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2013年12月30日 (月)

安倍晋三総理のアメリカへの挑戦(その2)

■小泉総理の靖国参拝を許して、何故、安倍総理だと米国は失望するのか

安倍晋三総理の靖国神社参拝について、米国政府が「失望」という外交的儀礼としては厳しい日本批判をした。

小泉総理が靖国神社に参拝したときには、米国は沈黙を守ったのに。

内田樹氏は、米国は中国と日本が対立することが米国の国益に合致すると考えているから、米国は沈黙していると分析していました。

では、何故、今、米国は安倍首相の靖国神社参拝について非難するのでしょうか。

先ず、オバマ大統領がリベラル派であることが考えられます。

オバマ大統領は、自由と民主主義を基本的な価値とする日本国憲法を敵視する安倍晋三という戦前志向の国粋主義者に嫌悪感を持っているのではないでしょうか。オバマ大統領は、ロースクールで憲法を教えていた活動家でもある弁護士ですからね。

米国の共和党大統領であれば、どんな軍事独裁政権でも米国の国益に合致すれば支援してきました。しかし、オバマ大統領はもっとナイーブなのかもしれません。

より重要なのは、客観情勢の違いですね。中国の国力増強と日本との次のような緊張関係の相違です。

■日中軍事衝突を想定している米国?

米国は、日本と中国の軍事衝突の蓋然性が高いと分析しているのではないでしょうか。

尖閣諸島周辺で偶発的な軍事衝突は迫っていると。安倍首相は靖国神社参拝で、その危険性が高めた。このまま安倍首相を野放しにすれば、本当に日中軍事衝突までエスカレートしかねないと危惧しているように思います。

米国とすれば、中東情勢や北朝鮮の核武装問題という大きな問題があるのに。中韓日米が結束して北朝鮮の非核化を実行しなければならないのに。その障害を増やしてどうする。安倍首相の個人的な信念で、東アジアで余計なリスクや負担を強いられたくないと考えているのではないでしょうか。

もし僕が米国政府の立場ならそう考えます。「もっとうまくやってくれよ、お坊ちゃん」ってね。

■日本の孤立化 自業自得だけど

今回の安倍首相の靖国神社参拝によって、東アジアでは、中国と韓国が接近する。北朝鮮はこれ幸いと日本を非難し日朝関係を冷え込ませる。そして、中国、韓国、北朝鮮のブロックができる。ロシアも靖国崇拝の安倍総理の日本とは距離をとる。

米国は、中国との対立は望まず、中国アジア地域の経済成長にコミットしたいので、無用な緊張を高める日本には冷淡になる。少なくとも米国世論が日本に冷淡になる。

となれば、ASEAN諸国は、日本に頼るより、米国のほうが頼りがいがあるので、中国と事を構える日本に助力をしたくはない。とばっちりも受けたくない。

EU、特にドイツは、中国市場を開拓したいので、日本批判を強める。

中国軍部は、これを見て、強気に軍事攻勢をかける。

ということで、日本の世界的な孤立化が進むように思います。

■アメリカは安倍総理を排除して親米政権をつくろうとする

安倍晋三総理は、この日本の孤立化を避けるためには、TPPに参加して米国に経済的メリットを与えなければならない。沖縄基地をもっと充実するように米国に秋波を送らなきゃいけない。

でも、アメリカは、自分の面子を潰した安倍晋三という政治家を許さないと思います。ここで甘い顔を見せれば将来に禍根を残す。もっと良い政治家は自民党内にはいくらでもいると思っているでしょうね。

次の自民党総裁選で安倍を再選させないように介入してくるのではないでしょうか。安倍晋三は米国の「虎の尾」を踏んだ鳩山のようになるのではないでしょうか。今後、2~3年は日米関係は見物です。

■そこで、日本の右翼が伸びるか

そうなったとき、ネット右翼のような勢力が、反米・愛国日本を掲げた右翼民族主義の一大政治勢力に踊り出るかもしれません。そのリーダーは石原大元帥と橋下大阪市長になるのでしょう。安倍靖国参拝に狂喜するネット住人たちを見るとそう思います。一大政治勢力ですよね。米国大使館のFacebookネット炎上という前代未聞の行動もとれるのですから。

そのときの政治課題は、日本の自主独立(対米自主外交)と憲法改正になるでしょう。

まさに歴史は繰り返す。一度目は悲劇として二度目は喜劇として。

そんなことより、日本政府には震災対策と地球温暖化対策を期待したいけど。

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2013年 本ブログのアクセスランキング

アクセス数が12月29日で累計約65万5000になりました。以下、私のブログのアクセスランキングです。今年60万を突破したように思います。が、今年のアクセス数は数えていませんでした。およそ6万~7万件くらい?

