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2010年11月14日 (日)

新司法試験 既習者 合格率7割

■新司法試験の累積合格率

二弁の紫水会30周年記念シンポにて、庭山正一郎弁護士(元日弁連副会長、元二弁会長)から、法曹養成制度につき問題提起がされました。その中で、新司法試験の合格率について、次のような庭山先生の分析結果が報告されました。

ロースクール生の新司法試験の合格率を、毎年の全体の合格率ではなく、既習者(2年コース)と未習者(3年コース)ごとに、累積合格率(3回受験の枠内での合格率)を見ると、既習者の第1期生(修了者2176名)の初年度合格率は46.36%でした。しかし、5年経過した1期生の5年間での合格者合計数(累積合格)は1518名で、累積合格率は69.76%になっています。2期生、3期生の既習者の累積合格率も、それぞれ64.21%、65.97%です。

1期既習者(修了者2176名)の合格者の推移

初年度合格者1009名、合格率46.36%
2年目合格者396名、累積合格1405名、累積合格率64.56%
3年目合格者99名、累積合格1504名、累積合格率69.11%
4年目合格者8名、累積合格1512名、累積合格率69.48%
5年目合格者6名、累積合格1518名、累積合格率69.76%

つまり、ロースクール制度のころ、「合格率7割」などとマスコミが取り上げていたのですが、既習者について見ると、この合格率は達成しているということになります。

ところが、未習者については、1期生(修了者2563名)の初年度合格率は、24.81%、累積合格率は39.01%となっています(累積合格者数は1717名)。2期生は27.81%、3期生はまだ初年度合格率で17.26%となっています。

未習者については、3年経過しても、1期生で39%しか合格しておらず、既習者と大きな格差があるとの結果になっています。そのため、法律事務所の就職難ともあいまって、社会人経験者や非法学部出身者のロースクール入学者が次のように減少しているとのことです。

2004年度
 志願者7万2800人、社会人経験者2792名(48%)、非法学部1998名(34%)

2010年度
 志願者2万4014人、社会人経験者933人(24%)、非法学部868名(21%)

ロースクール設置の目的である非法学部出身や社会人経験者などの多様経歴な人を多く法曹界に迎えるという目的は十分うまくいっていないということです。

■とはいえ7割合格率

法学部出身者はロースクールに入学すれば、合格者数が2000名程度にとどまっていても、約7割が新司法試験に合格できるということになります。

しかも、未習者コースでさえ3割程度が合格します。もっとも、未習者コースにも、法学部出身者が数多くいるのが実態ですから、非法学部出身者の合格率がどうなのかは不明ですが。

旧司法試験だと、短答式試験合格者の最終合格率は約15%程度だったと思います。ロースクール合格者は昔の短答試験合格程度だと考えるべきですから、これと比較すれば司法試験は、ずいぶん合格しやすい試験になっています。

新司法試験の合格水準は高くないと言われていますから、法学部出身の若者にとっては、ロースクールに入る学力と(親の)資力がありさえすれば、法律家になるのは極めて容易ということになります。合格率上位の法科大学院では、90%以上の累積合格率ではないでしょうかね。(これでも合格できなければ法律家に向いていないということです。)

とすると、法科大学院制度は、既習者コースに限って見れば、一応、初期の合格率の目標は達成していることになります。ただし、非法学部出身の多様な人材を法曹界に注入するという目的は十分に成功していないということになります。

■庭山構想

そこで、庭山弁護士は、法科大学院はすべて3年コースにして、大学3年から入学できる制度にかえるというアイデアを出されていました。法学部生で法曹を目指す人は2年のときに法科大学院を受験して、3年から法科大学院に入る。非法学部の学生も、法曹になりたい人は法科大学院に入れる。そうすると、法学部出身者と非法学部出身者でそれほど法学の格差はつかない。他学部出身者は、大学4年後に法律家になりたいと思う人が、法科大学院に入る。そこにいる法学部生は、2年までしか法学部に入っていないから、それほど法律の勉強が進んでいない。そこで、スタートラインが近くなっており、未習者ももっと多く合格するというわけです。また、法学部2年から進んだ者も年齢的にまだ若いからロースクールを出ても企業などの組織に入る可能性も広がる。

なるほど魅力的な案です。問題は文科省を説得できるかどうかですが。

■新司法試験の合格水準

シンポでは、この点も議論となっていましたが、採点基準を過去に比べて緩やかにしても、現在は2000名程度しか合格水準に達する人がいないという意見が多数でした。これより緩和すれば、最低限の学力のない者が法律家になるという意見が多いようです。これが教官経験者や試験委員経験者の実感のようです。

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