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2012年11月27日 (火)

「右翼」と「左翼」の区別に関する(私の)常識

■右翼と左翼の常識
右翼左翼の区別って、私の世代では、左右の立場の違いがあっても、一定の共通の了解事項があったと思います(軍隊=「暴力装置」と同じように)。もっとも、この常識が成立していたのは、私の世代だけなのかもしれません。

ちなみに、「右翼」や「左翼」というのは「悪口」ではないのです。政治的な傾向や思想の特徴を示す便利な用語で、世界中で使われている政治用語です。そして、左翼は「左翼」と呼ばれても、別に怒らないでしょう。右翼も「右翼」と呼ばれても、怒らないと思います。どちらも胸をはって、「そのとおり。それが何か?」って言うと思います。


■第1の分岐点<王制か、民主制か>
周知のごとく、フランス革命(1789年)にあたって、議会での席の配置で、王党派が「右翼」、革命派(民主主義派)が「左翼」と呼ばれるようになりました。この18世紀の分岐点は、王制か民主制かです。

しかも、王党派の王制を正当化する根拠は、王権神授説ですからキリスト教です。つまり、右翼は、「王様と宗教」が大好き。貴族や僧侶、地主、官吏、軍人が右翼の本流でした。街宣車を走らせるのが右翼ってわけではないのです。もともと、右翼って上流階級の人々の考え方です。

もっとも、今は民主主義体制がヨーロッパや日本で確立しているので、この古い分岐点は相対化されています。日本では、「天皇制」と「国家神道」(靖国神社を含む)が「本当に大好きな人々」を普通「右翼」と呼べます。これは世界的な判断基準からして、何らおかしなことはありません。


■第2の分岐点<誰の目線で考えるか>
「誰の目線で考えるのか」が、左翼と右翼では大いに異なります。たぶん、ここが両者が最も相容れないところだと思います。

右翼は、自らと同じ民族や国民の目線で考えます。国家の独立と主権の維持が右翼の崇高な使命です。自らの祖国や民族、国民に至高の価値をおくのです。いわば「身内」中心主義です。外国人全般に対して警戒心が強い(欧米では移民排斥。日本では、在日韓国・朝鮮人排斥となります。)。日本人であっても、左翼や少数派に対して、「非国民」とか「日本人じゃない」などと排他的になります。


左翼
は、虐げられた庶民や民衆、つまり人民の視点で考えます。ですから祖国や民族の目線ではなく、金持ちや権力者などに支配される(警官に小突かれたり、横暴な上司に怒鳴られ扱き使われる)民衆の目線で考えます。そして、外国人であっても、外国の権力者・支配者に抵抗する民衆に共感し、応援します。


■第3の分岐点<政府が貧困・福祉対策を行うべきか、個人の自助努力か>
19世紀から現代にかけては、社会保障政策・労働政策が左翼と右翼の分岐点になります。

民衆の貧困・雇用・福祉を改善するため、政府が積極的な政策を行うべきか否か。例えば、労働者を保護するために労働基準法などの労働者保護法や社会保険・労働保険、年金制度の導入に賛成するかどうか。現代では、政府の財政出動はどのような分野に行うべきかなどです。

政府の雇用対策や福祉政策の実施を積極的に賛成するのが左翼。なお、19世紀末から20世紀初めにかけては、さらに社会主義計画経済を目指す社会主義運動(共産主義運動)が左翼の中心となった。ただ、ソ連が崩壊した後、この共産主義運動は解体しました。


このような施策を政府が行うことに反対するのが右翼。右翼も救貧対策などは否定しませんが、それは保守的な温情主義の発露です。要するに大金持ち(ビル・ゲイツとか)やキリスト教会の寄付などの善意に委ねる方向性です。右翼の立場の人の多くは、曰く、「格差はいつの時代にもある。」「貧乏人を甘やかすな。」「自助努力を促すべきだ。」「生活保護は怠け者をつくる。」等々


■第4の分岐点<国家による戦争に価値を認めるか否か>
戦争観も右翼と左翼では、大きな違いがあると思います。


右翼
は現実主義者ですから、国際関係とは各国家が自国の国益を追求する「弱肉強食」関係にほかならないと考えます。何よりも、右翼は国家(祖国)や民族に至高の価値をおきますから、植民地や市場獲得のため、あるいは自国領土を奪還するための戦争を価値あるものと位置づけます。軍隊や軍事力行使を担うことは、崇高な国民の任務である考えます。


