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2013年10月22日 (火)

国家戦略特区の「へんちくりん」な決着?

■ 10月18日の国家戦略特区WGのまとめ

まあへんちくりになまとめです。内閣官房と厚労省もすりあわせたものなんでしょう。
◇ 特区内で、新規開業直後の企業及びグローバル企業等が、優秀な人材を確保し、従業員が意欲と能力を発揮できるよう、以下の規制改革を認めるとともに、臨時国会に提出する特区関連法案の中に必要な規定を盛り込む。

 

(1) 雇用条件の明確化
・ 新規開業直後の企業及びグローバル企業等が、我が国の雇用ルールを的確に理解し、予見可能性を高めることにより、紛争を生じることなく事業展開することが容易となるよう、「雇用労働相談センター(仮称)」を設置する。
・ また、裁判例の分析・類型化による「雇用ガイドライン」を活用し、個別労働関係紛争の未然防止、予見可能性の向上を図る。

・ 本センターは、特区毎に設置する統合推進本部の下に置くものとし、本センターでは、新規開業直後の企業及びグローバル企業の投資判断等に資するため、企業からの要請に応じ、雇用管理や労働契約事項が上記ガイドラインに沿っているかどうかなど、具体的事例に即した相談、助言サービスを事前段階から実施する。


・ 以上の趣旨を、臨時国会に提出する特区関連法案の中に盛り込む。

(2) 有期雇用の特例

・ 例えば、これからオリンピックまでのプロジェクトを実施する企業が、7年間限定で更新する代わりに無期転換権を発生させることなく高い待遇を提示し優秀な人材を集めることは、現行制度上はできない。

・ したがって、新規開業直後の企業やグローバル企業をはじめとする企業等の中で重要かつ時限的な事業に従事している有期労働者であって、「高度な専門的知識等を有している者」で「比較的高収入を得ている者」などを対象に、無期転換申込権発生までの期間の在り方、その際に労働契約が適切に行われるための必要な措置等について、全国規模の規制改革として労働政策審議会において早急に検討を行い、その結果を踏まえ、平成26年通常国会に所要の法案を提出する。

・ 以上の趣旨を、臨時国会に提出する特区関連法案の中に盛り込む。
○「雇用労働相談センター」って、厚労省の労働局に設置されるのでしょうかね?まさか経産省所管でないでしょうね。
○でもって、この雇用労働相談センターって、使用者(外資系企業、開業5年以内の企業)の相談のみをうけつけるのかな?
○ここのアドバイスにしたがったから、解雇できるって、裁判所にアピールするのでしょうか。
○「特区」って言っておきながら、「無期転換ルール」について、「全国規模の規制改革として労働政策審議会において早急に検討を行い」なんて、注文をつけるのもおかしいね。
■意見メモ

10月16日民主党の厚労部会にて、特区構想は法律家から見れば、解雇を容易化するものでしかないという意見を述べてきました。そのときのペーパーをあげておきます。内閣官房から来た官僚は、「解雇ルールは緩和しません。明確化するだけです」って、繰り返し答弁していた。法律家から見れば、なんてでたらめをと思いました。


政治家は法律家でなく、何もわかっていないからデタラメを言うのは判る。しかし、まあ法律解釈の論理を知っているくせに、官僚が「法律の素人」を騙すようなことを良く平気でいえるねえ。

● 無期転換申込権の事前放棄を容認するとの措置について

 

・ 雇用締結時に、労働者側から、5年を越えた際の無期転換の権利を放棄することを認める。これにより使用者側が、無期転換の可能性を気にせず、有期雇用を行えるようになる。                                                                   │
→「労働契約法18条にかかわらず無期転換放棄条項を有効とする」旨を規定する。                                                                          │

 

  ○ 改正労働契約法18条の国会審議において、事前放棄を合意することは、「公序良俗」違反で無効であると立法者意思が明確とされた。「公の秩序」等が地域によって異なるということがあり得るのか。

 

 *【参照】民法90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

○ 労働者が「契約により無期転換放棄した場合」というが、就業規則に無期転換放棄をすると定めることでも、法律上は労働契約を締結したことになる。したがって、労働者の自由な意思で選択することはできない。

