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2012年1月 5日 (木)

遅ればせの【2011年の三大出来事】 と2012年政局の今後

1位:東日本大震災・津波の自然災害 2位:福島第1原発事故 3位:橋下氏「大阪の維新の会」の勝利

■1番目の大震災は言うまでもありません。
ただ、そのインパクトは東北だけではありません。
近い将来、東京直下型地震、東海地震などが差し迫っていることを改めて思い起こさせます。東北の復興だけでなく、その備えを行うことが緊急課題です。この震災対策に公共投資をすることは誰も反対しないはずです(財務省以外は!)。

■2番目の原発事故については既に記述したとおりです。

第3の敗戦

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2011/08/post-3c5b.html

原発対応の経過を見れば、中央官僚とエリート科学者(東大原発研究者)が、いかに愚かなのかをつぶさに証明してくれました。そして、これを徹底的に批判しきれない日本人の優しさというか、愚かさというか、曖昧さを全世界に知らしめました。

(今時の若い弁護士との会話)
私の法律事務所の若手弁護士が「原発は安全だと思っていた。教科書にもそう書いてあった。」というのです。私が、「教科書に書いてあったら余計に疑うもんだ。俺たちはスリーマイル島事故後、チェルノブイリ事故前に大学生だった世代だけど、原発が安全だなんて言う奴はいなかった。」と答えたところ、若者曰く「じゃあ先生たちは、原発を止めるために何をしたのですか。日本人みんなに責任があるのじゃないのですか。」と反論されました。…原発の電気を使っておいて、東電や政府の責任を言う資格が東京都民にあるのか、とかいう、この手の「感情論」というか、「誠実さ」、「心情論」に、弱いのが日本人の特徴なんでしょうね。

思わず、「そういう『一億総懺悔』こそ、本当の責任者を免責する論理なの。もっと戦後史を勉強しろ(一億層懺悔って知っている?)。原発政策を決定して実行した者にこそ責任があるのであって、俺たち庶民が責任を感じる必要はない。堂々と自信をもって責任者を追及したほうが良い」と説教したのですが、相手は他の人と話していて聞いていなかった・・・!しかし、このような若手が、私のような事務所に「就職」する時代なのですよねえ。

■3番目。橋下氏の勝利は今後の5年の日本の政治を決定づけたように思える

まあ、橋下氏が勝利すると思っていました。東京からあれだけ批判、非難されたら、絶対、大阪人は橋下を応援するのです(京都生まれの私にはよく判る!)。 ということを承知の上での週刊新潮が誹謗中傷したのでしょう。

■実は公務員数が欧米諸国に比較しても最少国家の日本

橋下氏の公務員バッシングですが、まったく根拠がない。日本の公務員数はヨーロッパ諸国だけでなく、アメリカと比較しても圧倒的に少ないのです。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5190.html

国家財政の下での人件費率から見ても欧米諸国と比較しても低い。ただ、一人当たりにすれば欧米から比べれば人件費は高いかもしれない。

http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2011/seifuan23/yosan005.pdf

本来、日本はもっと国民への福祉や医療、教育のサービスのための公務員、また災害対策の公務員を増やしたって何ら問題はない。

■次は民間労働者の番なんだけど。さらなるリストラへ

日本の民間労働者の人件費が他国に比べて高すぎ、しかも解雇しにくいと経営者側がつとに訴えているところです。公務員を批判している労働者たちは、次は自分たちの番なのだということを認識しているのでしょうか。中高年が簡単に解雇され、若手労働者は仕事にありつけても不安定で低賃金の非正規職場。そして労働者相互が足を引っ張りあう社会になるというのが今の日本の現実でしょうに。

■民衆「政治意識」「社会心理」の波をつかまえる政治家が勝つ

データに基づく反論は庶民の意識、社会心理に何ら影響を与えません。こんな意見は古典的なインテリ意識の上から目線であって顧みられないのが現実でしょう。

橋下氏のように、民衆の心理をつかみ、スケープゴートを仕立て上げ、虐めても誰も文句は言わない公務員を果敢に責め立てるヒーローになることが政治闘争と権力闘争を勝ち残るもっとも有効な手段。この「民衆心理」の方向に鼻がきくのが、橋下氏なんでしょう。その民衆の心理とは、ニーチェの言うところの「ルサンチマン」です。世論の波にのっかる天才・政治的サーファーなのです(小泉元首相も)。彼が、2012年以降の政治を大きく動かすのだと思います。

今年2012年4月までに予算が成立すれば、政治は一挙に総選挙の様相です。

総選挙になれば、そのときの台風の目になるのは、「みんなの党」、そして橋下氏の「維新の会」です。どう贔屓目に見ても、総選挙では民主党は敗北するでしょう(個人的には、「より悪くない」選択肢として民主党しかないと思っていますが…)。自民、公明、みんなの党、橋下グループの政権が成立する可能性が極めて高い。

自民、公明、みんなの党の政権ができれば、派遣法改正そのものがなくなるし、有期労働契約やパート法の規制強化策は実現しないでしょう。という情勢の下で、労働立法にどう対応すべきかを検討しなければなりません。この間の派遣法改正のような迷走の繰り返しは避けたいものです。

大阪での橋下氏の勝利は、今年の政治情勢を予測させる出来事であり、2012年から5年くらいの政治を決定づけた重大な現象だと思われます。

■今年こそ?

彼らに対抗できる「情理を兼ね備えた」言説を駆使できるパーソナリティをもったリーダーの出現が求められます。…なんと、私も「強いリーダー待望論」 (^-^;

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» ハシズムと対決できるか、公務員労組の真価が問われる [シジフォス]
昨日のテレビや新聞の報道は、大阪市労連の中村委員長が橋下市長に対し、「庁舎内での政治活動」のお詫びとして深々と平身低頭、頭をたれ、また握手を拒否される姿を映し出していた。勝者と敗者という構図で、負けた者には容赦しないとの独裁者ぶりだが、労使は対等という「原則」から見れば、あまりにも異常だ。しかし、公務員に対する圧倒的バッシングの流れの中で誰からも疑問に思われない。また、官は政に対して頭を下げることに何らためらいはない。ちなみに政は民に対して頭を下げ、民は官に対して頭を下げるという、日本版三...... [続きを読む]

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