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2013年10月 3日 (木)

「国家戦略特区」という経済学の堕落

■特区での労働法規制緩和

過去にも日経新聞で報道されていましたが、「アホな」と本気にしていませんでした。ところが、なんと安倍総理が出席した産業競争力会議で八田達夫教授(国家戦略特区ワーキンググループ)が提出した特例措置が決まったというのです。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201309200403.html

■国家戦略特区WG 八田達夫座長 提出資料

 開業率と対内直接投資が低水準にとどまっていることは、我が国の経済再生に向けて克服すべき重大課題。新たな起業や海外からの進出が拡大してこそ、よりイノベイティブな産業の創出、切磋琢磨を通じた競争力強化が見込める。
 このため、新規開業事業者や海外からの進出企業などが、より優れた人材を確保できるよう、雇用制度上の特例措置を講ずるエリアを設ける。

<特例措置>
地区内において
・開業後5年以内の企業の事業所に対して、(2)(3)の特例措置
・外国人比率が30%以上に対して、(1)~(3)の特例措置

(1)有期雇用
・雇用締結時に、労働者側から、5年を越えた際の無期転換の権利を放棄することを認める。これにより使用者側が、無期転換の可能性を気にせず、有期雇用を行えるようになる。→「労働契約法18条にかかわらず無期転換放棄条項を有効とする」旨を規定する。

(2)解雇ルール
・契約締結時に解雇の要件・手続を契約条項で明確化できるようにする。仮に裁判になった際に契約条項が裁判規範となることを法定する。
→労働契約法第16条を明確化する特例規定として、「特区内で定めるガイドラインに適合する契約条項に基づく解雇は有効となる」ことを規定する。

(3)労働時間
・一定の要件(年収など)を満たす労働者が希望する場合、労働時間・休日・深夜労働の規制を外して、労働条件を定めることを認める。
→労働基準法第41条により適用除外を追加する。

<これに伴う措置>
上記の特例措置に伴い、不当労働行為、契約の押し付けや不履行などがなされることのないよう、特区内の労働基準監督署を体制強化し、労働者保護を欠くことのないよう万全を期す。

■要するに

特区内では、「外国人労働者が3割を超える企業」については、

①有期雇用労働者を無期転換にさせなくてもよい

②解雇ルールも労働契約法16条は適用除外して解雇を容易にする

③一定の年収以上の労働者には労働時間規制を適用させずに何時間働かしても残業代も払わなくても良い

「5年以内の開業した事業所」は、
上記②(解雇緩和)と③(労働時間規制の適用除外)の適用を受ける

■労働法の規制は全国共通規制

解雇ルールや労働時間規制は、国民(労働者)が「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ためのルールです。これは国民が等しく有する権利にほかなりません(憲法25条 生存権)。そのため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件(労働条件)に関する基準は、法律でこれを定めるとしているのです。

このような労働条件に関する規制は、全国共通の規制であり、企業の公正競争を担保するものです。これを特区を設けて、例外を認めては、労働者の生存権保障や企業の公正競争のルールを破壊することになります。

■労働基準の切り下げがもたらすもの

開業率を高めたり、海外企業の投資を促進するために、労働者の公正な労働基準を下げることはあってはなりません。それは、労働条件切り下げ競争を促進するだけです。

雇用維持を図る労働法を悪しき規制と非難し、この「岩盤を掘り崩さないと、経済成長は達成できない」などと、一部のマスコミやキャスターは述べます。

しかし、この岩盤こそ、企業の存立と国民の生活を支える社会基盤です。その基盤を崩すことは、取り返しのつかないことになるものです。

経済学は、「経世済民」の学問と言われますが、八代氏や八田氏の経済学は、経世済民の否定にほかならないと思います。何か、金さえもうかれば良いという身もふたもないというか、モラルが欠如していると思われます。

彼らをあらわす言葉は、・・・卑怯千万、卑劣漢、唾棄すべき奴。

また、法律論としてもとんでもなくでたらめの内容だと思いますが、これは、また別に述べたいと思います。

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労働法」カテゴリの記事

コメント

労働者の保護が失業率を上げるの経済学の常識ですよ
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51872614.html
モラルの欠如とかどうでもいいんですよ、雇用が増えれば。
逆に労働者を守ろうとして失業率が上がっていいの?

投稿: あわあわ | 2013年11月24日 (日) 13時01分

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