左翼
にとっては、帝国主義戦争や植民地獲得戦争などの戦争は、政府や金持ちの支配層が自らの利益のために、労働者や農民を動員して他国の兵士と殺し合わせるものにほかなりません。したがって、国家による戦争に反対します。ただし、植民地解放のための武力闘争や民主主義国家の独立をまもるための自衛戦争には賛成します。そして、自国の正規軍が敗北したとしても、民衆が主体的に武器をとって戦うことを讃えます(スペイン市民戦争の国際義勇軍。レジスタンス闘争。パルチザン闘争。アジア、アフリカの植民地解放戦争)。



なお、日本国憲法9条を根拠として徹底的な非武装主義を標榜する日本の旧社会党的左翼は、世界的に見れば例外的な左翼党派です。フランスの左翼からすれば、それは平和主義などでなく、単なる敗北主義として批判するでしょう(戦争回避のためにナチスと融和路線をとった弱腰の政府のようなものであり、かえって戦争を招くことになったと。)
ちなみに、戦後日本では、敗戦により米国に従属させられたにもかかわらず、右翼は反米闘争ができませんでした(三島由紀夫はこれに反発して決起した唯一の右翼だと思います)。他方、左翼は、反米軍基地闘争、安保反対闘争やベトナム反戦運動を行いました。これは平和運動でしたが、ある意味では、米国への抵抗であり、「愛国的」運動という側面(代償行為)がありました(小熊英二著「民主と愛国」)。



■右翼と左翼の相対化、右派と左派
現代では、右翼と左翼の対立も相対化しています。

今更、民主主義を否定して、王政復古を唱えて反米闘争を訴える右翼(これは極右)は、さすがに超少数派でしょう。また、プロレタリアート独裁を掲げて暴力革命で共産主義を目指す左翼(これは極左)も、超少数派です。
今や、左翼も右翼も相対化しています。



現代日本は、日本国憲法の法的有効性を認めて「象徴天皇制」を容認するという枠組みの中で、右翼や左翼の配置が決まります。


この枠内で、上記の分岐点ごとに濃淡がある各勢力(各党派)が存在しています。日本国憲法体制を容認し前提とする以上、右翼や左翼の分岐点の対立は薄まり、相対化しています。そこで、右翼でなく右派、左翼でなく左派と呼んだりします。でも本質的には、右翼と左翼の特徴と変わりありません。

■中道右派、中道左派、そして右翼
自民党の保守本流は、「自主憲法」を事実上棚上げし、自衛隊の「専守防衛」路線をひき、集団的自衛権行使に慎重です。また、民主党主流派(野田、菅、仙谷、前原ら)は、日本国憲法を法的に容認し、親米路線をとり、自由主義的な経済政策と保守主義的な福祉政策をとります。これらは両方とも共通性があり、「中道右派」です。


これに対して、社民党から分離して民主党に合流した勢力は「中道左派」です。国民の生活が第一は「中道右派」でしょう。


ちなみに、オバマ大統領は、この基準で言えば、「中道左派」でしょう。


そして、共産党や社民党は当然のことながら、左翼です。

安倍晋三自民党総裁は、上記の4つの分岐点から見れば、どこから見ても立派な「右翼」だと思います。


また、石原慎太郎日本維新の会代表は、何しろ、「日本国憲法を法的に無効」と考え、「天皇主権の大日本帝国憲法が法的には有効だ」という奇矯な見解ですから、安倍自民党より、はるかに右です。上記基準から見れば、極右に近いでしょう。なお、石原氏が、本気で「憲法破棄」を言っているのであれば、立憲主義を破壊する主張です。憲法改正論者は、まだ立憲主義に立脚しています。石原氏の「憲法破棄」論は、憲法改正手続も不要との主張ですから、大日本帝国憲法がまだ生きているというとんでも議論です。自衛隊の統帥権は天皇が握っており、シビリアン・コントロールなどは「統帥権干犯」で違法ということになります。

以上が、私が考える「右翼と左翼」の区別に関する常識です。ネットの住人にはきっと理解されないのでしょうねえ。

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2012年11月25日 (日)

