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2012年8月 5日 (日)

労働契約法(有期労働契約)一部改正成立

■有期労働契約に関する労働契約法一部改正案が成立

参議院本会で通りました。労働弁護団としての声明を発表しました。

一部の労働組合や政党が、「5年経過前に有期労働契約を雇止めを促進する法律だ」とか、「労基法有期契約の3年規制を5年に規制緩和するものだ」(?)とか批判をしてきたものです。

確かに、5年前に雇止めをしてくる恐れが強いのですが、法の趣旨としては、有期契約を反復更新して長期に使用するという濫用的運用を規制し、無期契約とすることを促進することを目的とするものです。ですから、無期への転換を嫌うだけの理由で雇止めをすることは法の趣旨に反している行動です。

これを労側が、「5年前に雇止めを促進・許容する法律」と今になっても決めつけることは、自分で自分の首を縛ることになります。そのような使用者の濫用や誤解こそを、労働側が是正する運動をしなければなりません。

そもそも、5年経過して無期化することを回避するためだけの雇止めは、改正法19条の雇止めの法理で無効となると思われます。

■有期を理由にした不合理な労働条件の改善を

改正法20条は、有期を理由にした不合理な労働条件の格差は違法無効となることを明記しました。これを活用して、今後、有期契約労働者の労働条件の不合理な格差をいかに是正していくことができるのか。

例えば、最近報道された福島原発労働者の場合ですが、下請企業の正社員であれば、一日2万4000円の危険手当が支払われているのに、その下請に雇用された有期契約労働者は、日当1万1000円のみで危険手当が払われません。このような場合には、不合理な格差として、未払いは違法となります。いろいろ活用できる規定です。

労働弁護団としても、労働組合と協力して、この取り組みを法律施行前後で大きい取り組みを行いたいと思います。

■労働弁護団声明

  声     明
            -労働契約法一部改正の法律案(有期労働契約)成立にあたって-      
                                                               2012年8月3日
                                                         日本労働弁護団幹事長 水口洋介
 本日、参議院本会議において、有期労働契約に関する労働契約法一部改正の法律案が成立した。
 この改正法の概要は、①有期労働契約が更新されて通算契約期間が5年を超える場合の期間の定めのない労働契約への転換(改正18条)、②有期労働契約に対する判例法理である雇止め法理の成文化(改正19条)、③期間の定めのあることによる不合理な労働条件の禁止(改正20条)の3点である。
 これまで労働弁護団では、2009年10月28日に有期労働契約法制立法提言を公表するなど、有期契約労働者保護のためには、有期労働契約の締結事由を合理的な場合に限定する規制(いわゆる「入口規制」)を繰り返し求めてきたところである。今回の改正は、この入口規制を導入しなかった点や、通算契約期間に算入されない空白期間を導入した点で、不十分なものとなったことは遺憾である。
 とはいえ、今回の改正法は、有期労働者の雇用の安定と不合理な処遇改善に向けた積極的な面を有しており、その積極面を活用する運用と実践が求められている。
 第1に、①改正18条の規定は、有期労働契約の反復更新による濫用を防止して、期間の定めのない労働契約への転換を促進し、有期労働契約者が正社員へと転換するための基盤となる規定である。この改正18条の趣旨は、有期労働契約の濫用を防止して、期間の定めのない労働契約に転換することを促進するものにほかならない。
 ところが、今回の改正により、有期労働契約を5年以上反復更新することが禁止されたと誤解した使用者や、無期転換を免れようとする悪質な使用者により、通算契約期間到達前に雇止めが行われる危険性が高い。しかしながら、この改正18条は、有期労働契約の濫用を防止し、期間の定めのない労働契約への転換を促進する趣旨の規定であるから、このような雇止めは断じて許されないし、このような雇止めが行われたとしても、その雇止めは②で実定法化された雇止め法理により無効となると言うべきである。この改正18条の趣旨を正しく周知徹底していくことで、期間到達前の雇止め誘発といった事態を防止しなければならない。
 第2に、②改正19条は、雇止め法理について、雇止めされた労働者が更新を遅滞なく申し込まなければならないなどと定められたが、その趣旨は、確立された判例の雇止め法理を忠実に成文法化したものに過ぎず、この改正により、現在の判例法理は、何一つ変更・後退されないことが国会の審議において確認されている。雇止め法理の成文化に伴い、従来の判例法理が変化すると解釈されてはならない。
 第3に、③改正20条は、これまで我が国で放置されてきた、労働契約の期間の定めを理由とする不合理な処遇格差を禁止する私法上の効果を有する規定であることも国会審議で明らかにされた。改正20条は、有期契約労働者の労働条件を改善する有効な規定である。したがって、この規定により有期労働契約を理由とする不合理な処遇が解消されるよう、使用者に対して周知徹底されねばならず、また、労働者側は、この規定を積極的に活用して、有期契約を理由とした不合理な格差を是正する取り組みを強めることが求められる。
 最後に労働弁護団としては、今回の改正の趣旨を正しく周知徹底させ、改正18条の雇止めの誘発という副作用を防止するための取り組みを強めると同時に、改正法を活用して有期契約労働者の権利擁護のための活動を一層強める決意である。また、今後も引き続き、有期労働契約の入口規制が実現されるよう強く求めていくものである。

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