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2013年7月15日 (月)

マイレージ、マイライフと日本IBM型解雇

■映画 マイレージ、マイライフ
ジョージ クルーニー主演。会社にかわってリストラ解雇を言い渡すコンサルタント企業の担当者。一年のうちほとんどを全米の年に出張して解雇を言い渡す解雇通告人。主人公は、全米で何百人に面接して解雇を言い渡す。主人公の人生の目標は、飛行機のマイレージを貯めること。家族も恋人もいないが、クールな自由人で人生を大いに楽しんでいる。
映画の見所は、クルーニーの格好良さのようだが、映画を観て印象に残ったのは、クルーニーから解雇を言い渡された人々(もちろん解雇自由の国のアメリカ人で、老若何女、人種も様々で)の表情と反応である。

「30年もこの会社に貢献してきたのに、見ず知らずのお前に解雇されるのか?」
「妻に、失業したなんて言えない。どうすりゃいいんだ。」
「それは困る。住宅ローンもあるし、子どもの教育費もかかる。何か悪い点があったら言って欲しい。」
「失業のストレスは、家族の死のストレスと同様と聞いたが、間違いだ。僕の個人的意見では、自らの死と同じだ。」

 等々20人くらいの被解雇者が出てくる。紆余曲折の後、リストラ通告人も最後は、解雇通告のために飛行機に乗るのを止めることを暗示するシーンで映画は終了します。
世界でも珍しい「解雇自由」法制を持ち、「雇用の流動化」が進んだ米国でも、個人的には、解雇を言い渡されることは心理的にも大変なようです。世界中、どこの国でも解雇や失業が個人にとっては大変な事態であることは変わりがないようです。

■日本IBMの解雇
この映画のように解雇を通告された人たちがたくさん日本でも生じています。日本IBMでは、日本国内で解雇を連発しています。

2012年7月から9月に14名(うち労組員10名)が解雇。
2013年5月から6月にかけて労組員14名、労組以外では判っているだけで3名います。

私は弁護士になってから27年間、日本IBMの労働組合(JMIU日本IBM支部)とつきあってきましたが、労組員がこれだけ大量に解雇されたことは初めてです(というか、労組員が解雇されたことが(雇止め以外は)なかった)

■日本IBM型解雇の態様
終業時刻間際の午後4時頃に上司に呼び出されて、その場で解雇予告を通告される。
就業時間までに私物をもって社外に退去させられて以後、社内立ち入り禁止)。
解雇日は1週間ほど後の日が設定され、それまでに自ら退職すれば、退職金の割増や企業年金の特例適用等の優遇措置をとってあげる、という方式です。

解雇理由(解雇予告通告書に記載)は次の3行で、全員同じ文章。

貴殿は、業績が低い状態が続いており、その間、会社は職掌や担当範囲の変更を試みたにもかかわらず業績の改善がなされず、会社は、もはやこの状態を放っておくことができないと判断しました。以上が貴殿を解雇する理由となります。
これらの貴殿の状態は、就業規則53条2項の解雇事由に該当します。
 就業規則53条2項
 技能または能率が極めて低く、かつ上達または回復の見込みが乏しいかもしくは他人の就業に支障を及ぼす等、現職または他の職務に就業させるに著しく適しないと認められるとき。

解雇された方の多くは40歳代から50歳代。日本IBMにほぼ20年から30年にわたり勤務されてきた方々です。ここ数年の人事考課を低く査定されているとはいえ、具体的に業務上重大な失敗をしたとか、業務指示違反があったというわけではありません。

日本IBMでも、このような業績不良によって解雇された労働者は今までいませんでした(これは別件訴訟で人事担当者が証言している)。

■今、何故このような解雇が実施をされるのか
日本IBMは、昨年日本人の社長から、米国人の社長・役員に代わりました。社長は、イエッターというドイツ系米国人だそうです。また、人事担当役員も米国人に交代したとのこと。
そして、IBMは、全世界で大量のリストラを進めており、ブルームバーグ通信でも、次のように報道されています。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MOAXBP6K50Y601.html

日本では、1万3000人いる従業員を1万人に削減する計画と言われています。また、新経営陣はリストラすると労組員が増えるため、労組に入っても無駄ということを判らせるために先ず労組員をターゲットにしているとの匿名メールが組合に寄せられているとのことです。

業績不良解雇はみせかけで、実質的には「整理解雇」でしょう。ただ日本IBMは大きな黒字を計上しており、整理解雇と言っても、日本の整理解雇法理によって解雇が無効とされるために、このような同一同表現での「業績不良解雇」が乱発されたと思われます。

■米国式:ロックアウト型解雇、日本式:追い出し部屋
アメリカ企業の本音(低査定の下位15%は常に解雇する「人を切る経営」)と日本の労働法との真正面の対決です。今、東京地裁36部で、この解雇無効・地位確認訴訟が審理されています。

他方、日本型というと相変わらず隠微、陰険な「追い出し部屋」方式です。

リストラにも国柄があらわれます。

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