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2011年5月22日 (日)

協同労働の協同組合法案への批判

■協同労働の協同組合法案要綱への批判声明

労働弁護団として、超党派の議員連盟が準備している「協同労働の協同組合法案要綱」に、協同組合への労働法への規制を解除するおそれがあり、安く労働者を使用する(チープレイバー)を手段になりかねないとして、批判の声明を出しました。

http://roudou-bengodan.org/proposal/detail/post-13.php

■協同労働の協同組合

この法律の理念は素晴らしいものです。

「組合員が協同で出資し、経営し、及び就労する団体に法人格を付与すること等により、働く意思のある者による就労の機会の自発的な創出を促進するとともに、地域社会の活性化に寄与し、もって働く意思のある者がその有する能力を有効に発揮することができる社会の実現に資すること」


この協同組合は、組合院である役員と、業務に従事する組合員とに別れます。前者が協同組合の管理運営に従事し、協同組合の業務に従事する組合員とに別れることになります。少人数であれば、役員と業務従事する組合員は分離することはないでしょう。しかし、この協同組合は人数や規模に制限はありませんから、100人、500人、1000人の規模になった場合に、協同で決定して、協同で働くという 自主管理的な運営はできなくなるでしょう。現に、この手のNPOで労働紛争が起こったりしています。

■法案要綱の労使関係の基本的考え方

ところが、この法案要綱の前提となる労使関係の基本的考え方では、協同労働の協同組合には、労働組合法も、労基法も適用しないとしています。

ただし、雇用保険と労災保険についてのみ労働者とみなすということにするとしています。

2011年2月23日、議員連盟において、「要綱案」が改定され、「協同労働の協同組合法案(仮称)の要綱」が議決されましたた。

この「新要綱」は、「協同労働の協同組合において就労規程に従って働く者は、労働基準法の適用事業に使用される労働者とみなすものとすること。」としています。

これを見ると、労基法が全面的に適用されるかのようにも読めるのですが、他の部分では、就労規定は、就業規則のように労基署の指導監督権限がないようにも読めます。何よりも、協同組合を使用者として、労基法、労組法、最賃法などによる規制を行うことは、注意深く、外しているように読めます。

■議員連盟は秘密裏に進めています

私は、民主党の当該議連の事務局長とおぼしき議員事務所宛に何度か電話やファクシミリで問い合わせて、上記の懸念を疑問として投げかけましたが、まるでなしのつぶてです。

ということで、上記の懸念が深まったため、労働弁護団として批判声明を出したものです。

■震災復興にも役立つとして、今通常国会の中でも自民党、民主党、共産党まで含めた全党派の議員立法で成立する予定とのことです。法案要綱の問題点も十分に審議してもらいたいと思います。

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