2013年司法試験と予備試験のブログが3位なのは意外でした。
アベノミクス関係も二つともいっています。これも少し意外。他の政治論と少し異なり、アベノミクスの1本目と2本目の矢を評価していたので。

1  有期労働契約の「更新上限の合意」への対応策
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/post-b579.html

いくつか、「役に立った。更新上限合意のサインを拒否できた」というメールをもらいました。

2  アベノミクス 「アメリカは日本経済の復活を知っている」(浜田宏一著)と「不況は人災です」(松尾匡著)
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/02/post-c07e.html

来年4月に賃金上昇の目処がたたないとアベノミクス失速でしょうね。                 とはいえ、賃上げの第1次的責任は、労働組合にあります。連合や全労連の責任は重大です。ストぐらいしてみたらどうでしょう。

3 2013年司法試験と予備試験
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/09/2013-97cd.html

多くの弁護士がロールクールを批判し、ロースクール出身者に能力がないと言ったり、あたかも昔の旧司法試験が良いといったり、司法研修所教育を賛美したりする論調には賛成できないというのが私の立場です。だから青年法律家協会系とか自由法曹団系弁護士には評判が悪い。「連合」に迎合する労弁派と揶揄されたりする。他方、反司法改革系弁護士からは、何故か「アカの自由法曹団系だから日弁連執行部に迎合している」などと批判される。

それはともかく、この記事が3位ということは、弁護士よりも法学生やロースクール生が多くアクセスしたように思います。

4  改正労働契約法20条の活用と菅野説批判
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/02/post-93fc.html

有期労働契約を理由とする不合理な労働条件の禁止の活用。大分と滋賀で訴訟があるとされています。是非、今年は懸案の事件を提訴したいと思っています。

5  再論:改正パートタイム労働法と丸子警報器事件
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2008/02/post_37aa.html

来年の通常国会で、パートタイム労働法改正はどうなるでしょうか。今の雇用改革(規制緩和)の流れに逆行するとして立法化されないかもしれません。

6 有期契約を理由とする不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条) アンケートも
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/20-cf2d.html

法律解説記事。労働組合の方がアクセスしてくれた模様。

7  解雇自由化と解雇金銭解決制度 「解雇の沙汰も金次第」第2ラウンド
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/post-11e7.html

これから必ず急浮上してくると思います。

8  債権法改正の中間試案(案)
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/post-ec13.html

雇用や労働法分野について、一時危惧された悪影響はだいぶなくなりました。しかし、いろいろ課題と問題が残されています。今や、この記事はだいぶ情勢にあっていない。これからまたテーマにして書いてみます。

9  ”アベノミクス”とP・クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/01/post-2a4e.html

ここでの「予測」は的中した。

10 読書日記「法服の王国」黒木亮著
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/09/post-15a1.html

意外に健闘した。ベストセラーーだったんですね。

11 限定型正社員の狙いは、やはり解雇ルール緩和策
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/05/post-22e7.html

ジョブ型正社員の普及への具体策が来年、具体化するでしょう。でも、経営者側の狙いは変わっていないと思っています。

12 非嫡出子相続分差別 最高裁大法廷判決へ
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/07/post-06e7.html

違憲判決前の当事者による解決。良識のある市民っているものなのだ。

13  マイレージ、マイライフと日本IBM型解雇
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/07/post-b671.html

14  映画「SP革命編」
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2011/04/post-9c76.html

何故か、こんな映画感想がランクインです。

15 八代尚宏教授の「正社員の解雇規制改革」批判(その1)-解雇規制は中小企業労働者や女性労働者を犠牲しているか?
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/08/post-c2b9.html

八代教授 徹底批判 のつもりの記事。
昨日報道された朝日新聞の世論調査(20代)では、「格差が大きくなっても、経済成長が社会が望ましい」と答えた20代若者が4割(30以上は3割)にも達するそうです。八代教授の考えは結構影響力をもっているのですね。「だから今時の若い奴は…」とは言いません。でも、今の社会で痛い目にあっているのが20代のように思うのだが? オジサンは古いので良く判りません。

イギリスのジョーク
10代でマルキストでない奴は、ガッツがない。
20代でマルキストでない奴は、優しさがない。
30代以上でマルキストなのは、頭脳がない。

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2013年12月29日 (日)

安倍晋三総理のアメリカへの挑戦  靖国神社参拝

安倍晋三総理大臣が靖国神社に参拝しました。

■War Shrine
靖国神社のことを英米は「War Shrine」と英訳しています。
http://www.nytimes.com/2013/12/26/world/asia/japanese-premier-visits-contentious-war-shrine.html?_r=0

もともと靖国神社は、官軍(皇軍・旧陸海軍)所轄の軍人追悼の宗教施設(戊申戦争以後の戦闘で死亡した官軍将兵を奉る招魂社)ですから、「戦争神社」が間違っているわけではありません。

