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2013年8月17日 (土)

読書日記「誰が法曹業界をダメにしたのか -もう一度、司法改革を考える」

中公新書ラクレ
2013年8月10日発行
2013年8月17日読了

■著者両名とも弁護士

岡田和樹弁護士は私の事務所の先輩です。が、今は世界的な国際法律事務所であるフレッシュフィールズブルックハウスデリンガー法律事務所のパートナー弁護士。労働訴訟でも使用者側の弁護士で、私の事務所の相手方になります。

■「弁護士を減らせ!」論に対する反論

著者らの発言は歯切れが良い。例えば、弁護士減員論に対しては、・・・

十数万人の就職浪人が出ようと、「大学や高校を減らせ」という声はない。どうして、弁護士だけが、就職できない者がいたり、あるいは、若手で喰えない者がいるからといって、「合格者を減らせ」などと大騒ぎするのかおよそ理解できない。

筆者らが弁護士になった35年前には、弁護士になってすぐ独立するという人はいくらでもいたのであって、それ自体には何ら問題もない。先輩弁護士に部屋を貸してもらって弁護士を始めてどこが悪いというのであろう。

まさに岡田ブシです.
(昔も労働事件で敗訴した労働弁護士に対して、「『司法反動』なんて負け犬の遠吠えを言う前に、主張と立証を吟味しろ!」と言い放っていてました。

■「喰えないのはなぜか」

著者らは、弁護士が増えたからではないと言います。

全国の訴訟件数が減っているから、弁護士1人当たりの事件数も当然減っている。今のところ、弁護士の業務は訴訟中心だから、訴訟件数が減れば法律事務所の経営は厳しくなる。

弁護士の顧客は、基本的には中小企業や商店主、一般の労働者である。大企業を顧客とする弁護士は、ごく限られている。その顧客層の収入が低下すれば、弁護士の収入が低下することは避けがたい。・・・ 法律事務所の経営が厳しいのは、弁護士の数が増えたからというより、顧客層の生活や経営が厳しいことの反映である。

経営が苦しいのは、世間の商店主や中小企業、労働者が苦しんでいるのと同じことで、弁護士だけが苦しんでいるわけではない。新しく登録した弁護士に仕事がないのは、多くの若者が大学を出ても正社員になれず、派遣やパートといった非正規雇用に就かざるを得ないのと同じである

■で、打開策は?

著者らは、弁護士3000人維持、ロースクールの改善、司法試験の改革(短答式廃止等)で合格率7割を実現するなど、10年前の司法改革をより進めようというという提言です。

若手への当面の対策は、垣越ネットワークをつくって、若手に仕事をまわす方策を打ち出す。

さらに、日本の法律事務所の国際化を強調。

日本企業が国際化している以上、大きな需要があり、英語を苦手と考える「負け犬根性」を捨て、日本を中心とした法律事務所を作ろうと提言しています。全くドメスティックな法律事務所から、フレッシュフィールズに行った岡田さんだからこそ言えることなのでしょう。

民事裁判も抜本的な改革を提言します。

例えば福島原発災害に関して東電に対して、日本ではなかなか裁判が起きなかったのは、民事裁判制度が問題なのだとします。(なお、アスベスト訴訟で製造メーカ追及の裁判が起きないとの記述がありますが、国と製造メーカーらに対する訴訟、建設アスベスト訴訟(集団訴訟)がありますよ)。具体的な改革案は次のとおりです。

懲罰的賠償の導入
クラスアクション(集団訴訟)の導入
雇用関係訴訟制度の改革
証拠開示制度の拡充、陳述録取制度の必要性
民事陪審の導入

■感想

確かに、弁護士の数を減らすことだけに汲汲とするよりも、民事裁判改革や行政裁判改革を推し進めて弁護士の仕事を増大させることのほうが重要なのはそのとおりです。

でも時間がかかるねえ。それまでは、どうするんだろう。

私のこの問題についての過去のブログは次のとおり。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2009/03/post-3f9a.html

もっとも、このブログ後には、閣議決定は変更され、日弁連は1000人への減員路線を決めていますが。

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コメント

経営が苦しいのは、世間の商店主や中小企業、労働者が苦しんでいるのと同じことで、弁護士だけが苦しんでいるわけではない。
といいますが。
私は今まで,商店主や中小企業が倒産して生活保護に頼らざるを得ないという,自己破産と生活保護申請同行のセットの事件を何度も手がけました。
岡田先生がそのようにおっしゃっているということは,弁護士も,生活保護に頼らなければならないリスクをかなりの高率で抱えた職業だということでOKなのでしょうね。
大学の後輩に,そのように広めます。そして,決して弁護士を志望しないように,就職に有利な条件のある人には,その有利さを生かして,安定した収入のある職業に就くように強く勧めようと思います。

投稿: 某若手 | 2013年9月 8日 (日) 10時38分

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