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2010年10月30日 (土)

ドイツの労働裁判官

■ドイツの労働裁判所の裁判官

ドイツから日本に、裁判官交流で研修にきている労働裁判所の裁判官が、労働弁護士にインタビューをしたいと労働弁護団に訪ねてきました。

会長の宮里邦雄弁護士らと数名で面談をしました。日本の労働審判と労働法について質問されて説明をしました。約2時間の質疑でした。

日本の労働基準法や労働契約法について豊富な知識を持っておられました。また、日本の法テラスの実情などもよくご存じで驚かされました。東京地裁で労働審判や労働裁判の見学もされており、相当の知識をお持ちでした。

日本は、なぜ実定法が整備されていないのか、という質問。労働契約法は判例をそのまま立法したていどのもので、あまり意味がないのではないかという鋭い質問があります。

また、実務的な質問もありました。例えば、労働審判についての弁護士費用の決め方、手続選択をどう弁護士が決めるのかなども質問されていました。ちなみに、ドイツは弁護士の成功報酬は禁止されていること、解雇から3週間以内に解雇訴訟を提訴しなければならないことなど、日本とは大きく事情が異なっています。

■ドイツの労働者派遣法見直しの話し

労働法では、国会で審議中の労働者派遣法についても質問がありました。その中で、ドイツでも、労働者派遣法が見直しの動きがあるとの話しがでました。

ドイツでも派遣労働者は賃金がやはり安く、十分な年金をもらえる水準に満たない。そうなると将来、社会保障・生活保護などの税負担が大きくなる。そこで、将来の税負担が高くなるこを避けるため、労働者派遣法を規制していこうとの意見が強くなっているとのことでした。ドイツの法学会の労働法部会ではそのような決議をあげたということでした。

、ドイツの労働法も、東ドイツ条項(旧東ドイツについては労働法の一部が適用されない)があったりして問題も多いそうです。

■法の競争力

もう一つ、興味深かったのは、法の競争力を強めるという話でした。法の競争力を重視して、最新の強力な法律をつくることで、ヨーロッパ(EU)内をリードする統一基準を獲得するという考えがあるとのことです。

昔、ドイツ法は国際競争力が高く、日本に大きな影響を与えた。確かに、憲法、民法、刑法、労働法は、昔(30年以上前)は、ドイツ法が圧倒的な力をもっていました。最近はアメリカ法の影響が圧倒的ですが。

ドイツの裁判官は、ドイツは改めて法の競争力を高めるという国家的な取り組みが必要と言っていました。そして、日本も法の競争力を高めるという発想が必要だと述べていました。これを聞いて、内田貴元東大教授の民法(債権法)改正の話しを思い起こしました。

労働法分野では、日本法は韓国に影響を与えています。しかし、韓国は、常に日本の一歩先の先進的な法律を制定しています。期間制及び短時間労働者保護法、派遣労働者保護法、労働委員会法など日本の実定法と比較して、3歩も4歩も先の法律を制定しています。

もっとも、韓国がそのような先進的な労働法が制定するのは、2008年まで盧武鉉大統領の政権、いわば韓国民主化運動をになった進歩勢力が政権についていた結果なのだと思いますが。日本では、民主党が政権についても、なかなか進みません。

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2010年10月 9日 (土)

ザッケローニ監督でアルゼンチン戦【1-0】 勝利!


中沢祐二も、田中マルクスもいない日本代表がアルゼンチンを得点を許さず、1点をとって、なんと「1-0」というビューティフル・スコアで勝利。

ザッケローニ監督は、「まだ伸びる余地がある」「目標はアルゼンチンに勝つことではなく、成長していくことだ」、さらには「Jリーグにはまだ素晴らしい選手がいる。Jリーグの監督たちの仕事に感謝する」とコメント。まるで外交官のような見事な挨拶。

なんだか日本チームにぴったりのイタリア監督です。
これから4年間、しっかり楽しませてもらいます。ブラジル・ワールド杯が楽しみです。(ワクワク)

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労働者派遣法改正成立に向けての院内集会ご案内

■10月25日 12:30~ 衆議院第1議員会館

労働者派遣法改正を今臨時国会での成立に向けて日本労働弁護団が下記日時に議員会館内で集会を行います。多くの方に参加いただければと思います。

http://roudou-bengodan.org/topics/detail/20101008_-no.php

日 時  2010年10月25日(月)13時00分~14時30分(12時30分・開場)