■問題は政教分離違反であること

戦争で亡くなった将兵を政府が追悼することは何も問題はない。このこと自体には誰も反対していない(中国や韓国含めて、私も)。

問題は、憲法20条3項の「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」に反することです。内閣総理大臣である以上、その肩書きで靖国神社に参拝することは、私的であろうと内心で何を考えていようと、宗教的活動に該当することになります。

■なぜ政教分離が定められているのか

政教分離を憲法が定めている理由は、政府が到底の宗教を保護したり、優越的な地位を認めれば、個々の国民の信教や思想良心の自由を侵害するからです。また、日本は、第二次世界大戦では、靖国神社を国民を戦争に動員するために最大限に活用され、参拝などが強制されたので、このような「国家神道」の愚行を繰り返さないためです。

日本国憲法なんて占領憲法だから無視しろって人もいます。が、世間に通用しない奇矯な見解なので、よい子は相手にしないほうが良い。

ということで、靖国神社参拝が大きな問題になったのは、中国や韓国が反対しているから、ではありません。中国や韓国が靖国神社参拝に抗議するようになったのは「戦犯の合祀問題」が表面化してからです(1979年以降)。ちなみに国内ではもっと以前から靖国神社参拝憲法違反論は強かったのです。

■戦犯合祀問題と戦争責任問題

もう一つの問題は、靖国神社が戦争指導者であった東条英機らを合祀していることです(1978年合祀)。第2次世界大戦、つまり、日本の中国アジア戦争、そして太平洋戦争が、侵略戦争であったことは、紛れもない歴史的事実です。

個人的には、対米英蘭との戦争は植民地争奪のための帝国主義戦争(帝国主義国家同士の五分五分)、アジア諸国民に対する戦争は征服戦争(120%の侵略戦争)と思っています。

靖国神社は、先の第2次世界大戦を侵略戦争とは考えません。対米英蘭に包囲されたための自存自衛の聖戦だったと考えています。ですから、東条英機らを戦犯とした極東国際軍事裁判自体を否定して、A級戦犯を受け入れず、この汚名を払拭したいと考えています。安倍晋三内閣総理大臣も、まったく同じ信念を持っています。自民党幹部の多くも、これが本音なのでしょう。

自存自衛の聖戦だと強弁する人も確かにいます(世論調査では支持する日本人は少数派ですが)。しかし、これは世界に通用しない独りよがりの見解なので、よい子は相手にしないほうが良い。「ナチスのユダヤ人虐殺は嘘だ」って世界の中で叫ぶのと同じ類いになっちゃうからね。

第2次世界大戦、日本が中国とアジアを侵略し、最後には全世界と戦争をする羽目になった当時の日本の政治指導者と軍部に戦争責任がないのでしょうか。その結果、日本人を含めて何百万人もの犠牲者を出した責任は誰にあるのでしょう。日本人は「一億総懺悔」って言うだけで、結局、昭和天皇をはじめに誰も自ら責任をとらず、自らまだ答えを出していません。極東軍事裁判は戦勝国の外在的裁判であり、これとは別に日本人として自ら内在的に戦争責任を再度、深く考えるべきです。

■戦後「国際秩序」(国際連合)への挑戦

東条英機らの戦争指導者が合祀された靖国神社に内閣総理大臣が参拝することは、この戦争指導者らの戦争責任を免責し、逆に賛美する行為になりかねません。外から見れば、確実にそう見えますし、それは第2次世界大戦の国際秩序に真っ向から反対する意思を表明する愚挙です。

何しろ「国連 UN」(国際連合)とは、まさに「連合国 UN」(英米蘭仏ソ中等)です。日本(東条英機)は、この「連合国UN」(国連)に対して、ナチス・ドイツ(ヒトラー)、ファシズム・イタリア(ムッソリーニ)と軍事同盟を組んでともに戦ったのですから。

「ヒトラーのお墓にお参りするように見られかねない」とテレビでコメントした女性芸能人がいたそうですが、そのとおりです。この発言を非難する人は、ヒトラーと日本が軍事同盟を結んで米ソと戦争していたことを知らないのでしょうか?

■アメリカに対する挑戦状? 米国「失望」コメントは想定内

報道を見ると、安倍晋三内閣にとって、アメリカが「失望」とのコメントを出したことは安倍首相にとって予想外であったかのように書かれています。

しかし、安倍首相にとっては、想定内のことだったのかもしれません。

アメリカ政府が靖国神社参拝をしないようにと幾度もメッセージを送ってきました。
特に、今年10月3日にジョン・ケリー米国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官が連れ添って、東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花、黙祷を捧げたのです。このこと自体、すごいことです。米国と日本は戦争した間柄です(リメンバー・パールハーバーの戦争相手国です)。その国務長官と国防長官が日本軍人の墓苑に献花するのですから。

