読書日記 「労働法入門」 水町勇一郎著 岩波新書
岩波新書
2011年9月21日発行
2011年9月24日読了
■水町先生 ありがとうございます。
水町先生から、「労働法入門」をご送付いただきました。社会人のための「労働法入門」です。なかなか随所に工夫があり、おもしろく読ませてもらいました。
■「アダムとイブ-『罰』として課された労働」と「ルター-『天賦』としての労働」という対比
前者は、フランスのバカンスの権利につながり、後者はドイツの就労請求権につながるという説明は「なるほど」と思いました。
■日本の労働観は「家業」としての労働
これに対して、日本は、イエという共同体に結びつき、家族のための「生業」と、自分の分を果たすという「職分」の二面が合体したものと言います。なるほどね。
柳田國男によると、江戸時代の漁村や農村では、繁忙期には家族に養子をたくさん抱え込んで働かせて、繁忙期がすぎると養子を解消するという例があるそうです。近代以前は、日本では、家族が労働組織で、近代化した後、産業組織が家族的な共同体と観念されたということにつながるのでしょうか。
■集団の役割
「集団としての労働者」から「個々人としての労働者」に転換し、「労働法を労働市場での労働者をサポートする市場経済のサブシステム」と把握する菅野和夫・諏訪邦夫教授路線と、「労働者の自己決定を保障するには国家法(労働法)は重要な役割を果たすべき」とする西谷敏教授路線を紹介した上で、
水町先生は、「国家」と「個人」の間に位置する「集団」の役割を強調されます。ただ、集団は、労働組合よりも、労働組合を透明化し、開放化する法制度が必要であると指摘されます。
労働組合が、正社員を中心とした内向きの性格を持っているとすれば、そこに外からの風を入れ、外にも目を向けて話し合いができる組織に変えていく必要がある。
従来の集団的な労使関係に場合によっては透明性と開放性という新しい風を入れその息を吹き返させ、また、法律によって新たな集団的制度を作り出していくことによって、国家と個人との間に立ち、両者の能力を補う集団的基盤を作り上げていくことが、これからの日本の労働法の重要な課題となる。
労働者代表制度は是非、必要でしょうね。ただし、形をつくるだけでなく、「心」が入るかが大きな課題なんでしょうね。
■感想
労働法の歴史の中で、産業革命や19世紀の歴史の中で、エンゲルスの「イギリスの労働者階級の状態」や英国の「チャーティスト運動」が触れられないのは、やはり時代が変わったのだなあ、と感じました。
ロースクールに進学した娘に読ませてみようと思います。
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