読書日記 「平成史」小熊英二編著

読書日記 「平成史」小熊英二編著 河出書房新社
2012年10月発行
2012年11月読了


■もう「平成史」か!
平成元年は1989年。もうすぐ24年たとうとしています。
個人的には、平成元年(1989年)というと、30歳、既に一人目の子どもが2歳となっていました。
私は高度経済成長の時代に生まれ育ち、プラザ合意後の円高不況後、バブル景気前の1986年に弁護士になった世代ですから、自我の確立時期、ものの考え方、職業生活、結婚・家族生活を含めて、典型的な「昭和の時代」の男性です。

ですから、新婚当初は仕事から帰れば、妻が三つ指ついて、「お帰りなさいませ。お風呂の前に、夕食を召し上がりますか。」と迎えてくれました。これには感動したものです(私の両親は共稼ぎで、そのような言葉は聞いたことがなかったのでね)。

その後、「平成」になった以後は、独立した職業人として働き、父親として生きてきた「同時代」にほかなりません。あらためて「平成史」と銘打たれると感慨が先にたちます。


■大著「<民主>と<愛国>」を書いた小熊氏の平成史
「平成史」は、「政治」(菅原琢氏)、「地方と中央」(中澤秀雄氏)、「社会保障」(仁平典宏氏)、「教育」(貴戸理恵氏)、「情報化」(濱野智史氏)が執筆し、小熊氏が、「総説」と「国際環境とナショナリズム」を執筆しています。(なお、貴戸氏が「教育」の項で、「メンバーシップ主義」の用語を使っています。「メンバーシップ主義」かあ…。これは別に考えてみたい論点です。)現在の「立ち位置」を考えるのに良い本です。


■「昭和の時代」 日本型工業化社会 
小熊氏は、昭和の時代に日本型工業化社会が1975年頃に確立し、その後、工業化社会が衰退・変容し、ポスト工業化社会に変化しており、それに伴い社会意識が大幅に変遷しており、人々の現状認識がこの変化に追いついていないというトーンです。
1975年前後に完成した日本型工業化社会は、大企業を中心として大量生産が行われて経済成長が推進される。雇用が安定し、男性正社員の労働者が中心となり、労働組合が組織され、賃上げが達成される。高い賃金により大量生産された商品が購入されて、企業の収益と労働者の高賃金が達成された。
他方で、女性は、このような男性労働者と結婚して、専業主婦となり、子育てが一段落すれば家計補助的なパート労働者となる。性別役割分担意識が男女ともに強固に残っている。また、中小企業・零細事業では、大企業の下請として臨時工やパート労働者の雇用を吸収していた。いわゆる二重構造、第二労働市場が広く存在していた。
これらは、冷戦体制という国際環境が日本に有利に働いたこと、大企業の景気と雇用安定が良かったこと、日本が若い人口を多く抱えたこと、地方(農業)や中小企業への保護政策が行われたことによって問題点が周辺化され目立たなかった。
■「平成史」 ポスト工業化社会へ
ポスト工業化社会の流れの中で、情報技術の高度化で、現場の単純業務で製造ができるようになり、非正規労働者ですみ、製造業は発展途上国に出て行く。多品種少量生産と個別配送を実現する。低賃金不安定労働者が増加し、正規雇用が減少し、労働組合は衰退する。財政赤字で地方も衰退し、中央政府も「国土の均衡ある発展」という目標を放棄し、「地方は、人材、食料、水、エネルギーなどを大都市に提供する」という役割に位置づけられる(2008年「国土形成計画」)。
■現代日本の二つの世界
公務員および大企業の正規雇用労働者とその家族、そして、農民と自営業者といった旧来の日本型工業化社会の構成部分は、保守主義レジームに近い社会にすんでいる。(保守主義レジームとは、企業、家族、労組、地域などの共同体を基礎にした福祉制度をもうける体制です。)

一方で非正規雇用労働者など、ポスト工業化社会への変化に対応させられている部分は、自由主義レジームに近い世界に住んでいる。(自由主義レジームとは、自由市場と個人責任を重視する。要するに自己責任論)


■社会保障
社会保障の問題点として、次のように述べています。

「健康保険と年金は比較的充実しているが、雇用保険や職業訓練や子育て支援などは手薄く、現状では7割以上の社会保障費が高齢者向けに費やされている。【病人と高齢者以外は自分で職を探せばいい、女性は退職して育児をすればいい】というコンセプトであり、自助努力を重視する自由主義的指向と、家族規範を初めとした保守主義的な指向の混交体である」

