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2011年1月25日 (火)

読書日記「サンデルの政治哲学」 小林正弥著

平凡社新書
2010年12月10日 初版第1刷
2010年1月10日 読了

■サンデル教授曰く、「共和主義」だぜ

トニー・ジャット著の「荒廃する世界の中で」を読んでいて、社会民主主義の話しは分かりやすいのですが、さかんに道徳の話しやアリストテレスの話しが出てきて不思議。で、この本に書いてあったことを思い出しました。

本書は、あの有名なNHKの「白熱講義」のハーバード大学教授の政治哲学者のサンデル教授の著書の解説本です。その中で、サンデル教授の「民主政の不満」の中で次のようなことが書かれているそうです。

アメリカ建国のころ、ジェファソンは自由農民が公民として共和主義的な美徳と自立をそなえた公民として共和主義政治を行える。19世紀初頭では、職人、熟練工、機械工のような小生産者にはそれが可能だと信じられた。自由労働は、賃労働と矛盾しないと思われていた。本当の奴隷労働があったので、賃労働は自由意思に基づいて行うというイメージだったのです。

ところが、職人らが、一生、賃金労働者として生きることなり、もはや自由労働ではなくなった。そこで、1830年代には、急進的な職人的共和主義が現れて抵抗した。しかし、南北戦争後の産業資本主義が発展し、共和主義的概念は捨てられ、労働運動の方も、ついに賃労働の永続性を認めて、賃金上昇、労働時間削減、労働条件改善などの要求へと転じた。これは「公民性の政治経済から分配的正義の政治経済」への大変化を表す。

■労働者騎士団「労働者共和主義」

中窪裕也教授の「アメリカ労働法」で、アメリカの労働運動の黎明期に労働騎士団(Knights ob Labor)という団体があり「理想主義的な社会改革を目標に掲げた」と触れられていました。サンデル教授が、民主政の不満のなかで労働者騎士団について次のように書いているそうです。

19世紀末、金メッキ時代と言われていた頃で、サンデルが「労働者共和主義」と呼ぶ運動が生まれた。ちょうど労働組合運動の始まりの頃で、この頃、労働騎士団(1869~90年頃)という組織が誕生した。この労働騎士団は資本家の独占的権力に反対し、賃労働が自己統治に不可欠な人格的資質ないし公民的美徳を破壊することを批判して、その廃止を目的とした。そして、生産者と労働者が協同で工場、鉱山、銀行、農業や商店を組織して倫理的で協同的な共和体(coopereative commonwealth)を形成しようという主張もあらわれた。・・・労働運動は公民的な人格形成を可能にするために一日8時間労働を主張した。

しかし、19世紀末から20世紀初頭にかけて、(ロックナー・コート期の)裁判所は、労働と賃金を交換する権利を認めて、(州が労働者を保護する目的で作った)様々な労働立法を違憲と判断するようになる。これは「資本家と労働者がそれぞれの自由意思によって結んだ契約は尊重すべきである」という考え方えで

労働騎士団は、共和主義的な自己統治に適した経済への改革を企て、賃金労働制度の廃止と協同の産業システムを作ろうとした。これは1880年代には急成長したが、協同組合制度の試みは成功せず、1890年代には急速に衰退した。

労働騎士団に代わって台頭したのがアメリカ労働総同盟だが、賃労働という考え方を受け入れている点で、通常の労働組合主義である。

サンデル教授は共通善を強調して価値相対主義のリベラルを批判するのですが、(だからこそ)共和主義的な労働者運動を評価するという側面があるのですね。

■社会主義ないし社会民主主義の思想がない米国でも

社会契約論、自由主義、そして、ロールズ的リベラル、リバタリアン、サンデルのコミュニタリアンなどなどの理念が語られています。人間社会というものは、権力と自由と平等の三次元の中で、共振や鳴動をしているということですね(「生産諸関係のアンサンブル」ってね)。理念(イデオロギー)の語られ方は違いますが、問題の実質は共通しているように思えます。

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