   *【参照】労働契約法7条 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。

●解雇ルールについて

・ 契約締結時に解雇の要件・手続を契約条項で明確化できるようにする。仮に裁判になった際に契約条項が裁判規範となることを法定する。                        
→ 労働契約法第16条を明確化する特例規定として、「特区内で定めるガイドライ  ンに適合する契約条項に基づく解雇は有効となる」ことを規定する。
 
10月4日版                                                                 │
・契約内容が特区本部で定めるガイドラインに適合する場合、裁判規範として尊重   されるよう制度化                                                            

  ○ 労働契約法16条の特例規定として、「ガイドラインに適合する契約条項を裁判規範」とする意味は、労働契約法16条が適用排除され、専らガイドラインが裁判規範となることを意味する。

これは、特別法は一般法に優先するという法律解釈の常識である。

裁判官は、ガイドラインに適合した契約条項に従うよう拘束される。

この点、裁判規範として尊重されるとしても結果は同じ、裁判規範は裁判官を拘束するものであり、「尊重」されるだけのものは解釈指針でしかなく、裁判規範ではない。

 

  ○ ガイドラインに適合した解雇に関する契約条項の例

明らかに労働契約法16条の解雇規制を大幅に緩和するものである。

 

 

    (例1)「遅刻を3回した場合には解雇する」

 

     特例が定められた場合には、事実として遅刻3回が確認されれば解雇が有効。

労働契約法16条が適用されれば、遅刻の理由が、どのような事情かを総合判断して解雇の有効性を決めることになる。遅刻の理由がやむを得ない事情であったか、また、遅刻によって会社の業務にどの程度支障があったか否かが判断される。

 

    (例2)「担当職務及び勤務事業所が消滅した場合には解雇する」

特例が定められた場合には、職務や勤務事業所がなくなれば即解雇有効となる。

労働契約法16条が適用されれば、①人員削減の必要性があるか、②解雇回避努力を使用者が尽くしているか、③労働者と協議をしたか、④人選は合理的かの事情を考慮して解雇が有効か否かが判断される。

 

  ○ 解雇の契約条項は就業規則で定めた場合にも、契約条項となる。

労働契約法7条により、ガイドラインに適合したものとして労働契約の内容となる。

 

●特区内の特例措置適用事業所

・開業後5年以内の事業所に対して                                             

・外国人比率が一定比率以上(30%以上) の事業所に対して                     
  ○ 子会社を設立すれば、新たに開業したことになる。

  ○ 新たに子会社を設立して、労働者を転籍させた場合にも開業後5年以内になる。

  ○ 新たに外国人を多数、雇用すれば、外資系企業だけでなく、日系企業でも特例を受けられることになる。

例えば、日系ブラジル人を有期雇用で多数雇用した場合、30%を超過することになる。地方の製造メーカー等の中小企業は、このような事業所は地方には多い。

 

 

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2013年10月14日 (月)

国家戦略特区=解雇規制緩和特区(追補)

■労働判例と「ガイドラインに適合する契約条項は裁判規範」との関係

裁判所は、最高裁判例とガイドラインに適合する解雇契約条項のどちらに従わなければならないか。

法学部の学生が、最高裁判例が優先すると書いたら誤りですね。

ガイドラインに適合する解雇契約条項が、裁判規範となると国家戦略特区法が定めた以上、法律(裁判規範)は、判例に優先するのです。

憲法>法律(裁判規範)>判例

これって法学部生でも知っている常識です。

■解雇契約条項の中に解雇金銭解決条項は可能か?

解雇契約条項の具体例として次のようなものも考えられます。きっとワーキンググループはこういうガイドラインも考えていると思います。

例3:再就職支援の金銭の提供をした場合には解雇できる。

例4:解雇が無効となった場合でも金銭を支払って契約を解消することができる。

これらも、特区で定めることは可能となるでしょう。八代氏や八田氏は、このような解雇金銭解決の導入の旗振り役ですからね。

■ガイドラインって何か?

