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2010年11月 4日 (木)

読書日記「デフレの正体」藻谷浩介著 角川ONEテーマ21

読書日記「デフレの正体」-経済は「人口の波」で動く-藻谷浩介著

2010年6月10日発行
2010年11月2日読了

■国際経済競争の勝者・日本
GDPは、とうとう日本は中国に抜かれ今年、世界第3位になりそう。日本の国際競争力は凋落してきたものと漠然と思い込んでいました。

ところが、この著書では、日本はあいかわらず国際競争の勝者という事実がデータをもとに明らかにされています。

日本の貿易黒字01年に8兆円だったのが、資源高がピークに達した07年には12兆円ですから、今世紀頭の7年間に5割も増えたのです。 ちなみに世界同時不況になった08年には4兆円に急落しましたが、「21世紀に入った頃から減少基調」なのではありません。むすろ日本の貿易黒字は、中国の台頭と資源の著しい高騰にもかかわらず年々増加傾向にあったし、世界の景気が良くなればまた回復するのです。事実日本の輸出は09年1月を底に再び伸び始め、貿易黒字もまた拡大基調に戻っています。

対中国貿易も黒字

多くの方が、日中貿易は日本の赤字だと決めつけています。ところが08年の日中の貿易収支は、日本が2.6兆円の黒字でした。…この数字は、対中国と対香港の合計です。

対中国だけでは赤字だが、対香港を加えると大幅な黒字になり、中国が栄えると日本の貿易収支は黒字になるという関係にあるそうです。、

しかも、韓国、台湾との関係でも、

韓国、台湾からも、07年、08年と続けてそれぞれ3兆円前後の貿易黒字をいただいているのです。

おまけに日本は債権大国として外国から金利を稼いでいると言います。

外国から稼ぐ金利配当が、外国に支払う金利配当を超えた分を所得黒字といいます。この所得黒字はバブルの頃は3兆円程度でした。それが07年には16.3兆円と5倍以上に増えたのです。

こんなに外国から稼いだお金はどこにいったのでしょうね。

■日本経済の病気は「内需の縮小」

著者は、今の日本の現状は、「国際競争に負けた結果ではありません。国際競争にいくら勝っても、それとはまったく無関係に進む日本経済の病気、『内需の縮小』の結果です。」と言います。この「内需の縮小」の最大の原因は、生産年齢人口(15歳から64歳)の減少による消費の縮小と結論づけます。

確かに統計で見ると、生産年齢人口は1995年に約8700万人をピークに、2008年に約8200万人と500万人も減少しています。また、統計局の労働力調査で見ると、15~64歳の就業者人口は、1997年で約6100万人だったのが、2010年で5700万人まで減少をしています。

今後の推計では、つるべ落としのように、どんどん生産年齢人口が減少し、2020年で約7300万人、2030年で約6700万人と予想されています(国立社会保障・人口問題研究所のHP)。

そこで、著者は、日本経済を良くするための目標として次のことをあげます。

個人消費が生産年齢人口減少によって下ぶれしてしまい、企業業績が悪化してさらに勤労者の所得が減って個人消費が減るという悪循環を何とか断ち切ろう。
 ① 生産年齢人口が減るペースを少しでも弱めよう。
 ② 生産年齢人口に該当する世代の個人所得の総額を維持し増やそう。
 ③ (生産年齢人口+高齢者による)個人消費の総額を維持し増やそう。

労働生産性をあげるとして「人員削減」や「解雇の規制緩和」をしても、「内需の減少」をさらに後押しするだけのようです。

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