場 所  衆議院第一議員会館多目的ホール

(最寄駅)東京メトロ丸ノ内線・千代田線 国会議事堂前

※当日、入館チケットを配布します。お早めにご来場下さい。

■趣旨

 今臨時国会では派遣法改正法案の審議が再開されます。この改正法案は、登録型派遣禁止に幅広い例外規定を置くなど不十分な点を残していますが、「派遣労働者の保護・雇用の安定」を目的規定に明記し、派遣労働者保護法の性格を持たせ、違法派遣の場合の直接雇用申込みなし規定を置くなど、派遣労働者保護の観点から画期的な内容となっています。これに対して、派遣法規制反対派は、派遣規制強化が失業のリスクを高めるなどと誤った情報を流し、派遣法改正反対の動きを強めています。
 このたび、当弁護団は、今国会での派遣法改正法案の成立を訴えるため「今臨時国会における労働者派遣法改正法案の成立を求める声明」(2010年10月5日)を発表しました。また、派遣法改正を実現するために、下記集会を企画しました。各界各層からの多数の御参加を得たく、御案内申し上げます。

■コメント

「派遣切り」や「派遣村」を契機に、盛り上がった派遣労働者保護の動きに、逆風が強まっています。

派遣労働者の保護を一歩でも、二歩でも前に進めるために早期の改正法案の成立が望まれます。

不十分な面も残る改正法案ですが、労働者保護に活用できる部分もたくさんあります。ここは、まず改正法案の成立に向けて、すべての労働者と労働組合、関係者が力をあわせてほしいと思っています。

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2010年10月 6日 (水)

労働者派遣法改正法案の成立を

■労働者派遣法改正

継続審議となっている、労働者派遣法改正法案を今臨時国会で早期に成立させる必要があります。
労働弁護団は、昨日、厚労省で記者会見をしました。

http://mainichi.jp/life/job/news/20101006k0000m040068000c.html

http://roudou-bengodan.org/proposal/detail/post-2.php

労働弁護団の声明の言いたいところは次の点です。

3 派遣の規制強化を前進させ、違法派遣における派遣先との直接雇用を求める労働者救済のために今臨時国会での改正法案の成立を 2010年7月の参議院選挙により与党が参議院で過半数割れとなったが,今臨時国会で派遣規制を強化する内容で労働者派遣法が改正されなければ、相次ぎ規制緩和されてきた現行の労働者派遣法がそのまま維持されてしまい、不安定雇用と低賃金に苦しむ派遣労働者の救済はさらに先延ばしされることになる。 今回の改正法案は、上記のとおり、1985年に労働者派遣法が成立して以来ほぼ一貫して規制緩和の改正が重ねられ不安定な労働者派遣が拡大してきた流れを変えて、問題点は多数あるが、派遣労働者保護のための規制強化に一歩踏み込むものである。 特に、違法派遣の場合に派遣労働者と派遣先とのみなし雇用の成立を可能にする規定が定められているので、これにより派遣労働者が派遣先との直接雇用を実現することが可能となる。現在、日本労働弁護団の弁護士は、違法派遣の派遣先の雇用責任を求める多くの訴訟を全国で取り組んでいるが、裁判所の厚い壁を突破し派遣労働者の派遣先への直接雇用を実現するためにも、この規定を含む法改正を今臨時国会で成立させることは、派遣労働者の救済のために重要な意味がある。 以上の点から、今臨時国会で、改正法案について十分な審議を尽くしたうえで、改正法を早期に成立させるよう強く求める。

現行法がそのまま存続することが最悪の事態です。参議院が過半数割れした以上は、現行改正法を基本に早期に成立させるしかないと思います。

■改正しないほうが良いのか、したほうが良いのか。

派遣法改正法案については、労組の一部から強い批判があったところです。しかし、その批判は改正法案が不十分であるというものであって、現行法を改悪するという批判ではなかったはずです。

労働弁護団は、改正法案の違法派遣のみなし雇用の成立を認める規定は画期的と評価してきました。また、登録型派遣については常時雇用するものでなければならないとします。常時雇用する意義については、派遣業務要領では、有期雇用を許容するとはいえ、事実上、期間の定めのないような状況を意味すると解釈できるものです。大きな意味があると評価してきました。例外扱いなどは不十分とはいえ、現行法を派遣労働者保護に向けて一歩すすめるものです。

■派遣業界の巻き返し

派遣業界は、派遣規制が行われると、派遣労働者の職が失われるとの宣伝を行っていますが、派遣労働を使用できなくっても、仕事があれば、企業は有期雇用とはいえ、直接雇用で労働者を採用します。職業紹介でミスマッチ問題も克服できるはずです。

