裁判所と司法修習給費制
■最高裁はなぜあそこまで日弁連の給費制維持に反対したのか。
唯一考えられるのは、修習生の給費制を維持されれば、裁判所の給費制が財務官僚によって削減されるということです。この理由以外考えられません。民主党では、給費制を維持しても、司法予算を維持増額することにはならないと見切られたということです。つまり、民主党の法制部門会議の力がない、財務部門会議の力のほうが強い、いや、財務省の力が強い(ギリシャのように国家破産すると大騒ぎした馬鹿総理をみてそう思ったのでしょう)。
この司法予算が本当の理由だと思います。最高裁事務総局の、天敵は、日弁連ではなく、財務省と与党政治家です(日弁連なんか眼中にないです)。裁判員裁判や労働審判の予算を裁判所が獲得するのに、財務省の官僚を模擬裁判の傍聴につれてきたって苦労話しを複数の方々から聞いたものです。(だから東大卒ネットワークは貴重なのでしょう。)
■青山某教授のおかしさ、
青山某教授が、「3000人合格が先決」「司法改革と3000人合格は三位一体」と言っていますが、まったくの誤りです。
まず、日弁連が反対しているから、3000人合格が実現しないのではありません。
ロースクール出身で、合格水準に達する者が少ないということです。せいぜい下駄を履かせても2000人程度しかいないというのが法曹界の定説です。したがって、青山教授の3000人合格を達成しろというのは、合格水準の卒業生を出せないロースクールにこそ向けられる批判であって、日弁連に向けられるのは筋違いというものです。
しかも、司法試験合格者の人数を決めているのは司法試験委員会であり、委員会には日弁連は全く影響力はありません。司法試験委員会は、完全に成績ベース(答案の出来不出来)で判断をしています。弁護士にとって裁判(ー刑事事件以外)は起案能力は必須(訴訟の勝敗に直結する)です。裁判官は民事刑事すべてに起案能力は必須です(上訴審があるから)。
また、給費制維持の有無が法曹人口の問題とからめて議論されるのはおかしな話です。
法曹人口増加を阻止したいから、給費制を維持する要求を日弁連はしているというのは全く誤解です(宇都宮会長の発言が、そのような誤解を招いているのでしょうか)。それとこれは切り離して考えるべきです。
■給費制維持の論拠
私は、司法修習生給費制維持の唯一の論拠は、経済的にめぐまれない階層(階級)の出身者が法律家になる道を狭められることは不合理だ、という点だと考えています。
給費制があるから、人権擁護をするとか、公益活動をするとかというのは自らを貶めることでしかないと思いますし、実態にも反しています。もっと人間の思想的というか、人間的なものであり、国からもらう金のことではありえまえん。
(追加)給費制があるから、人権擁護活動するとか公益活動する、借金が多くなれば弱者相手の実入りの悪い仕事は市内と発言する修習生の声を聞いたことがありますが、こういう発言をする人は、給費制が維持されようとされまいと、実入りの悪い仕事はしないものです。
■とすれば
日弁連が最低限獲得すべきは、貧困階層が法律家になるための障害をできるだけ取り除くということです。
今後は、給費制の維持か廃止かのオール・オア・ナッシングではなく、最低限、貧困階層出身者の負担を軽減する免除制度を早期に確立する道筋をつけることを望みます。
そうでないと、苦労しらずのお坊ちゃんやお嬢ちゃんばかりの法曹界になります。まっ、今でもそうだけど。
心配なのは、弁護士よりも、裁判官たちですね。裁判官になる社会的階層が偏ることは全国民の損失ですよね。弁護士なんて、まだ競争で切磋琢磨されるけど、裁判官の世界は競争はないですし(最高裁事務総局の人事管理しかありません)。
ロースクール卒業時点で、例えば200万円以上の債務を負っている者については、貸与金の返還を免除するという制度は、最低限、実現してほしいものです。この点は、自民党から共産党、そして、生き残りをはかる泡沫ロースクールまで一致するところでしょう。
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コメント
『まず、日弁連が反対しているから、3000人合格が実現しないのではありません。
ロースクール出身で、合格水準に達する者が少ないということです。せいぜい下駄を履かせても2000人程度しかいないというのが法曹界の定説です。したがって、青山教授の3000人合格を達成しろというのは、合格水準の卒業生を出せないロースクールにこそ向けられる批判であって、日弁連に向けられるのは筋違いというものです。』
これはおかしいですね。法曹界には1970,71年国会付帯決議を手前勝手に解釈し、司法制度の在り方は法曹三者の合意なく改変しない、との悪しき慣行があったはずです。弁護士の総意は「増員反対」なのでしょう?青山教授の推測は当たっていると思います。
投稿: え? | 2011年10月27日 (木) 14時56分