日本の外務大臣と国防大臣が、中国にいって日本軍と戦った人民軍兵士や抗日ゲリラの墓に献花し、黙祷することを想像すれば、相当に思い切った外交パフォーマンスだということが誰にもわかるでしょう。

これは明白に、靖国神社参拝は認めないというアメリカのメッセージです。このことを安倍首相もその側近たちも十分に認識していたはずです。それでも、これを無視して安倍首相は、靖国神社に参拝した。十分な計算を尽くして、タイミングを見ての行動でしょう。

これを無視されたアメリカは面子を潰されたことになります。なにしろ米国務長官や国防長官の世代にとっては、親父たちはこの前の戦で殺し合ったのですから(私の世代もそうです)。憎き敵兵の墓に献花までしてやったのに、と怒り心頭でしょう。

■普天間基地問題と同一タイミング

普天間基地移設問題について、沖縄県知事が辺野古の埋め立てを承認するタイミングとあわせて参拝をしています。民主党政権が実行できなかったことを、俺がやり遂げたというアピールとともに靖国神社に参拝したとしか思えません。

■「信念の人」安倍晋三

安倍首相の以上の一連の行動を見ると「信念の国粋主義者」のようです。アメリカに対しても、腹の中では対抗心を強く持っているように思います。

おそらく、安倍首相は、「日米安保同盟は維持するが、片面的なものから対等の軍事同盟に変更して、アメリカの『使いっ走り』ではなく、独自の外交・軍事戦略を持った国になろう」と本気で考えているのです。「そのために、日本はいつでも核武装できるという体制を維持することが必要であり、脱原発なんであり得ない」と考えいるように思います。

岸信介の孫という個人的な系譜からも、以上の信念を持っていることは間違いないでしょう。利害得失をもっと合理的に計算する普通の政治家だと思っていました。しかし、「信念の人」だったのですね。(「信念の人」って褒めているわけではありませんからね。)

■アメリカ、中国の今後の対日方針

面子を潰されたアメリカ政府は、安倍首相に対しては「危険な国粋主義者」として監視を強めるでしょうね。コケにされたら、外交的には、そのお返しは絶対しなければなりません。倍返しでしょう。当然、政府要人の盗聴もしている。今後、安倍首相がアウト・オブ・コントロールにならないように、経済・政治・軍事・文化の全ルートを使って、硬軟織り交ぜて仕掛けてくるでしょう。

アメリカは、次の自民党首相には、もっと大人しく、親米を貫く人物がなるように希望するはずです。ポスト安倍を目指す自民党議員は、そのあたりのポジションにいることが求められるでしょう。自民党だと誰かなあ? アメリカの国務省あたりは次期自民党総裁選までに何と落とし前をつけようと思っていることでしょう。また、民主党や結いの党は、このあたりのポジションが狙い目じゃないでしょうか。

中国軍部は、いけいけ どんどんでしょう。

中国政府が中国人民軍を完全に掌握しているように見えません。中国軍部は、絶好のチャンス到来だと考えていることでしょう。近い将来、尖閣諸島周辺にて小規模な衝突事件(中国監視船と海保の銃撃や衝突)が起こる可能性が高まったと思います。中国軍部は、アメリカが日本側を支援して武力行使することには、リベラル議員や国内世論が反対すると読むでしょうからね。

これもひょっとしたら安倍首相は計算済みなのかもしれません。武力衝突が起これば、自民党憲法草案による改憲作業がずっとやりやすくになりますから。

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2013年12月22日 (日)

日本人は格差社会を是正できるか?

内田樹氏の「街場の憂国論」(2013年10月発行 晶文社)を読んだ。

■「若者は格差社会を是正できるか?」とのエッセイがありました。

マルクスの「共産党宣言」の最後の言葉は「万国のプロレタリア、団結せよ」でした。

今の日本の若者たちが、格差の拡大、弱者の切り捨てに対して効果的な抵抗を組織できないでいるのは、彼らが「連帯の作法」というものを見失ってしまったからです。

では、なぜ若者が「連帯」や「団結」の作法を見失ったのか?

それは彼らの責任ではありません。それは私たちの社会がこの30年間にわたって彼らにすり込んできた「イデオロギー」の帰結だからです。

戦闘的な反格差論者が口にするのは「バカで強欲な老人たちが社会的資源を独占し、若者たちは能力があり、努力をしているにもかかわらず格付けが低い。これはフェアではない」というものです。

彼らは連帯を求めているわけでなく、「社会のより厳密に能力主義的な再編」を要求しているのです。

若者の一人がたまたま成功しても、それは自分の才能と努力のせいなのであり、負け組の若者たちと連帯して助け合おうということは考えもしないだろう。もちろん、これは若者だけでないし、若者の責任でもないと内田氏は強調しています。次のような教育を大人がしてきたんだからと。