このあたり、派遣労働者が誤った情報により、派遣法改正に不安に陥っています。間接雇用よりも、有期であっても直接雇用のほうが労働者にとって雇用と生活の安定が図られることはまちがいないです。

■国会審議-公明党の対応が焦点か

国会審議がどうなるのか。自民党は強く反対を唱えています。公明党の対応が焦点になります。特に、派遣の原則自由化した当時の坂口力元厚生労働大臣が公明党だから、かたくなになっているのかもしれません。

しかし、本来、非正規のなかで最も地位が不安定な派遣労働者の保護を実現するのは公明党の政策に合致するはずです。原則自由化した結果、リーマンショック以降の派遣切りで、多くの派遣労働者が路頭に迷った事態をうけて、公明党は過去のいきさつを離れて、派遣労働者の保護に踏み出すべきエド省。

■院内集会の開催

労働弁護団は、10月中に派遣法改正を求める国会議員院内集会を企画しています。

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2010年10月 3日 (日)

有期労働契約研究会報告書の気になる点 解雇規制緩和

■多様な正社員と解雇規制

有期労働契約研究会の報告書につぎのような一節があります(24頁)。

無期労働契約への転換により雇用の安定を図りつつ、「勤務地限定」、「職種限定」の無期労働契約など、多様な雇用モデルを労使が選択し得るようにすることも視野に入れた環境整備を検討することが求められる。この場合、勤務地限定等の無期労働契約については、勤務場所の閉鎖等の際の雇用保障の在り方について、その契約の下で働く労働者の職務内容や勤務地等の制約の度合いに応じ、どこまで雇用が保障されるのか等について、様々な意見がある。何よりもまず、労使間での自主的な問題解決が図られるよう、契約内容についてあらかじめ明確に合意しておくことが必要であるが、これらのルールの在り方については、労使の自主的な取組、実例や裁判例の集積の状況も注視しつつ、検討が必要である。

■多様な正社員の解雇規制緩和?

報告書は、有期労働契約の濫用を防止し、公正かつ適切な活用を打ち出しています。その基調は、正社員と有期契約労働者との中間に、「勤務地限定正社員」とか「短時間正社員」という中間的なカテゴリーをもうけて、有期契約労働者のうちの一定部分(恒常的業務従事者など)を、この中間的な正社員として、無期労働契約とするというものです。

ところが、「ぴかぴかの正社員」とは別に、勤務地や職種を限定したり短時間労働の無期契約労働者(第2正社員?)を位置づけて、整理解雇の法理についての要件を緩和する方向性を示唆しています。

■現在でもある多様な正社員

本田一郎しの「主婦パート 最大の非正規雇用」(集英社文庫)によれば、現在も多様な正社員制度が導入されています。

現在は、このような地域限定や職種限定であったとしても、適用される解雇ルール(整理解雇法理)は同一です。ただし、解雇回避努力や人選基準などの適用の際に、職種限定や地域限定の要素が考慮されることはあるでしょう。でも、地域限定労働者だから、職種限定労働者だから、解雇回避努力をしなくて良いということはならない。事業所廃止の場合にも、地域限定社員に対しても他事業所への配転の機会をまったく与えない場合には解雇回避努力を尽くしていないとなります。

■経営側への配慮か

経営側は、有期労働契約の法規制をするなら、解雇規制の緩和が絶対必要というスタンスです。報告書は、これを見こして、第2正社員というべき労働者に対する整理解雇法理の緩和を用意するというサインのようです。

■立法的に区別することの困難さ

しかし、整理解雇法理の立法化さえされていない現状で、法律によって上記の整理をすることは極めて困難でしょう。しかも、第2正社員には整理解雇は緩和されるということは法文に書きようがありません。

とすると、おそらく、有期労働者の大臣告示のような行政通達などの、いわゆる「ソフト・ロー」の活用を考えているのでしょう。

このような告示は、最終的には整理解雇の告示を目指すのでしょうか。経営者側の要望を考慮して、解雇権濫用法理は維持しつつ、整理解雇を緩和するという方向の流れが強まりつつあるようです。

■第2正社員の受け皿は

また、報告書は、有期契約労働者が第2正社員になるということを想定しているのでしょうが、「ぴかぴかの正社員」を、「第2正社員」にしようとする使用者も出てくること(副作用・濫用事例)への対応も念頭におくべきでしょう。

