「雇用制度改革」を考える(労働調査2013年8月号)
労働調査協議会が発行している「労働調査」8月号で「雇用制度改革」を考えるという特集が掲載されています。私が「規制改革会議『雇用改革』批判」を書きました。
特集 「雇用制度改革」を考える
1 労働規制の緩和をめぐる政府での論議経過と連合の考え方
杉山 豊治(連合・雇用法制対策局長)
2 規制改革会議「雇用改革」批判
水口 洋介(弁護士)
3 「ジョブ型正社員」をめぐる錯綜
濱口 桂一郎(労働政策研究・研修機構・客員研究員)
4 労働者の“つながり”をどのように構築するか?
-デンマークからみた雇用制度改革-
菅沼 隆(立教大学経済学部・教授)
5 日本的雇用慣行の功罪と雇用制度改革の方向性
山本 勲(慶應義塾大学商学部・准教授)
http://www.rochokyo.gr.jp/html/2013bn.html#8
私の基本スタンスは簡単に言えば次のとおりです。
雇用WG報告書が、日本型正社員の特徴を「無限定正社員」として、その問題を批判する点については賛成する。 しかし、その問題点を改善するために「限定正社員」を切り分けて、「限定正社員」について(のみ)労働時間や配転等を限定し、解雇規制(整理解雇法理)を緩和することには反対、というものです。
メンバーシップ型労働契約であろうとジョブ型労働契約であろうと、労働者を解雇するには、労契法16条が共通して適用され、整理解雇にあっては4要件、特に解雇の必要性及び解雇回避努力義務が求められるべきです。
その上で、日本型正社員の働き方を改善するには、労働組合は、次のような積極的な改善を要求していかなければならないと思います。
■真の雇用改革-労働者の雇用改革
労働者にとって必要な雇用改革は、第1に、メンバーシップ型労働者であろうと、ジョブ型労働者であろうと、また正規、非正規にかかわらず、労働時間(残業)を厳格に規制することである。その上で、第2にワークシェア・リングを労使が推進することが必要である。第3に、非正規労働者を直接雇用・無期労働契約への転換を促進することが求められる。これらは女性労働者の差別是正の必要条件でもある。
これに付け加えて、「均等待遇の原則」(同一労働・同一賃金の原則)ですが、職能等級制度を賃金の基本とするメンバーシップ型正社員、とジョブ型労働者が混在する日本雇用制度において、これをどのように実現するか。 立法論としても解釈論としても大きな課題です。労契法20条のような不合理な差別禁止法理を活用していくしかないのでしょう。
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