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2013年2月24日 (日)

改正労働契約法20条の活用と菅野説批判

■2月24日に労働弁護団の労働法講座開催

改正労働契約法の活用について話をしてきました。
そのときのレジュメ(誤植などの訂正したもの)をアップしておきます。
当日、労働弁護団で作成した改正労契法・派遣法・高年法マニュアルも発行しました。

■改正労契法20条の有期を理由とする不合理な労働条件の禁止
4月1日から施行されます。

改正労契法20条は、無期契約労働者(正社員)の労働条件と、有期契約労働者の労働条件の相違が、職務の内容(業務の内容及び当該業務の責任の程度)、当該職務の内容及び配置の転換の範囲、その他の事情を考慮して、不合理であってはならないと規定されています。

例えば、無期契約社員(多くは正社員)には危険業務手当(例えば、除染作業危険手当)が支給されるのに、有期契約社員には同じ業務を担当しているにもかかわらず、危険業務手当が支給されないということは、不合理な相違ということになるでしょう。


これ以外にも、正社員には分娩休暇があるけど、有期社員には分娩休暇がないとか、正社員には労災の上積み補償があるけど、有期契約社員には上積み補償がないとか、いろいろ不合理な労働条件があると思います。

■パート法8条との違い
パート法8条は、正社員(通常の労働者)と、有期契約社員との間の職務内容や人材活用の仕組みが同一であることを要件としていますが、改正労契法20条は、その「同一性」を要件としていません。個々の労働条件ごとに、不合理であるかどうかが問題になるので、柔軟な解釈が可能になります。改正労契法20条をパート法8条の延長で解釈しては(させては)ならないでしょう。

■菅野「労働法」第10版批判
労働法学会のビッグネームの菅野和夫教授が、労契法20条について、不合理となるのは、格差が法的に否認すべき程度に不公正に低い場合に限定するとの見解を表明されています(菅野労働法第10版235頁)。

その論拠は、どうやら、正社員と有期社員との労働条件の相違が日本の雇用社会の在り方に密接にかかわっており、日本の雇用制度全体と労使自治に在り方にかかわっており、不合理であるかどうかという司法の介入は謙抑的であるべきという考え方のようです。

安西愈弁護士は、「菅野ショック」と称して、これを鬼の首をとったかのように、改正労契法を批判しています(労働新聞連載から)。

しかし、尊敬する菅野和夫教授の見解ですが(先生の労働法10版を御送付していただきながら批判するのは心苦しいところですが・・・)、この見解は、まったく時代遅れの見解だと思います。

■立法経過に反する
まず、労政審でも国会審議などの立法経過において、労使自治の尊重や日本型雇用制度の実態から、不合理な労働条件が「法的に否認すべき程度に不公正に低い労働条件」である必要がある」なととは何らも要請されていません。

■立法趣旨に反する
改正労契法の趣旨は、正社員中心(メンバーシップ型雇用)の日本型雇用システムが従来、有期労働契約を濫用的に利用(雇止めの不安及び低い労働条件)してきたことの反省から、改正労契法20条を総説したものです。この趣旨とは、研究会や労政審、国会審議からは明白です(菅野先生の高弟の学者たちも含めて)。

■メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の概念のイデオロギー的濫用?
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の概念は、雇用社会の実態を説明するには、極めてわかりやすい概念です。日本型雇用制度を説明するには便利な概念です。

ところが、余りにわかりやすいために、このところ、正社員と非正社員との違いを「正当化」するイデオロギー概念になりはじめてはいないでしょうか。「メンバーシップ主義」という用語まで使う学者も出現しています。

「非正規社員は会社のメンバーの一員ではないから、労働条件が異なっても仕方がない。メンバーシップの正社員とジョブ型契約の非正規・有期の労働条件に相違があるのは当然えある」などとの論述も最近、とみに目にします。

■批判的概念こそ求められる
メンバーシップ型契約とはいえども企業に家庭を含めて全生活を包摂される(24時間戦える企業戦士)という生き方はおかしい。ジョブ型契約とはいえ、雇用の安定と公正な労働条件を補償されるべきだという批判的概念であるべきでしょう。

もともと、メンバーシップ型契約は、そのような批判的意味も含まれていたように思っていましたが(ヨーロッパでは、という「出羽の守」的な論調ですが)。


そこで、両者を統合する価値(批判)概念としては、今はやりの「ディーセントワーク」とか、「ワークフェア」とかということになるのでしょうか。

菅野先生の見解は、あまりに後ろ向きにすぎないでしょうか。

ちなみに、経営法曹の皆さんは、20条について、「あんな施行通達を出しやがって、だまし討ちだ」とか息巻いていましたから、菅野労働法10版の当該記述に大喜びして、改正労契法批判のボルテージをいっそうあげていました。
まあ逆に、私は、今回の労契法改正は20条があるからこそ、不十分とはいえ、成立には反対しなかったのですけどね。

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