大阪市 強制アンケート開封凍結
■強制アンケート開封凍結
大阪市の業務命令による強制アンケートの開封を凍結することを、大阪市の特別顧問・野村修也弁護士が発表しました。
http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012021701001973.html
職員アンケート開封凍結 大阪市労連の申し立てで 大阪市の橋下徹市長が職員に回答を義務付けた政治活動や労働組合活動に関するアンケートについて、市長からアンケートの扱いを一任されている市特別顧問の野村修也中央大法科大学院教授は17日、回答データの開封や集計作業をいったん凍結することを明らかにした。 野村氏は凍結の理由について、市労働組合連合会が大阪府労働委員会に対して行った救済申し立ての審査の推移を見守ることなどを上げた。市役所で記者会見した。
なお、野村修也氏は、「中大法科大学院教授」という肩書きで、あたかも中立的な立場であるかのように報じられています。しかし、実際には、森・濱田松本法律事務所(日本の4大ビッグローファームの一つ。所属弁護士は優に300人を超えているでしょう。)所属のビジネスロイヤーであり、弁護士業務として大阪市から委任を受けていると報道すべきでしょう。
(別にビジネスロイヤーだから悪いと言っているわけじゃないですよ。私は労働者側弁護士で中立でありません。弁護士というのは、プロフェッショナルであり、かつ「当事者の代理人」であるという特殊な立場にいるわけです。あたかも「中立」であるかのような看板を使ってはいけない、と私は思います。)
ロースクール教授の肩書きを見ると、一般の人はその弁護士を中立的な立場だと誤解されるようです。昨今、はやりの第三者委員会の影響でしょうか。
■特別顧問の調査が免罪符になるか
労働弁護団の声明で、特別顧問が調査実施をしても大阪市の不当労働行為になると指摘ししました。
http://roudou-bengodan.org/proposal/detail/post-26.php
このような質問事項は、たとえ提出先が大阪市庁内部ではなく、野村修也大阪市特別顧問あての形式をとったとしても、本件アンケートへの回答が橋下市長名義の下に業務命令として発され、「正確な回答がなされない場合は処分の対象となりえる」と明記していることに照らせば、職員に対する懲戒処分権を有する市長が回答内容を把握することが前提とされていることは明らかである。
■「支配介入」禁止(労組法7条3号)
労働組合法7条3号において、使用者は「労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること」をしてはならないと定められています。
この支配介入の主体となる使用者とは、雇用主(本件の場合には大阪市)だけでなく、役員や管理職も、当然使用者として支配介入することを禁止されます。例えば、会社が依頼した経営コンサルタントが労組に支配介入したときに、この者が使用者といえるか等が論点になります。
■支配介入の主体
野村修也弁護士が、この支配介入の主体である「使用者」となり得るかを検討してみます。
本件アンケートについて、橋下徹大阪市長は次のように記載しています。
野村修也・特別顧問のもとで、徹底した調査・実態解明を行っていただき、膿を出し切りたいと考えています。その一環で、野村特別顧問のもとで、添付のアンケート調査を実施します。…
このアンケート調査は、任意の調査ではありません。市長の業務命令として、全職員に真実を正確に回答していただくことを求めます。正確な回答がなされない場合には処分の対象となります。
ということで、普通に解釈すれば、使用者である橋下市長の命により実態調査の実施を委託を受け、その調査結果に基づき、大阪市が職員を処分の対象とするということですから、野村特別顧問は、大阪市長から特に労働組合の所属や活動などの調査委託を受け、それを処分の対象となることを想定して報告する者として、「使用者」に該当することは明白だと思います。
■労働組合の所属、活動調査は支配介入の典型
アンケートの内容は、労働組合への加入の有無、参加の有無・程度及び労働組合に相談した経験の有無を問う(Q6、Q16、Q20)もので、典型的な支配介入行為に該当します。
民間企業では、労働者に対して、労働組合の所属や労組活動への参加、労組への考え方等を調査したことが不当労働行為として、救済命令が出されたケースは珍しくありません。
大阪市は、労働組合法が適用される非現業職員に対しても、アンケート回答するように業務命令で出されており、現業職員や現業職員の労組は、大阪府労働委員会に救済を申し立てられるケースです。
野村修也弁護士がアンケート開封を凍結したのは弁護士としては当然の措置でしょう。ただ、野村弁護士が、弁護士として、思想良心の自由侵害や不当労働行為とされるリスクを全く検討していなかったようで不思議です。もっとも、橋下市長も弁護士ですが…
■労働委員会での証人喚問
近々、大阪府労働委員会の不当労働行為の調査・審問が開始されるでしょう。追々、橋下市長や野村修也弁護士の証人喚問が課題になるでしょう。
結論のみでなく、労働委員会審理が極めて注目されるところです。
■大阪だけ、公務員だけの問題でない
これは大阪だけの問題ではありません。また、公務員労組だけの問題でもありません。労働組合をあたかも「反社会的勢力」であるかのように煽るキャンペーンの一環のように思われます(最近、全国各地で、裁判所が労働組合の宣伝行動を差し止める例が目立ちます)。全国、とりわけ東京での応援態勢をとっていきたいと思います。
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