「平成史」を一言で表現するなら以下のようになろう。「平成」とは、1975年前後に確立した日本型工業化社会が機能不全になるなかで、状況認識と価値観の転換を拒み、問題の「先延ばし」のために補助金と努力を費やしてきた時代であった。

■対抗軸 「社民主義」はなぜ支持されないのか
本来は、昭和の時代を貫いてきた保守的なレジームや自由主義的レジームに対抗を期待されるのは、社会民主主義だったのでしょう。しかし、日本は、社会民主主義や社会主義的改良派の勢力が育たなかった。国民から圧倒的に支持されていない。「左翼」は、今や過激派や独裁主義の代名詞のようです。この点が西欧とは大きな違いです。
小熊氏は、「社会党は、社会民主主義の党としてでなく、憲法9条を擁護する平和の党として集票していた。… 世代交代と戦争の記憶の衰微によって、憲法9条を対立軸は主要な争点にならなくなった」とします。

「昭和の時代」には、マルクス思想は思想や社会に興味のある人間には大きな影響力を持っていました。にもかかわらず、旧ソ連や中国、北朝鮮の思想と誤解されやすい「共産主義」はともかく、何故に「社会民主主義」が力を持てなかったのかは、あらためて考えてみたい論点ですね。まあ「協会が悪い」とか、「戦前の社民がファシストに協力した」とか、いろいろ出てくるのでしょうね。

この当たりは、松尾匡氏の「新しい左翼入門」が斬新な問題提起をしていました。また、後藤道夫氏や渡辺治氏も論だてしていましたね。再読してみます。

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2012年11月23日 (金)

親米右翼政党と反米右翼政党、そして自民・公明・民主の大連立でしょうな

■親米右翼 安倍晋三「自民党」総裁


自民党の公約は、「憲法改正により自衛隊を防衛軍として位置づけます」と明記あいています。安倍自民党総裁は、民主党のマニフェストと違って、できることを挙げたと述べていますから、本気なんでしょう。


■安倍総裁と野田首相の「国防軍」論争(?)
憲法改正して自衛隊を国防軍にと述べた安倍総裁に対して、野田首相は、「すぐにできないことを言うな」と批判。この批判が、「すぐにできもしないくせに」というので野田首相の本音があらわれています。つまり、自衛隊を国防軍にするという方向性には反対していないのですから。


■反米右翼 石原慎太郎「日本維新の会」代表
石原慎太郎氏が昔から「Noと言える日本」など反米を訴えていました。また、日本維新の会の代表に就任してからも、日本が「米国の妾」であることに悲憤慷慨(この点は私も同感ですが)。
さらに、石原慎太郎代表は一貫した「核武装論者」です。しかも、女性蔑視や人種差別発言も多く、どこから見ても、立派な「右翼民族主義者」であり、「極右」政治家です。現憲法の有効性を否定して「破棄すべき」との立場にたっていますからね(三島由紀夫ばりのクーデター思想です)。世界中に立派に「極右民族主義者」として名前を売っている政治家です。いわば、フランスの極右・国民戦線のル・ペン党首や、オーストリアの極右・自由党のハイダー党首なみでしょう。
衆議院選挙で「日本維新の会」が躍進すれば(躍進しそうです)、世界的に「いよいよ日本に極右民族主義政党の登場」と報道されることでしょう。
橋下大阪市長は、「石原慎太郎を総理大臣にしたい」と述べていましたが、本気なのかしら(この人は、どこまで考えて発言しているのか分からへん人や)。
石原慎太郎を支持する人は、本当に中国と尖閣諸島で軍事衝突も辞さないつもりなのでしょうか。石原総理でなくとも、あと3~5年、10年以内に、尖閣諸島での日本と中国の武力衝突は十分ありうる。なお、この可能性を考えて、いわゆる護憲派も安全保障政策を提案し対策をたてるべきでしょう。
石原日本維新の会が躍進して、石原総理が実現したら、この暴走老人は「かっとなったら何するか分からない」傾向がありますから、突発的な軍事衝突がおきるかもしれない。中国を無思慮にあれだけ刺激し、結果的に日本が経済的に大打撃を受けたのは石原氏のおかげです。(もっとも、中国を挑発して、日本の世論を右傾化させたということまで、彼は計算していたのでしょうか? そこまで考えていたとは思えないけど。)
そこで、米国と日本の財界は、石原慎太郎を総理大臣や政権入りには反対すると思います。自民党や公明党は、石原慎太郎代表の日本維新の会と連立しない(できない)のではないでしょうか。これは参議院での政党の議席から見ても言えそうです。


