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2013年7月21日 (日)

本久洋一教授 雇用制度改革の研究会 OECD雇用戦略

■労働弁護団での学習会

國學院大學の本久洋一教授(労働法)をお呼びして、「規制改革会議の雇用制度改革が何をしようとしているのか」をテーマに研究会を開催しました。本久教授は、フランス労働法が専門です。

規制改革会議の雇用ワーキンググループ(WG)の提言について、その狙いと背景について伺いました。

OECD雇用戦略の影響を受けて、それに伴いEUの雇用戦略が、「ソーシャル・ヨーロッパ」から「フレクシキュリティ」に足場を変えていることや、フランスでも、カユ=クラマール報告(2004年)の後、雇用政策が大きく変化したことなど興味深い話しを聞くことができました。

とても、刺激的なお話でした。今回の雇用規制改革は、1995年の旧日経連の「新時代の日本的経営」以上に10年、20年にわたる影響を与えるものという指摘もなるほどと思いました。

概要をご紹介します。もっとも、私の理解によるメモですので、間違いがあるかもしれません。なお、詳細な講演録は、「季刊労働者の権利」に掲載される予定ですのでこうご期待。

■ヨーロッパの雇用社会
ヨーロッパの労働契約が「ジョブ型」というのはそのとおりだが、雇用WGの言う「限定正社員」や「ジョブ型正社員」とは全く異なる。


ヨーロッパでの「仕事・職務・ジョブ」は、学校等の仕事に就ける「資格・免状」との対応で決められており、これと産業別労働協約の仕事についての賃金協定(「産別賃金協定」)と結びついている。これは、ジョブが社会化されていると学者は呼んでいる。

日本には、このような社会的基盤がない。このような社会的基盤がない日本において、ジョブ型労働契約などは当てはまりようがない。ヨーロッパでのジョブ型雇用契約や産別賃金協定が成り立つのは、同業組合の伝統等1000年の歴史が背景にあり、日本に、これを持ち込むことは無理。

ヨーロッパから見れば、新卒で何の具体的な職務能力がないにもかかわらず、無期限の雇用契約を締結することは理解できないでしょう。しかし、日本では、それが成り立ってきたのは、日本の伝統や文化に沿ったものだったからにほかならない。

■OECD雇用戦略とEUの雇用

1994年にOECDは雇用戦略を策定して、これにより市場主義的な雇用制度改革が打ち出された。日経連の「新時代の日本的経営」改革もこの延長戦上にある。


EUの雇用戦略は、「雇用安定と均等処遇による社会的包摂」であった
が、OECD雇用戦略の影響を受けて、2003年以降は、「フレクシキュリティ」(フレキシキブルな労働市場、社会保障、積極的雇用政策)により、雇用の流動性が基本となった。フランスでは、カユ=クラマール報告が2004年に発表されて、サルコジ大統領の雇用政策に取り込まれた。


OECDは2006年の新雇用戦略で、この「フレクシキュリティ」を高く評価し、これを取り込んでいった。
OECDは雇用(解雇)や非正規労働者について点数化をし、企業の投資環境を評価するということである。

解雇や非正規雇用契約の規制について点数化して、順位化して発表している。

http://www.oecd.org/employment/emp/oecdindicatorsofemploymentprotection.htm

規制改革会議のいう国際先端テストとは、このことを意味している。

■雇用WGの提言とのOECD雇用戦略の共通性

今回の「人が動く」ことを基本とする提言の基本は、このOECDの雇用戦略やフレクシキュリティの延長線上にある政策。その影響力は、これから、10年、20年にわたり続く、基本政策となる。

1995年の日経連(旧)の「新時代の日本的経営」に匹敵する、否、それ以上の影響力がある。95年の新時代の日本的経営が狙った雇用流動化は18年経過して実現した。非正規労働者が約4割になっている。

今回の雇用改革は、旧日経連という民間使用者団体ではなく、政府が取り組むものであり、日本の雇用安定と雇用の在り方に大きな影響を与えることになる。解雇の規制緩和、解雇の金銭解決、人材ビジネスの活用、派遣労働の規制緩和である。

■ジョブ型労働契約と整理解雇
フランス労働法典では、ジョブ型労働契約を前提としても、「雇用の廃止又は改訂」によって行われる解雇は、経済的事由による解雇であるとして、解雇規制が及ぼされている。ジョブがなくなれば、即解雇ということでなく、使用者は再配置義務が課される。

日本では、ヨーロッパのような意味での「ジョブ型雇用」が成立する社会的基盤は存在していない。仕事がなくなったからといって、解雇回避努力を解除するということにはならない。

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