零細企業経営者或いはブラック企業経営者の労働法知識の誤り
次の御仁の発言って法的知識が全くない零細事業主や労働法無視の確信犯的「ブラック企業」の典型ですね。
私も中小企業を経営しているが、社員は全員委託契約だから、最賃も解雇規制も無関係だ。最賃が適用されるような雇用契約をしているIT企業はまずない。ほとんどの労働者はオフィスにも出てこないでPCで作業しているので、時給という概念もない。一般の製造業でも、最賃や解雇規制を守っているのは大企業だけで、そういう規制を強化すると大企業が雇用を減らし、契約労働者が増えるだけだ。http://agora-web.jp/archives/1504292.html
■基本的な誤解
「社員は全員委託契約だから、最低賃金も解雇規制も無関係だ」と断言していますが、これは労働基準法を全く誤解したものですね。
「委託契約だと労働契約ではない」と誤解しているようです。おそらく、この人が経営する会社では、社員には労働基準法の適用がないと考えて、割増残業手当も払っていないのではないでしょうか。年次有給休暇を付与することもなく、育児休業も認めていない可能性もありますね。また、社会保険(雇用保険、労災保険等)も社員に適用していないのかもしれません。
事業者と従業員との契約が委託契約書や請負契約書など、どのような名称であろうと、実質的に使用従属関係があれば、当該契約は、あくまで労働契約であって、労働基準法などの労働法が適用されます。
この人が経営する会社は、社会保険事務所や労働基準監督署が労基法違反等の事象がないか臨検すべき企業の筆頭になりそうですね。
■文章が論理的におかしい
「一般の製造業でも、最賃や解雇規制を守っているのは大企業だけ、そういう規制を強化すると大企業が雇用を減らし、契約労働者が増えるだけ」っていう文章は、論理的におかしい。
大企業が最賃や解雇規制を守っているのであれば、規制を強化しても大企業には影響がないはず。これを言うのであれば、「最賃や解雇規制を守っていない中小零細企業が、規制強化を免れるために、労働者を委託契約社員(この御仁は「契約労働者」と思い込んでいる。)に転換して、委託契約社員が増加するだけ」と言わなければおかしいでしょう。現に、この御仁が経営する中小企業は、社員全員を委託契約にしているのですから。
■だからといって
中小企業は別として、零細企業の経営者の中には、法的な知識がないために、このような明らかな誤りを発言する人が、まだまだ多いのが現実です。
だからといって、私は、この御仁のことを「彼の頭が悪いのはしょうがないが、せめて知らないことには口を出さないほうがいい。」なんていうつもりは毛頭ありません。
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