■衆議院選挙後は、自民・公明・民主党の大連立へ
衆議院選挙では、第1党が自民党であることは間違いありません。民主党は壊滅的打撃を受けることも間違いない。日本維新の会が公明党の上回る勢力になるかもしれません。
しかし、参議院では、自民党(83議席)と公明党(19議席)だけでは過半数(122議席)には20議席余りも達しません。衆議院の選挙がどうなろうと、参議院の第三極の議席は、日本維新の会+たちあがれ(7議席)、みんなの党(8議席)と連立しても、過半数には届きま
せん。
参議院との「ねじれ」を解消しない限り、自民党も、結局、何も政策を進められません(それで、安倍晋三総理は、追い詰められて退陣したんだから)。民主党は、これを睨んで、第三極の勢いを削ぎ、なんとか参議院での議席数を梃子に、選挙後に自公民連立に持ち込もうと考えているはずです。
この三党連立をやりやすくするために、民主党執行部は、TPP賛成を党首が一方的に決定し、脱原発を薄める政策をとり、これに反対する議員を離党させていると見て良いでしょう。


■本格的な右翼政権(第2次安倍政権)の誕生へ
とはいえ、岸信介内閣以来の、本格的な右翼政権が誕生することになります(第1次安倍晋三内閣よりも右翼的)。外交や安全保障が右翼的で、経済や雇用・社会保障分野で、新自由主義路線が大幅に復活しそうです。内政全般は権威主義的になるでしょう。
民主党政権下で不十分とはいえ、少し進んだ労働立法は、再び「冬の時代」を迎えることになるのでしょう。

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2012年11月14日 (水)

カミカゼ解散・選挙

■近いうち 16日解散

今日、トンネルじん肺救済法の件で、公明党の漆原良夫議員や民主党の細川律夫議員に、原告や家族会と一緒に要請に行きました。丁度、午後4時頃です。
そのときに漆原議員から「16日に解散だよ。」と聞きました。
■民主党の演出
夜、日本代表がオマーンに適地で勝利したのを確認してから(二点目を岡崎が良く入れた。ザックは守りに入っていたのに、遠藤のスライスがすばらしかった)、政治ニュースを見ました。
自民党安倍晋三総裁(衆議院議員)と野田総理の党首討論をテレビで見た感想は、野田総理が押していますね。安部総裁は、「約束するんですね、約束するんですね。」といういボーイソプラノ的なうわずった声で興奮気味で押し込まれている様子がありあり。野田首相も高揚している風ですが、相当の覚悟で臨む気迫を感じました。
「定数削減に自民党は応じるのか」という迫り方も、議員が多すぎると思っている国民にとっては、民主党のアピールが功を奏しています。自民党の連用制が複雑だからといういい訳は、連用制も併用性も並立制の違いも理解できない国民にとっては、わかりにくい。
あんなに質の悪い国会議員なら、こんなに多人数はいらないと思うのは、国民の実感でしょうね。
諸外国と比較して、人口比で日本の国会議員が相対的にみて多数のわけではないということは理解していますが、私でも、あんな訳の分からない国会議員の数は多すぎるとおもわずにはいられません。
原発問題も、自民党は、原発推進の立場、民主党は30年後とはいえ脱原発をアピールしてますところで、。脱原発派の内部で、<即廃止か、何年後廃止か>で争って、票をわけて原発維持派・推進派が勝利することだけは避けてほしいものです。
防衛政策も、自民党の右翼民族主義の自主憲法制定に対して、民主党の現憲法擁護(でも、解釈改憲で集団的自衛権容認)との対立。第三極の石原氏や橋下氏の右翼民族主義との違いもアピールしています。しかも、すべて対米従属路線で、安保容認で、多数派の国民
に安心感を与えます。
この局面で、民主党の反転攻勢を演出したことは間違いないです。
これも所詮、日本的な誤魔化しですが、このような演出がけっこう国民受けするのも日本の実態ですからね。誰がシナリオを書いたのでしょうか。近いうちにの意外性のある展開に感心しました。
■都知事選
12月16日投票だと、東京都知事選と重なりますね。
日弁連前会長の宇都宮先生が都知事選に立候補しています。
市民派の支持を受けた候補で、脱原発統一候補になれば、いい線にいくように思います。
私は、弁護士ということもあり、宇都宮さんの知事当選を期待しています。