「能力のあるもの、努力をして成果をあげた者には当然、報酬を得る権利がある。能力がない者や努力しない者には罰が与えられる。」

確かに、この私のようなブログにも、「解雇規制は無能な中高年正社員の既得権を守るだけだ。解雇の規制緩和をすべきだ」という意見を寄せる若者が結構多いです。

解雇を自由にしても、格差はなくならないし、格差は広がるのは目に見えていると思います。彼らは若者らしく「自分だけは大丈夫」という自信を持っているか、あるいは、「今最悪、これよりも悪くなりようがない」という捨て鉢の気持ちなのでしょうか。

■労働組合の今、昔

最近、私が労働組合から賃金査定(能力主義賃金制度)に関する法律相談を受けたとき、次のようなことがありました。

弁護士 組合員の給与明細を見て、どのような査定の分布なのか、査定の不適正なものではないのかを分析してみる必要があるね。

委員長 とてもそんなことはできない。給料明細は組合員のプライバシーだから、労働組合ともいえども見られないし、同僚同士でも給料明細は絶対に見せない。

能力主義賃金制度が入ってからは、給料明細書は、あたかも学校の通信簿なのですね。それだけ能力主義的文化が学校教育、企業制度によって内面化しているということです。

私が弁護士になった28年前には、労働組合結成の際に、労組からが呼ばれて労働法の学習会をしたことも結構ありました。そのとき、若い労働者たちは、みんな自分で給料明細を見せ合って、基本給や手当の不満を討議して、労働組合としての要求づくりをしていました。山田洋次の映画みたいでした。

ずいぶん時代は変わりました。でも、これは若者たちが悪いからではありません。そういう教育を受け入れ、子どもたちにもしてきたのは、われわれ大人ですから。

■じゃあ、どうする?

アメリカの若者は、アメリカの能力主義の下でも、アメリカの建国理念である「人間は等しく造物主から生命、自由、幸福追求の権利を付与されている」という「自明の真理」からウオール街でも運動を開始します。

フランスの若者であれば、バリケードを築いて自由のためにたたかってきた革命の歴史と理念を持っています。レ・ミゼラブルのDo you hear the people sing ? のように「わが隊列に加われ!」と。

しかし、日本人には、そのようなバックボーンさえないと、内田先生は言います。何しろ日本国憲法さえアメリカ製ですからね。

内田先生は、えっと驚く答えを書いています。ネタバレになるので、知りたい人は同書を読んでください。

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「労働者派遣制度改正」公益委員案で法改正したらどうなるか?

労働者派遣制度の改正の公益委員案が発表されました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000031979.pdf

細かい点を除くと、要するに次のようになります。

(1) 26業務区分及び業務単位での期間制限を撤廃する。

(2) 派遣先は3年ごとに派遣社員を入れ替えれば、派遣社員を永遠に使えるようにする。

さて、このような労働者派遣法の改正が実現されたら、どうなるでしょうか。

若者の派遣労働者が激増するでしょう。

派遣先会社は「人単位」で3年経過するまで派遣社員を使えます。また、「人単位」で3年といっても、派遣先の同一の組織単位(例えば、営業1課とか)でカウントされるので、当該派遣社員が3年経過した時点で、同一企業内の別の組織単位(例えば、営業2課)に派遣社員として受け入れることが許されます。つまり、派遣先が優秀だと思う派遣社員を恣意的に使い続けることが可能とないます。

派遣先企業にとって、使い勝手が極めて良い。

3年までしか派遣先企業で働けない派遣社員は、3年上限に達したときの雇用安定化措置には具体策が盛り込まれていません。絵に描いた餅にすぎません。

今後は、学校を卒業した若者の就職の多くが派遣労働者になる道をたどるでしょう。あと、子育て後、復帰する女性の多くもそうなるでしょう。

雇用は不安定で、キャリアアップの展望もなく、賃金もあがりません。彼ら彼女らは、住宅ローンは組めるのでしょうか?

これでも、世界で一番、企業がビジネスしやすい日本にする政策の一環なのでしょう。
しかし、働く人が暮らしやすい国ではなくなりますわな。

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2013年12月12日 (木)

ロールズとマルクス 読書日記「ロールズ政治哲学史講義Ⅱ」

ロールズとマルクス

読書日記「ロールズ政治哲学史講義Ⅱ」
(岩波書店2011年9月発行。読了2013年12月)

■ロールズの「無知のヴェール」

講義録ですので、大変に読みやすい。1980年代の講義をまとめたもののようです。

ロールズといえば「無知のヴェール」と「正義の二原理」(自由原理と機会均等・格差原理)で有名です。

私の言葉で要約すると、

無知のヴェール:ある社会で、その市民らが、社会の詳細な経済財政等制度や社会が不平等なものであることなどの一般情報は十分に知った上で、しかし、自分の性別も、人種も、能力、財産については何も知らないという無知のヴェールをかぶっている。