ガイドラインがどのようなものか、「労働契約法16条を明確にしたもの」というだけで、内容は不明です。

真面目に法律家が、従来の判例も参考にしながら、労働契約法16条の内容をもう少し具体化するとしたら、次のようなものになるはずです。この場合は、労働者側の事情を理由とする解雇(個別解雇)、経営を理由とする解雇(整理解雇)を分けて定めることになります。

個別解雇について

○労働者の属性(個人的な事情、私傷病等)によって労務提供が最終的に継続的に不可能になった場合(ただし、休職規定適用の場合はそれによる)

○労働者の故意又は重大な過失行為によって業務に重大な障害を与えた場合

○労働者の業務遂行能力が、教育指導を重ねても、著しく低い水準となり、他に担当可能な職務がない場合

整理解雇について

①人員削減の経営上の必要性があること、②解雇回避努力を尽くしたこと(解雇の最終手段)、③解雇人選基準の合理性、④解雇について労働者・労働組合との協議を行ったこと、

判例をガイドラインにしようとすると、基本的な枠組みは以上のものになるはずです。それほど難しいものではない。まともな労働法学者(但し、大内氏、小嶌氏以外)に委嘱すれば判例に依拠した、それなりのものがすぐできるはずです。

でも、今回の特区のガイドラインはこのようなもにはならないでしょう。未だ、ガイドラインの内容は伏せられています。内容を公表したら、国民の反対が強まるために明らかにしないのでしょう。国会審議でも明らかにしないように思えます。めちゃくちゃだね。

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国家戦略特区=解雇規制緩和特区

■解雇ルールの緩和

 産業競争力会議の国家戦略特区ワーキンググループは、当面は労働時間規制をあきらめて、有期雇用規制の特例と、解雇ルールの特例措置にしぼったようです。

 解雇ルールの特例措置について、9月20日の八田座長資料の文章表現から次のように変更になりました。とはいえ、趣旨は一緒です。

現状:裁判になったときの予測可能性が低い。
特例:特区内の適用対象に限り、解雇の要件・手続を契約書面で明確化(契約内容が特区本部で定めるガイドラインに適合する場合、裁判規範として尊重されるよう制度化)。

■「解雇のルールの明確化が目的」という誤魔化し

 ワーキンググループは、「解雇規制の緩和を目的とするものではなく、明確化をはかる」などと述べているようですが、法律の素人をごまかすものです。

 上記「裁判規範として尊重されるよう制度化」という言葉は、法律家や行政官が真面目に書いた文章とは思えないような、「ごまかし」文章です。

 「裁判規範」である以上、裁判官は拘束されます。尊重すれば良いというものではない。憲法76条3項は、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と定めています。この「法律」とは「裁判規範」を意味します。解雇に関する契約条項が「裁判規範」となれば、その裁判規範は労働契約法16条の特則になる。そして、「特別法は、一般法に優先する」との法律解釈の原則から、特区の解雇条項(解雇に関する契約条項)が優先され、これによってのみ解雇の有効性を、裁判官は判断しなければならなくなります。労働契約法16条は適用されないことになります。

■解雇の契約条項

ガイドラインに適合した解雇契約条項の例としては、次のような条項が考えられます。

例1:担当職務又は担当勤務場所が消滅した場合には解雇できる。

例2:契約書に定めた職務能力又は業務成果が達成できなかった場合には解雇できる。

 今の労働契約法16条が適用されれば、例1も例2も、その担当職務や担当勤務場所がなくなっても、解雇回避努力として配置転換の可能性が十分に検討されなければ解雇は無効となります(整理回顧の法理)。ところが、上記契約条項が裁判規範となれば、裁判所は、担当職務又は担当勤務場所が消滅したという事実だけで、解雇を有効としなければなりません。

 例2の場合も、契約書に定めた職務能力や営業成果が発揮できなければ、解雇が有効となります。現行法の下では、労働者の努力や他の労働者との比較、会社が業務支援や教育指導を十分に行ったかも勘案されて、解雇が有効か無効かが決められます。これは不要になってしまいます。

 このとおり、特区の契約条項に裁判規範とすることは、労働契約法16条の適用排除にほかならないのです。これを「適用排除でない」と強弁するのは、法律解釈の論理としては間違っています。

■弁護士や会計士だから良いの?

