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2013年3月 8日 (金)

有期労働契約の「更新上限の合意」への対応策

■労働弁護団 有期契約ホットライン 相談例

昨日3月7日、労働弁護団で有期労働契約についての全国ホットラインを実施しました。相談件数は、東京で39件でした。

ただ、改正有期労働契約に関して次のような相談が寄せられました。

今まで、有期で5年、10年働いてきたのに、会社の有期社員全員に、今年4月から、更新上限を5年と書かれた有期労働契約書を締結するように言われている

懸念された無期転換ルールを回避するために更新の上限を決める就業規則や契約書を提示するという動きです。

■法律解釈

従来、更新の上限が定められておらず、更新の可能であるという有期契約を締結してきた有期社員にとっては、当該有期労働契約の内容(労働条件)は、更新の上限なしです。

今回の改正労契法の18条(4月1日から19条)は、有期社員が従来の労働契約と同一の労働条件で更新を申し込むことができると定めています。使用者は、客観的合理的な理由及び社会通念上相当でなければ更新を拒めず、「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件」で有期労働契約が更新されることになります。

したがって、有期社員が更新の申込みをすれば、従前の「更新上限なし」の有期労働契約の更新を使用者は承諾しなければなりません(客観的合理的な理由及び社会通念上相当と認められる雇止めの理由がないかぎり)。

この際、使用者が、当該有期社員が「更新の上限を定めることに同意しないから」として雇止めをした場合には、当該雇止めは、無期転換ルールを定めた労働契約法の趣旨及び労契法18条(4月1日から19条)に反し、違法となります。

■有期社員及び労働組合がとるべき対応

○準備行動

先ず、有期社員は、使用者に、もしこの合意をしなければどうなるかを質問する。

この場合、使用者は、「合意しなければ、すぐ3月末で雇止めをする」と回答するでしょうから、この回答をしっかりメモや録音しておくことが重要です。

○理想的な行動パターン

更新合意を締結することなく、従前の有期労働契約(更新上限なしの有期契約)を申し込む。使用者は、上記の法律解釈のとおり、これを理由に雇止めをすることはできない。

仮に、使用者が雇止めをしても、その雇止めは無効となります。

勇気のある有期社員で、労働組合が応援してくれる人は是非、この対応をとることをお勧めします。
都内の方であれば、私が代理人になって会社と交渉してもいいです。雇止めされたら労働審判でたたかいましょう。

○現実的な行動パターン

しかし、有期社員は雇止めされたら困りますので、不承不承でも更新上限の記載のある契約書にサインをしてしまうでしょう。

でも、この場合でもあきらめる必要はありません。

上記の準備行動をして、使用者が、合意しなければ雇止めをすると回答したことを記録しておくことが重要です(文書、録音、メモ)。

その上で、更新の上限を定められた有期労働契約書に署名した後、かつ、契約更新して、2,3日働いてから、労働組合があれば、労働組合が、次のような要求書を会社に提出しましょう。

○○株式会社  御中

今回の更新上限の合意は、労契法18条の潜脱(せんだつ)するもので、改正労契法の趣旨に反して違法無効であり、撤回を求める。

                                                        ○○○○ユニオン

もちろん、有期社員個人で、このような異議を述べることをしても良いのですが、一人では弱い立場なので、労働組合に応援してもらうのがベターです。

もし、この異議申入れを理由にして、使用者が「やっぱり雇止めをする」と言ってきても、これも違法となり、雇止めは法的に無効です。

会社に労働組合がない場合には、地域の誰でも入れる労働組合に相談することをお勧めします。または、日本労働弁護団の所属の弁護士に相談して下さい。

■就業規則の変更への対応

なお、有期社員向けの就業規則に、今まで更新の上限がないにもかかわらず、有期契約の更新の上限が新たに定められた場合には、労働条件の不利益変更(更新の上限のない労働条件から、更新上限のある労働条件への不利益変更)ですから、労働契約法10条違反です。従前からの有期社員(有期契約労働者)を法的に拘束することはできません。

労基署は、本来、このような就業規則の変更は、改正労契法新18条違反として、受理せず、変更を命令すべきですね。

■働く人のための「改正労契法等マニュアル」

日本労働弁護団は、労働者の視点にたってのマニュアルを作成して、頒布しています。我々、労働弁団所属の労働弁護士が、使用者の対応を睨んで、実践的な労働者・労組の対応を考えて、解説した本です。興味のある方は、日本労働弁護団のHPを参照ください。

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労働法」カテゴリの記事

コメント

興味深く拝見させていただいています。

似たような状況ですが、今後5年の間に正社員登用試験に受からなければ契約更新しないという条件の場合も同じような対応で大丈夫でしょうか。

ちなみに今まで更新上限はありませんでした。
正社員枠は非正規全員分ありません。
正社員登用制度は入社当初からありましたが、非正規100名ほどいますが正社員になった人はほとんどいません。

投稿: こまった | 2013年3月29日 (金) 05時32分

同じ対応でOKだと思います。

五年後に正社員転換試験に合格しないと、それ以上更新しないという条項は、更新の上限と同じ意味です。

これに承諾しないと更新しないと言ってきても、従来の上限なしの有期労働契約の更新を申し込むことができます。頑張って下さい。使用者が頑なのような場合は私の事務所に相談下さい。

いくつかブログからの相談があるのですが、地方の方で直接サポートできず、無念の思いをしています。地方の方でも地元の労働弁護団所属の労働弁護士を紹介できる場合もあります。

投稿: 水口 | 2013年3月29日 (金) 08時39分

さっそくのご回答ありがとうございます。
追加質問ですが、契約更新時期はまだ少し先ですが、契約更新より前に、新しい条件についての説明をされ、それについて合意書にサインを求められて合意してしまった場合、不利になりますでしょうか。

投稿: こまった | 2013年3月29日 (金) 10時01分

こんにちは。ぼくも契約社員で新しい契約書には

・通算契約期間は本契約開始日(2013年7月1日)から5年を超えないものとする。

という、文言が新たに入っていました。
こちらのブログを参考に、人事に「この文言には同意できない場合はどうなるのか?」と聞いたところ、「契約書にその文言を記載せずに契約する事は可能である」と返事があったため、契約書からこの文言を削除させることが出来ました。
詳しくは以下のブログにまとめましたので、読んでいただけると幸いです。

続:無期雇用労働者を増やすはずの「改正労働契約法」がなぜ「5年有期雇い止め促進法」になってしまうのか
http://nabeparty744.blog111.fc2.com/blog-entry-73.html


投稿: Takky@UC | 2013年8月 6日 (火) 12時16分

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