このような「原初状態」を想定して、各人がその社会の公正なルールを合意する。

で、無知のベールをとったら、そこでは人種差別された少数者かもしれないし、抑圧された貧乏人かもしれないし、あるいは権力をもった大金持ちかもしれない。そういう条件で、社会のルールを合意しようとする。「さあ、貴方なら、どうする?」というわけです。

■正義の二原理

ロールズは、原初状態で無知のヴェールをかぶって議論をすれば、各人は次のような「正義の二原理」で合意するはずだ、と言うのです。

1 各人は、他人に被害を及ぼさない限り、自由が保障される。
2 社会的・経済的不平等は、①最も不遇な人々の利益を最大にし、②公正な機会均等が図られている場合にのみ、許される。

2の①が格差原理というものですが、これが分かりにくい。私の理解では、要するに、

世の中には社会的・経済的不平等は必ずある。しかし、その場合でも、公正な機会均等を付与するだけでなく、最も不遇な人々の生活条件等を改善する方策をとらなければならない。

法律家から見ると、ロールズの立論は、社会契約論的で民主主義的な立憲主義を、判りやすく説明されており、非常に魅力的です(「立憲民主主義の憲法原理の政治哲学的基礎」)。

■ロールズへの印象

しかし、一方、「ロールズの言うことは非現実的だ。社会における政治的・経済的支配構造を変えないで、道徳的な説教や理想をいくら語っても、何も変わらないのではないか。」という懐疑的な気持ちもぬぐえません。まさにマルクスなら、こう批判するでしょう。

■ロールズが解説するマルクス

この岩波書店の「ロールズ政治哲学史講義Ⅱ」に、「マルクス」が論じられています。これを読みましたが、ロールズの立論は極めて判りやすく、すばらしい内容でした。久しぶりに本を読んで感銘をうけました。

■マルクスは「正義」をどう考えていたか

マルクスは「正義」なんていうものを重視していなかったというのが共通理解です。

マルクスは、「正義」という観念は、奴隷社会や封建社会、資本主義社会に応じて成立する相対的なものにしかすぎない。土台である経済構造(生産諸関係)の反映としての「正義」イデオロギーでしかなく、それは虚偽意識にほかならず、常に階級支配を正当化するものでしかない、と批判してきた。超歴史的な「正義」などは戯言だという立場を明言していた。

しかし、ロールズによれば、それでも、マルクスは、「資本主義を不正義である」との前提にたっていると言います。

マルクスが上のように批判する「正義」とは、狭い法律的な正義(歴史的諸条件で変化する相対的なもの)でしかなく、一方、ロールズの言うところの「正義の政治的構想」をマルクスは持っていたというのです。そうでなければ「搾取は盗みだ」とか、「労働者は賃金奴隷だ」とか、「労働力が等価交換されるが、剰余価値は搾取されており、それは『隠された盗み』だ」などとマルクスは言わないはずだというのです。

ロールズは、さらに続けます。

マルクスが正義や理想を語ることを忌避したのは、ユートピア的社会主義との違いを強調するためであり、敢えて正義を語らなかった。マルクスは、あくまで資本主義の運動法則を解明することで、その延長線上に必然的に社会主義や共産主義が到来することを(科学的に)記述したかった。

労働価値説や史的弁証法に対するロールズ的な解釈も大変に面白いのですが、マルクスと正義についての結論部分を紹介します。

■マルクスの「正義」

キイワードは、「自由に連合した生産者たちの社会」(「ゴーダ綱領批判」や「資本論」に良く出てくる言葉)です。

ロールズによれば、マルクスは次のような確信と理想を持っていたはずだと言います。

社会の全成員-自由に連合した生産者全員-は、社会の生産手段および天然資源にアクセスしそれらを使用する請求資格を平等にもつ

自由に連合した生産者たちが公共的で民主的な計画により経済活動をコントロールすることで搾取も疎外もない社会(共産主義社会)が実現する。

自由に連合した生産者の社会はあらゆる歴史的条件のもとで実現可能なわけではなくて、資本主義が生産手段とそれにともなうテクノロジーのノウハウを増大させるのを待たなければならない。

■マルクス思想の失墜

マルクスの共産主義は、20世紀において、ソ連・東欧など、共産党一党独裁による市民への抑圧、中央集権的計画経済の破綻によって、多大な犠牲者を出し、無残な失敗に終わりました。今、残っている社会主義の国、中国、朝鮮人民民主主義共和国、ベトナム、キューバなどは、旧共産主義のゾンビといってよいでしょう。

これほど見事に全て失敗した以上、マルクスの思想には根本的欠陥があると考えるのが経験的には正しいはずです。にもかかわらず、ロールズは、マルクスを救おうとするかのようです。

もちろん、ロールズは、古典的な共産主義思想である「中央指令的社会主義」を全く評価しません。しかし、「リベラルな社会主義」(日本でいえば「社会民主主義」のこと)があり、これは「啓発的な価値ある見解」と評価しています。