 適用対象は、弁護士や会計士等だとします。理由は、「高度の専門能力を有し、交渉力が高い」からだそうです。
 しかし、実際には、法律は、このような抽象的文言にして特区所管の大臣があとは政令で対象の範囲を広げるという制度とするはずです。

 弁護士で想定されるのは、企業が雇う「企業内弁護士」(最近は、「インハウス・ロイヤー」と言うそうです。要するに「サラリーマン弁護士」です。)でしょう。しかし、現在の若手弁護士は極めて就職難です。中には法律事務所に就職できず、弁護士登録できない若手が多くいるそうです(200人に達する)。しかも、「企業内弁護士」になろうとするようなビジネス志向の司法修習生は、本来はビッグ・ローファームの法律事務所への就職を狙います。だから、企業内弁護士になるのは、その手の事務所に入れなかった人達です。決して交渉力は高くない(どちらかというと低い)。そもそも普通の人は「弁護士資格をとりながら、何が悲しくて企業のサラリーマンなんかになるの?」と感じるでしょうから。ですから「現在就職状況が悪いので、企業内弁護士になるのもやむを得ない。」というのが本音ではないでしょうか。雇う企業側の本音も「給料が他の大卒・院卒と同じ程度に低くなったから雇ってもいいか。」と言うものです(企業の法務部長等をしている大学の友人たちから聞きました。)

 最初は弁護士や公認会計士や大学院出の博士であっても、その後、どんどん緩和されるのが政府の労働法規制緩和策の常套手段なのです。労働者派遣法改正経過を見ればわかります。

 とにかく特区で「蟻の一穴」を、岩盤にあけて、そのあとはドンドン広げるといういつもの手法です。小さく産んで大きく育てるです。マスコミや国民は、同じ手法に何度も騙されていますけどねえ。

■開業後5年以内や外国人労働者が30%以上が対象事業所だから良いの?

 既存の企業も、開業後5年をクリアするのは、子会社を設立すればオーケーです。また、子会社を設立して、労働者を子会社に転籍させればオーケーとなります

 外国人労働者が30%以上って、別に外資企業に限りません。地方に行けば、製造業メーカーの中小企業が、日経ブラジル人等の外国人を有期契約でたくさん雇用している事業所はたくさんあります。群馬とか、静岡、山梨など。こういう地方では、中小企業の日本企業も、外国人労働者の30%をクリアできるでしょう。

■「予測可能性がない」という非難について

 日本の労働契約法16条は、解雇の有効性の要件を、「客観的で合理的な理由があり、社会的に相当であること」としています。八田氏は、この法文では、予測可能に欠けるとします。しかし、解雇規制の法文が抽象的になるのはやむを得ません。これは日本だけではありません。欧州や韓国の解雇規制の法文(訳文)も日本と似たり寄ったりです

ドイツ  「社会的不当性」
フランス 「真実かつ重大な事由」
韓 国  「正当な理由」

この国々の解雇規制の法文の詳細は以前のブログで紹介しました。
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/08/post-f95e.html

 そもそも、業種や従業員数、企業規模(10人程度の企業から1万名を超える企業まで)が多種多様に別れ、労働者側の事情も解雇理由も千差万別です。これを具体的に特定することのほうが難しい。判例による積み重ねで判断方法や枠組みが判例を分析することで得られます。法文だけで予測可能性を高めることは困難でしょう。

 解雇規制を定める法律に求められることは、「予測可能性」だけでなく、「結果の妥当性」です。解雇の場合には、法律に求められるのは、「結果の妥当性」が重要です。予測可能性があっても、結果の妥当性を欠けば意味がありませんから。

■「解雇自由化すれば、失業者が現象する」という経済学の実験場=特区

 八代氏、八田氏の依拠する経済学は、解雇を自由化し賃金の下方硬直性を打破(自由化)すれば、労働市場の市場機能が回復し、創業が進んで企業の雇用率が増加して失業率も低くなるという経済学です。その実験をする場が、この国家戦略特区なのです。「解雇規制を緩和するものではなく、解雇ルールを明確化する」というのはごまかしでしかないでしょう。

 この解雇緩和特区がどこになるかは、まだ決まっていません。が、橋本市長が既にチャレンジ特区として手を挙げている大阪市が有力候補でしょう。

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2013年10月 3日 (木)

