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2011年3月 2日 (水)

読書日記「人権としてのディーセント・ワーク」西谷敏著

「人権としてのディーセト・ワーク」 働きがいのある人間らしい仕事

旬報社
2011年1月20日発行
2011年2月28日読了

大阪市立大学名誉教授の西谷敏先生から「人権としてのディーセント・ワーク」をいただきました。

■ディーセント・ワークって?
ディーセント・ワークは、ILOが掲げている目標であり、「すべての男性と女性が、自由、公正、して人間の尊厳の保障という条件が満たされたディーセントで生産的な仕事を得られるよう促進すること」と定義されています。ただ、ディーセントって、日本語的にはわかりにくい言葉です。

■権利としてのディーセント・ワーク
西谷先生は、ディーセント・ワークを「働きがいのある人間らしい仕事」として、これは単なる目標ではなく、日本においては憲法で保障される人権として把握すべきと立論されています。ディーセント・ワークの視点から、日本の法制度、労働の実態を鳥瞰図的に審査しつつ課題と問題点を網羅的に指摘されています。

西谷教授は、ディーセント・ワークの条件として次の三つを大項目をあげます。
(1)安定的雇用
    解雇制限など
(2)公正かつ適正な処遇
    最低生活の保障と均等待遇など
(3)人間らしい働き方
    労働時間と年休、安全・健康・快適な職場環境など

■年休取得の発想の転換
個人的に大変に勉強になった点の一つは年休取得率を向上するための改善策です。ドイツにならって、年休の完全取得を使用者に義務づけるという方法を提案されています。

使用者が法定年休日数のすべてを付与させる義務を負うこと明確にし、時期については労働者の希望を尊重して使用者が決定するというドイツのような制度が一つの案である。

そのためには病休制度を整備したり、自由年休と組み合わせるような工夫が必要だとも指摘されています。このくらいの発想の転換がないと、年休取得率は向上しないでしょうね。

■連帯と団結
また、労働組合の再構築について、連帯なき団結の問題を指摘されている点です。

組合員の結集する論理と思想が「団結」だとすれば、組合員の範囲を超えた労働者を視野に入れた理念は「連帯」である。… 日本の労働組合は、組合員の「団結」が強調されても、労働者全体を視野に入れた「連帯」の思想は定着しなかったのではないだろうか。

■ディーセント・ワークと正社員と多様な正社員

ちなみに、2011年2月14日、日弁連の非正規労働者に関するシンポに、西谷先生と濱口敬一郎さんがパネリストとして出席されていました。そこでの、ご両人の主張の対立点が興味深かったです。

現在の正社員の働き方が「異常」であるとの点は両者の共通の認識です。濱口さんは、正社員というノーマル(通常)労働者のアブノーマルな働き方という表現をされていました。

これを前提として、西谷先生は、<正社員の働き方をディーセントなものにすることが先ず必要>というスタンスです。これに対して、濱口さんは、<多様な正社員形態(ジョブ型正社員=職務限定の無期契約労働者=私の理解)をつくっていくべき>と強調されました。

西谷先生は、多様な正社員は「2級」正社員(解雇制限の緩和された正社員)を作り出し、現状の正社員の一部が「2級正社員」に「降格」されるのではないかという危惧を表明されていました。濱口さんは、非正規労働者をジョブ型正社員に持ち上げるという方策だと考えられておられるようでした。

この点、両者は平行線のままだったようです。厚労省で多様な正社員についての研究会も開始されたようです。この議論も注目どころです。

ただし、今の民主党政権では何らかの労働法政策が動き出すかのどうか、そもそも民主党政権がもつのかも含めて、透明になってしまいましたが・・・。

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