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2012年6月16日 (土)

福島第1原発緊急作業の原発労働者の健康管理

■福島第1原発の緊急作業

福島第一原発の復旧作業を担当した下請労働者2名の方からの相談を受けています。

一人は、2011年3月11日以降の緊急復旧作業を担当した下請労働者です。緊急対応作業にて訳20ミリシーベルトを被曝し、これ以前の数年にわたり全国の原発の作業に従事してきたものとあわせて累積被曝量が30ミリシーベルトを超えます。

30ミリシーベルトを超えると、原発の下請企業も雇用しなくなり、この労働者も、それまでの原発下請企業から仕事をもらえなくなったということです。しかも、その原発作業従事者は、どうやら下請企業からは非労働者(個人請負者)扱いをされています。

■厚労省の指針

厚労省は、「東京電力福島第一原子力発電所における緊急作業従事者等の健康の保持増進のための指針」を発表しています。

○緊急作業従事者等には、国が設置するデータベースへの登録証が送付され、国の支援窓口に登録証を提示することにより、被ばく線量や健康診断結果等の記録の写しを受け取ることができる。
○緊急作業における被ばく線量が 50mSv を超える者は、被ばく線量等が記載された手帳の交付を受けることができる。、

しかし、私が相談を受けて、既に離職した下請労働者には、登録証は届いていません。また、50ミリシーベルト以下の低い労働者は、長期的健康管理からは除外されています。

■どっちの専門家を信用したら良いのやら

放射線障害については、最近でた新書本を読んでも異なる意見が述べられています。

東大病院放射線科准教授の中川恵一氏は、その著書「放射線医が語る被ばくと発がんの真実」(ベスト新書)で、100ミリシーベルトより低い被ばくで発がんの増加は確認されていない(科学的証拠がない)と断言しています。閾値がないとして、直線閾値なし仮設をポリシーとして安全に配慮して採用しているだけと言います。

これに対して、東大先端科学技術センター教授・東大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦氏は、その著書「内部被曝の真実」(幻冬舎)で、放射線障害に関して「100ミリシーベルト閾値論」はおかしいと批判します。放射線障害が統計的に有意に証明されたのは、チェルノブイリ事故の20年後だったとして、証明されるのを待っていては、遅すぎることを強調します。

しかし、人間の生命・健康に関しては、セーフティ・サイドに立って、予防原則のもとで、証明されていないとして、後手を踏んではいけないというのが、水俣病等の悲惨な公害被害の教訓でしょう。

少なくとも、福島第1原発に作業した下請労働者については、長期的な健康管理の対象として、検診費用を東電や国が負担するのは当然のように思います。

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