「国家戦略特区」という経済学の堕落

■特区での労働法規制緩和

過去にも日経新聞で報道されていましたが、「アホな」と本気にしていませんでした。ところが、なんと安倍総理が出席した産業競争力会議で八田達夫教授(国家戦略特区ワーキンググループ)が提出した特例措置が決まったというのです。

http://digital.asahi.com/articles/TKY201309200403.html

■国家戦略特区WG 八田達夫座長 提出資料

 開業率と対内直接投資が低水準にとどまっていることは、我が国の経済再生に向けて克服すべき重大課題。新たな起業や海外からの進出が拡大してこそ、よりイノベイティブな産業の創出、切磋琢磨を通じた競争力強化が見込める。
 このため、新規開業事業者や海外からの進出企業などが、より優れた人材を確保できるよう、雇用制度上の特例措置を講ずるエリアを設ける。

<特例措置>
地区内において
・開業後5年以内の企業の事業所に対して、(2)(3)の特例措置
・外国人比率が30%以上に対して、(1)~(3)の特例措置

(1)有期雇用
・雇用締結時に、労働者側から、5年を越えた際の無期転換の権利を放棄することを認める。これにより使用者側が、無期転換の可能性を気にせず、有期雇用を行えるようになる。→「労働契約法18条にかかわらず無期転換放棄条項を有効とする」旨を規定する。

(2)解雇ルール
・契約締結時に解雇の要件・手続を契約条項で明確化できるようにする。仮に裁判になった際に契約条項が裁判規範となることを法定する。
→労働契約法第16条を明確化する特例規定として、「特区内で定めるガイドラインに適合する契約条項に基づく解雇は有効となる」ことを規定する。

(3)労働時間
・一定の要件(年収など)を満たす労働者が希望する場合、労働時間・休日・深夜労働の規制を外して、労働条件を定めることを認める。
→労働基準法第41条により適用除外を追加する。

<これに伴う措置>
上記の特例措置に伴い、不当労働行為、契約の押し付けや不履行などがなされることのないよう、特区内の労働基準監督署を体制強化し、労働者保護を欠くことのないよう万全を期す。

■要するに

特区内では、「外国人労働者が3割を超える企業」については、

①有期雇用労働者を無期転換にさせなくてもよい

②解雇ルールも労働契約法16条は適用除外して解雇を容易にする

③一定の年収以上の労働者には労働時間規制を適用させずに何時間働かしても残業代も払わなくても良い

「5年以内の開業した事業所」は、
上記②(解雇緩和)と③(労働時間規制の適用除外)の適用を受ける

■労働法の規制は全国共通規制

解雇ルールや労働時間規制は、国民(労働者)が「健康で文化的な最低限度の生活を営む」ためのルールです。これは国民が等しく有する権利にほかなりません(憲法25条 生存権)。そのため、賃金、就業時間、休息その他の勤労条件(労働条件)に関する基準は、法律でこれを定めるとしているのです。

このような労働条件に関する規制は、全国共通の規制であり、企業の公正競争を担保するものです。これを特区を設けて、例外を認めては、労働者の生存権保障や企業の公正競争のルールを破壊することになります。

■労働基準の切り下げがもたらすもの

開業率を高めたり、海外企業の投資を促進するために、労働者の公正な労働基準を下げることはあってはなりません。それは、労働条件切り下げ競争を促進するだけです。

雇用維持を図る労働法を悪しき規制と非難し、この「岩盤を掘り崩さないと、経済成長は達成できない」などと、一部のマスコミやキャスターは述べます。

しかし、この岩盤こそ、企業の存立と国民の生活を支える社会基盤です。その基盤を崩すことは、取り返しのつかないことになるものです。

経済学は、「経世済民」の学問と言われますが、八代氏や八田氏の経済学は、経世済民の否定にほかならないと思います。何か、金さえもうかれば良いという身もふたもないというか、モラルが欠如していると思われます。

彼らをあらわす言葉は、・・・卑怯千万、卑劣漢、唾棄すべき奴。

また、法律論としてもとんでもなくでたらめの内容だと思いますが、これは、また別に述べたいと思います。

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