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2012年11月 1日 (木)

福島第一原発 関電工の労働安全衛生法違反

■関電工を労働安全衛生法違反で告発

11月1日午後1時に、厚生労働省の記者クラブで記者会見をしました。

ニュースで流れています。

NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121101/k10013179311000.html

東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2012110102100003.html

記者会見で報告した概要を張り付けておきます。
                  
1 事案の概要

発注者:東電→ 元請:関電工→ 1次下請:K電設 → 2次下請-労働者                                  

(1) A氏は、関電工の二次下請である企業に雇われ、福島第一原発事故があった2011年3月11日以降の緊急作業に従事していた。
                                                                              
(2) 2011年3月24日、A氏は、関電工の指示により、同僚と福島第一原発の3号機原子炉タービン建屋地下に電源ケーブルを敷設する作業を担当することになった。現場には、関電工の社員2名と一次下請のK電設の労働者1名、二次下請けのA氏と同僚2名の計6名で作業現場に赴いた。

(3) タービン建屋地下の作業現場に入ると線量計の警報が鳴ったが、関電工の社員は、誤作動の可能性があると無視し、作業の継続を指示した。地下に「たまり水」があることを発見したが、関電工の社員2名とK電設の社員1名は作業を中止せずに、「たまり水」に入って作業を行った。その結果、この3名は最大220ミリシーベルトの放射線被曝を受けたという。A氏ら3名は「危険である」として、関電工の社員の指示を拒否して「たまり水」には入らなかった。

(4) 同現場には、東電柏崎からの応援作業チームが別の作業のために現場にいた。このチームが放射線量を測定したところ、毎時400ミリシーベルトの高い放射線を確認したので、同チームは即座に撤収した。しかし、関電工のチームに対しては、撤収するように指示をせず、そのまま作業の指示をした。

2 問題点

(1) 関電工は、労働安全衛生法(安衛法)22条2号、31条1項及び電離放射線障害防止規則7条2項に基づき、下請け労働者についても年間被曝線量を超えないよう防止する義務があるにもかかわらず、これに反したものである。よって、同法119条1号に基づき処罰されるべきである。

(2) 原子力発電所の作業、福島第一原発での緊急作業も含めて、重層的下請構造の下で、多くの下請労働者が働いている。福島第一原発では。、今後も長期間にわたって高線量下での作業に多数の下請労働者が従事することは不可避である。元請企業や下請企業だけに安全管理や雇用管理を委ねていては、下請労働者の安全を確保することはできない。このような重層的下請構造にある原発事業においては、発注者である東京電力に直接に下請労働者の安全確保に責任を負わせるべきである。

(3) 安衛法31条1項は、特定事業(安衛法15条1項)を自ら行う発注者に対して、下請労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じる義務を課している。これに反すれば注文者に罰則が適用される(安衛法119条1号 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金)。

(4) 現在の特定事業に関する政令においては、電力会社が行う原子力事業は、特定事業に該当するかは不明確である。ついては、原子力発電事業について、安衛法15条の特定事業に該当することを政令にて明確に定める必要がある。
  東京電力などの電力事業者に、下請労働者の安全管理や雇用管理について直接の責任を負わせることが極めて重要である。

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日本労働弁護団の原発労働対策プロジェクトチームで申告や告発したケースでは3件目です。他の二件も概要をまとめて次のとおりアップしておきます。労基署及び労働局が現在調査中です。

■多重下請、偽装請負、ピンハネ事件

1 事案の概要

(1) 福島第一原子力発電所復旧作業向け契約の締結
   九州在住のA氏は、2011年6月初旬、前田工業から、福島第一原発の瓦礫撤去作業の仕事をしないかと誘われ、福田工業のF氏に紹介された。F工業からは、日当1万1000円と言われたが、M工業と交渉して、日当1万4000円とすると口頭で回答を得た。その後、2011年6月29日、佐世保市内の(株)大和エンジニアリングサービス(以下、「大和エンジニアリング」)の事業所に集合して健康診断を受け、翌日には作業の教育を受けた。その際に、東京電力福島第一原子力発電所構内復旧作業向け契約書」を締結した。同契約書には、大和エンジニアリング(使用者:甲)代表者とA氏(被用者:乙)とが契約当事者と明記され、「賃金については、甲・乙双方で締結した金額とし、取り決めた支払い日に毎月支払うものとする」、「労働時間等については、労働基準法を遵守する中において甲の指定した時間とする」などと定められていた。