リベラルな社会主義の特徴(要件)

a)  立憲デモクラシーの政治体制。
b)  自由な競争のある市場システム。
c)  企業が労働者によって所有され、あるいは部分的にせよ、株所有を通じて一般の人々に所有され、さらに選挙もしくはその企業の選択によって選ばれた経営者によって経営される仕組み。
d)   生産手段および天然資源が、広い範囲で多少なりとも平等に分配されることを確保する所有システム。

■マルクス主義が誤った原因

確かに、「科学的法則」(笑)なるものを振り回す独善者の「革命」よりも、ロールズのいうような「正義」や「理想」を語り、ひとつひとつの合意をはかる方策のほうが正しい道ですね。

マルクスは「正義」も「立憲主義」も語りませんでした。逆に、あろうことか「プロレタリアート独裁」なんてことを書いてしまった。このあたりも失敗の原因なのでしょう。

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2013年12月 8日 (日)

シンポ「ワークルール教育を考える」@日本労働弁護団

12月7日、日本労働弁護団の「ワークルール教育を考える」シンポが開催されました。

◆パネリスト
  道幸哲也(NPO「職場の権利ネットワーク」代表理事)
  上西充子(法政大学キャリアデザイン学部教授)
  今野晴貴(NPO「POSSE」代表理事)
◆コーディネーター
  嶋﨑量(弁護士、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長)

■道幸哲也教授のお話

ワークルール教育は「権利実現」の仕組みを伝えること。

権利実現の仕組みとは次の5つ。

(1) 法に関する知識・情報
(2) 権利意識
(3) 権利行使を支援する仕組み 同僚、労組、労働NPO、法テラス
(4) 実現する機構・手続 労働局、労働委員会、労働審判、裁判
(5) 権利を規定する実定法 労基法

このうち伝えることが一番難しいのは(2)[権利意識]と(3)[権利行使を支援する仕組み]ということです。

色々難しいことがあるが、一つは教育する学校(高校)側のニーズと合わないし、生徒も興味を持っていないということです。

学校(高校)側のニーズとは、進路指導の一貫だから「正社員になるようにすすめる」ということであって、権利教育を基本とするワークルールとはギャップがある。学校は権利教育には関心がなく、勤労意欲を高める一貫としてのワークルール、つまり伝統的な勤労観を育む教育が求められる。

また、生徒にとっては、だいたい「労働」というとダサイ、クライくて関心がない。どう興味を持たせるかをネーミングも考えて、ワークルール検定を考えてみた。マスコミも注目し、多数の人が受験してくれている。

■上西充子教授のお話

法政大学キャリアデザイン学部の上西教授の「キャリア教育」としてのワークルール教育について私は初めて聞くので大変に興味深かった。

厚労省の「今後の労働法関係制度をめぐる教育の在り方に関する研究会報告書」(2009年2月27日)や内閣府の「若者雇用戦略」(2013年6月12日)にも関与されたそうです。

キャリア教育の一環としてのワークルール教育では、使用者の側の「働かせ方」を問題にせず、「若者の勤労観」を育成することが主眼に置かれているとのこと。

”世の中の実態の厳しさ”を子どもたちに学ばせることも重要である。
”世の中のの実態や厳しさ”を子どもたちに実感を伴う形で理解させた上で、これらを乗り越えていくために必要な知識や意欲・態度を培っていくことが必要である。(文科省・キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議)

2013年の内閣府「若者雇用戦略」も当初は、上記文科省的発想だけであったが、やっとこさ、次の一文が入ったそうです。

若者の正規雇用の割合が大幅に増えており、正規雇用の場合も、長時間労働等、職場環境が厳しく早期離職する場合も少なくない等、適切なキャリアを積むことが難しくなっていることから、若者の育ちを支援することとあわせて、若者が働き続けられる職場環境を実現し、また、非正規雇用の労働者のキャリア・アップを支援していくことも重要である。

上西教授は、大学でのワークルール教育について、世の中のことを何も知らない学生らに、今のアルバイト経験をお互いに語って考えさせているということです。アルバイトでも給与明細も支払われず、本当に時給どおり払われているのか分からない職場もあれば、1分単位で時給が支払われて残業代も払われている職場もある、などの話をするだけで、学生は考え始めるとのことです。

でも多くの学生は、アルバイト先の正社員を見ていて、過酷な労働条件が当たり前で、正社員になるためにはやむを得ないと思ってる者が圧倒的に多い。

まあ、私も大学で労働法を学んだときには、試験科目として学んで自分の就職後に役立てようとは、これっぽっちも考えませんでした(…法律家志望だから当たり前か)。

■今野晴貴さんのお話

相変わらず分かりやすい話です。

今野さんは、日本型雇用関係を前提とした企業と、今や、若者を使い捨てる企業と二種類あることを認識すること、生徒や学生に教えることの重要性を強調されてしました。

ブラック企業は「10人の正社員が必要であれば30人を採用する会社。そして、プレッシャーを与えて、駄目な奴は切り捨てて10人残れば良いというビジネス・モデルを採用する企業。」

