず、事故処理の目処もたてられない原発研究者や電力会社が安全性を強調しても、それを信用する人っているでしょうか?

最終的な核廃棄物処理も目処がたちません。きっと核汚染された福島のどこかに核廃棄物最終貯蔵所をつくることを、官僚や電力会社、政治家は既に決めていることでしょう。あとは、ほとぼりが醒めるのを待って、数年後、タイミングを見て発表すると思います。ちょうど、沖縄の米軍基地問題のように。また、古くは足尾銅山の被害地の谷中村のように。
地域の切り捨てという「棄民」です。

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