(2) 福島第一原発での作業
   A氏は、2011年7月1日に福島第一原発に到着し、日栄動力工業(株)の担当者から原子炉建屋内作業の説明と安全教育を受けた。そして、高線量作業要員として福島第一原発の建屋内の作業に7月末頃まで従事した。現地では、大和エンジニアリングの正社員の現地責任者のもと、A氏を含めて約20名くらいが宿舎に泊まり込んで作業に従事していた。実際の原発建屋内では、日栄動力工業(株)の社員の指揮で作業を行っていた。

(3) 日当の約束違反と危険手当のピンハネ
   A氏は、大和エンジニアリングの正社員から、正社員は危険手当として一日2万円が支払われていることを聞いた。A氏が大和エンジニアリングに危険手当の支払いを要求したが、「創和工業や福田工業が支払うかどうかで、大和エンジニアリングは支払わない」と言われた。結局、前田工業からは日当1万1000円しか支払われなかった。そこで、A氏は、日当も削られ危険手当もピンハネをされている以上、仕事は続けられないと考えて離職した。

東京電力:発注者
 ↓
日立プラントテクノロジー:元請
 ↓
日栄動力:1次下請
 ↓
大和エンジニアリング:2次下請 給料+危険手当2万円
 ↓
S工業
 ↓
F工業
 ↓
M工業
 ↓
労働者   日当1万1000円のみ。危険手当なし                                                                         

2 労働基準法違反で申告

(1) 大和エンジニアリングとの直接労働契約の成立するとして賃金と危険手当を請求。

(2) 大和エンジニアリングは、A氏は、S工業からの派遣労働者として受け入れたと主張し、F工業、M工業の介在は知らないと主張。

(3) しかし、A氏はS工業は知らず、派遣労働契約を締結した事実はない。

(4) 大和エンジニアリングとの直接労働契約成立するとして労基法24条違反で申告するとともに、派遣法違反、職安法違反で申告

■ 鉛カバーによる被曝隠し事件

1 事件の概要

(1) 2011年11月中旬、人出し人夫から「福島第一原発で働かないか?」と声をかけられた労働者約10名が全国から福島に集められ、現場ではビルドアップ社の役員から指揮命令を受け、作業した。

(2) 11月30日、ビルドアップ社の役員は、原発構内において、原発労働者らに鉛カバーを作るように指示した。

(3) 翌12月1日、Jビレッジにおいて、ビルドアップ社の役員は原発労働者約10名を集合させ、「防護服を切って、APD(警報付ポケット線量計)の前に鉛板のカバーを装着しろ」と指示した。さらに、役員は「装着するのが嫌なら、仕事をさせない」と告げた。

(4) 当日、4名の原発労働者は、鉛カバーを装着して現場作業を行った。一方で、装着を拒んだ3名の原発労働者は役員から「今日は宿舎に戻れ」と命じられ、結局3名全員は雇止めとなった。

(5) 2012年7月17日、原発労働者から相談が寄せられ、原発労働PTが代理人となって、富岡労働基準監督署・福島労働局に違反是正申告を行った。

(6) その数日後、マスコミ各社で「被ばく隠し事件」が報道されるに至った(添付資料:7月21日付朝日新聞記事抜粋)

2 「特定事業者」である東京電力に対する違反申告

(1)原発労働PTでは、富岡労基署に対し、下請負人であるビルドアップ社による安衛法22条2号及び電離則8条1項違反を申告するだけにとどまらず、*東京電力に対しても是正措置を求めた。
  * 東京電力は、原子炉建屋の建設物、設備関係の工事を自ら行うものであり、同時に、建設物や設備を請負人に発注する注文者であり、建設業に属する事業(安衛法15条1項の「特定事業」)を行う者に該当する。 したがって、東京電力は、福島第一原発において建設業の仕事を自ら行う注文者として、下請の労働者の労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない義務を負っている(労働安全衛生法31条1項)。

(2)福島労働局には、ビルドアップ社による偽装請負(職安法44条違反)を申告した。

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