■正社員化よりも、先ず無期化

とはいえ、多様な正社員。幹部候補生的な正社員(職務職能給や成果主義賃金)と別に、地域限定正社員や、職務限定正社員、短時間正社員(皆、職務給でしょう)をもうけて、無期契約労働者を増やすことには賛成です。

そこから雇用平等も、雇用改善も、労働組合への組織化もはじまると思います。

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尖閣諸島 中国船問題(続き)

■続き
前回のブログは尖閣諸島の中国人船長の報に接して驚愕して勢いで書いたブログなもので真意がうまく伝えられなかったようです。

■要点

要点は次のとおり

 ○本来、漁船は船長を逮捕せず、領海外に強制退去すれば足りるし、そうすべきであった。
 ○政府のトップが政治的判断をすべき事柄であり、単に、現場にまかせる問題ではない。
 ○万一、逮捕したとしても、事後処理としては、政府判断で、起訴猶予として、法務大臣が次のように発表する。「違法性が高いが、逃走中の操船の誤りの可能性もあり、船長も反省しているようだから、起訴猶予にする。今後、同じようなことがあれば厳しく対処するので、中国には再発防止策をとるように伝える。」

■事実経過 国交大臣会見と、朝日新聞報道

9月28日の朝日新聞の報で桜によれば、逮捕の判断は、前原国交大臣(当時)ということ。

国交大臣の記者会見を見ると間違いなく、前原の判断であったようである。逮捕に踏み切り、その後の展開を読み誤り、しかも、圧力に屈して、政府の意図不明のまま処分保留で釈放してしまうという、最悪の対応をした。

9月10日前原国交大臣記者会見を見る。

http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin100910.html

これによれば、衝突から逮捕、送検までの時系列は次のとおり。

9月7日 漁船発見して、巡視船が退去の警告

同日 午前10時15分 漁船の左舷船首が巡視船の左舷船尾に接触

同日 午前10時56分 久場島の北北西約15㎞で漁船が巡視船の右舷中央部に衝突(公務執行妨害)

その後、場島の北北西約27㎞の地点で巡視船が漁船を強行停船させて、海上保安官6名が移乗。

9月8日 午前2時3分 船長を公務執行妨害で逮捕。

9月9日 午前10時41分 海上保安部から那覇地検石垣支部に送致。

海上保安官6名が移乗した時間が明記されていないが、衝突地点で約12キロはなれていますから、それなりに時間が経過した後なんでしょうね。

上記経過を見ると、衝突の7日午前10時56分から、逮捕の8日午前2時3分まで14時間が経過しているということです。つまり、現場判断で逮捕したのではなく、現場は海上保安庁トップへの指示を受けつつ逮捕したということです。海上保安庁トップは、国交省や官邸と協議の上、逮捕、身柄確保の命令を現場に出しているということは明白です。

前記朝日新聞によれば、7日の事件発生後、前原大臣が電話で海上保安庁長官鈴木久泰に電話で指示し、仙谷官房長にも電話で毅然と対処すべきと伝えた。前原大臣は逮捕を主張し、岡田外相にも連絡をした。7日の夕方、仙谷官房長間が官邸で海保と外務省の幹部から報告をうけて逮捕を決定。

■やはり逮捕は前原国交大臣が主張し、仙谷が受け入れた

以上の時間的経過を見れば、逮捕せず国外に強制退去するという判断を、政府中枢が決める時間的猶予が十分にあった(現場の暴走で逮捕したものではない)。ところが、逮捕した場合の中国の対応を全く読み誤って逮捕という根本的なミスをもつ判断をした。

中国が外交的報復、経済的報復をすることは当然に予想された。今の日本経済の状態(中国との貿易なしでは経済成長はありえない)ではリスクが大きすぎる。中国との経済関係が壊れれば、それこそ国益を害する。

日本が尖閣諸島を実効支配しており、その見地は国際的にも支持されているから、逮捕・起訴という波風をたてるメリットは全くない。そのような冷静な判断こそが政府には求められるというものです。

ところが、逮捕した結果、また、その後の処理のまずさにより、中国の圧力によって釈放したという日本外交の大失態をさらし、国益を害した。その責めを負うべき者のは、事後処理の見通しもなく、勢いで逮捕してしまった前原でしょう。日本の名誉を守りたいという思いだけでは、通用しないのであり、冷静で将来を見通す危機管理ができなかったということです。偽メール事件のときと同じです。
 

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