旧来型正社員を前提とした会社は、「10人正社員が必要なら10人を採用」して育てようとする企業だ。

この旧来型企業に勤務する管理職や正社員から見れば、「近頃の若者は、我慢が足りない」というふうにしか見えない。そこで、キャリア教育は、厳しい現実を理解し、それを克服する能力と意欲を身につけさせるということになる。

しかし、企業の実態が変わってきており、若者を切り捨てる企業が増えている。

今野さんのブラック企業関係の読者は、40代や50代の男性が圧倒的に多いのだそうです。彼らは自分の娘や息子のために、今野さんの本を読んでいる。そこでのブラックな働かせ方に驚愕する人も多いそうです。

だから実態を知れば教師も生徒も保護者も、ワークールール教育が必要だということを理解するはずだ。

NPO法人に相談にくる若者の圧倒的多数は権利行使ができない人。相談は、「せめて失業保険をもらいた」いという圧倒的多数だそうです。解雇された、あるいは無理矢理辞めさせられたのに、「自己都合退職で失業保険ももらえない。明日からの生活を何とかしたい」という相談がたくさん寄せられるそうです。

会社に抗議し、労働組合に入ったり、労基署や労働局に相談したり、弁護士に相談する人は、そういう人たちは少数派で「特殊な若者」だそうです。ここで「特殊」というのは、そういうことを許す(特殊な)家庭に育ったか、周りに偶々強力に支援してくれる人がいる方だそうです。そういう若者は、得てして「クレイマー」的人物と見られる。

それが分かっているから、「そうは見られたくない」、あるいは「そんなブラック企業にしか入れなかった自分が悪い」と考える「優しい若者」が多い。

■神奈川県の高校教員

県立高校の若手の教員の方もパネリストで参加されていました。20代の若い教員と話してみると、若い教員は「ワークルール教育って、平和教育よりも、やりにくいよね。管理者に睨まれそう。」と感想を言われたそうです。権利教育というようなことは、当然のことながら管理者は歓迎しない。今時の教員は労働組合組織率は激減をしており、中高年世代の労働者としての要求には、若い教師はどん引きな雰囲気なんだそうです(「公務員の教員に就職できたから良かった。」「勝ち組?って雰囲気もあるので、労働者って自分の身近なことじゃない」?)。

そもそも職場は多忙、でワークルールなんて難しい新しいことをするなんて大変という雰囲気があるとのことでした。

ワークルールなら管理者も受け入れやすいのでは。

■権利教育で浮いてしまったら??

議論になった一つは、「やれ労基法違反だとか、やれ労働者の権利だ、とか、若者が権利行使してしまったら、使用者は当然に不利益扱いや報復してくるのは目に見えているので、どう工夫するか?」ということです。

確かに下手に労働法の権利を教えて、労働法的権利教育をして社会に放置することは、「裸でオオカミの前に子どもを放り出すようなもの」です。

となると、困ったことがあれば、個人で即断・即決行動を起こさないで、相談先に相談しようと言うしかないですね。

■「団結」の重要性を教えるにはどうしたら良いか??

ワークルール教育は個人だけに、いくらお勉強として教育してもだめです。

労働ですから、集団性があります。では、ワークルール教育で「労働者の団結」を伝えることができるでしょうか。法律知識としての団結権の話はお勉強として伝えられます。でもその規範意識や団結意識、連帯意識を教えることは難しい。

会場から、元高校教師の方から、「解雇されて、争議でたたかっている労働者の話を聞かせた」という発言もありました。

私個人の印象では、今の高校生や大学生に、バリバリの労組活動家の争議体験の話しを聞かせても、生徒や学生に引かれるだけで、必ずしも良い結果にならないのではないか、と懸念します。

今の社会や職場には、「団結」や「連帯」ができない環境ができあがっています。そもそも学校教育や家庭の子どもの育て方がそうです。色々な意味で、働く人は、「孤立化」しています。だから、職場ではパワハラや虐めやメンタル不全が多発するのでしょう。

「団結」や「連帯」の意識は、もはや「学校教育」の範疇を超えてしまう課題なのかもしれません。

■「法教育」の一環としての「ワークルール教育」

弁護士会は「裁判員教育」や「消費者教育」をテーマにして学校や地域の社会人教育に積極的に関与しています(「法教育」)。この法教育として「ワークルール教育」を取り入れる方法が一番実践的でしょう。既に札幌などで実践されているようです。そのためには生徒や学生に興味を持ってもらう教材が必要です。弁護士の場合にはここから一歩ですね。

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