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2013年3月17日 (日)

解雇自由化と解雇金銭解決制度 「解雇の沙汰も金次第」第2ラウンド

■民法627条の解雇の自由

長谷川閑史(武田薬品社長・1946年生)が、内閣にもうけられた産業競争力会議の第4回会議で、労働契約法16条を見直して、民法627条1項のいつでも解雇できると定め、また、解雇の金銭解決制度を導入するように提言しています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai4/siryou2.pdf

これを朝日新聞も大きく報道していました。

http://www.asahi.com/business/update/0307/TKY201303060639.html

■規制改革会議の雇用ワーキンググループでも

鶴光太郎教授(慶応大学)も、解雇ルールの見直しを提言し、解雇金銭補償制度と正社員の多様化を突破口にすると述べています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130225/item10.pdf

■前にも聞いた歌

解雇の自由化と解雇の金銭解決制度は、小泉内閣の時にも、規制改革会議の福井秀夫氏やオリックスの宮内、八代教授らが大きな声で歌っていました。

小泉政権のもと、厚労省は、2006年、労働契約法で解雇の金銭解決制度を導入する一歩手前まで勧めました。

「解雇の沙汰も金次第?」というブログを2006年に書きました。

http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/116589/104432/10859541

再度、登場でデ・ジャブみたいです。

■アベノミクスの三本目の矢は、相も変わらず規制撤廃の「新自由主義」

アベノミクスの一本と二本目の矢は、短期的な景気対策ですが、三本目の矢は、雇用流動化と解雇自由化です。

もっとも、この武田薬品の社長さんは民法627条のように解雇自由にしたいと言いながら、他方で、解雇金銭補償制度を導入すると言っています。解雇自由なら、解雇に金銭も支払う必要もないわけです。ですから、この社長さんは法律的なことは、ちっとも分かっていない方です。

同氏は、武田薬品のヨーロッパ現地法人の社長(ドイツ)もやった方のようですが、ドイツの労働法はまったく知らないのですね。世界標準の解雇ルールだと、解雇は正当な理由が必要とするのが世界標準ルールであり、解雇自由は米国のローカル・ルールでしょうに。

他方、鶴光太郎教授は、次のように短期的な具体策をあげます。

正社員の次の3要素(「鉄の三角形」のように相互の補完性が強い)のどれから
改革の「突破口」を切り開くのか

(1)無限定社員(将来の職務・勤務地等の無限定)⇒ 地域・職務限定型正社員
の雇用ルール整備

(2)期間の定めのない雇用(無期雇用)⇒ テニュア制度(数年の有期契約で能
力が認められれば正社員に転換する仕組み)の雇用ルール整備

(3)判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルール ⇒「解雇補償金制度」の創

この中で、鶴教授は、「判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルール」と書いています。まさか、この方が労働契約法16条があることを知らないわけはないでしょう。

ですから、この「判例法理に基づく解雇ルール」っていうのは、「整理解雇法理」を意味しているのかもしれません。この整理解雇を対象として、「解雇補償金制度」を導入しようとしているのでしょうか。

この規制改革ワーキング・グループの専門委員に、労働法学者の島田陽一教授、水町勇一郎教授が入っています。お二人は、労働政策審議会の公益委員となる方々です。

この方々は、2005年の厚労省のもとでの「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告書と同様の意見を述べることでしょう。次の意見書を再読したほうが良いようですね。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/09/dl/s0915-4d.pdf

この報告書では、解雇の金銭解決制度が提案されていました。しかし、この制度は、男女差別や不当労働行為解雇のような場合にも「金で解決」するという不合理さが指摘され、また裁判所側の反対にあって、頓挫したものでした。

これがまたぞろ復活ですか。

■規制改革会議雇用ワーキング・グループへの抗議の行動を

内閣の規制改革会議で、大方針が決まれば、労働政策審議会は、その大方針に従い審議をすすめることになります。

したがって、特に規制改革会議の雇用WGで解雇規制の撤廃や解雇金銭補償制度を決めさせないように、労働組合は、抗議行動や運動を同規制改革雇用WGに集中させるべきです。もはや労働政策審議会になって具体化してからでは遅いです。労働者の代表も入れずに審議することが問題です。

しかも、この雇用WGの会議が非公開で傍聴もできないようです。今頃、非公開のワーキング・グループで議論を進めるなんて時代遅れもいいとこです。労働者・労働組合は、この規制改革会議の雇用WGの傍聴を求め、また、会議開催日には、デモや座り込みをして抗議行動をするべきでしょう。

しかし、ある種の経済学者って、本当に心から、私心なく、解雇を自由にしたら景気も経済も良くなるって思っているものなのですね。

仮に日本企業が不効率で衰退しているのであれば、誰よりも責任を負うべきは経営者・役員です。企業の業績悪化は経営者の無能の証。しかも、取締役は委任だから、短期に自由に解任しても全く問題はない(民法651条1項)。

が、そんなことは経済学者も誰も言わず、労働者の解雇自由は大声で言われるのはなぜでしょう?

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