尖閣諸島 中国人船長釈放
■驚き
公務執行妨害等の被疑事実で勾留されていた中国人船長を、勾留満期前に釈放するという検察には驚きました。
勾留満期に起訴猶予にでもするんだろうと予測していましたが、この時期に釈放なんて、しかも、中国との外交を考慮して釈放なんて、しかも、しかも、那覇地検のたかが次席検事が記者会見で言い訳して検察の独自の判断なんていうなんて???
■なぜ逮捕したのか
そもそも、中国人船長を逮捕したのは誰の判断なのでしょうかね。
海上保安庁の巡視船にぶつけられたって、国外に追い払えばすむはなしです。あえて逮捕するという判断が海上保安庁の現場判断なのでしょうか??
まさか、とうていそう思えません。海上保安庁だけの判断なのか?
海上保安庁は、中国漁船を外に追い払うか、船長を逮捕するのかは、海上保安庁トップが関与しているはずです。もし関与していないのであれば、現場で国益に関する重要な判断をしたとしたら、そちらのほうが問題です。
海上保安庁のトップが関与しているとしたら、国土交通省とも相談しているはずです。大臣などの政治家は逮捕するかどうかの判断に関与していなかったのでしょうか。特に、前原大臣はどうだったのか。
このあたりは、是非、知りたいところです。
■逮捕して、釈放のタイミング
公務執行妨害で逮捕して、まさか起訴なんてことをすれば、外交上の大問題になるということは当然予想された。とすると、ある段階で釈放しなければならない。それは起訴猶予制度のある日本では、国内法に従い、勾留満期の時点で、起訴猶予すればすんだはなしである。
幸い、人身損害はなく、公務執行妨害の故意がなく、逃げようとして、操船を誤った過失犯だ(本当かどうかはともかく)とすれば、起訴猶予の理由にはなり、スジはとおる。
私はてっきり、公務執行妨害罪を強調するから、政府の落としどころがそこなんだろうなあと思っていました。
■ところが、那覇地検の独自の判断、なんて官房長官が言う。(嘘つき!)
那覇地検だけで判断するわけがない。最高検察庁が決めている。(例の大阪地検特捜前田検事の例を見れば、地検レベルで判断できる問題でない)。
最高検が関与している以上、法務省トップと協議をしているのは間違いない。協議していないと考えるほうがばかげている。法務省トップと協議をする以上、官邸(官房長官)と協議をしないわけがない。
にもかかわらず、官房長官が検察の判断だ、といって政治介入はしていないとの弁明は誰も信じない。
政治介入がないと言いつくろうための、嘘である。官房長官が嘘をついた以上、せんごくは辞任すべきである。
大阪地検特捜の問題で、官邸と検察がやりあっているとき、検察が泥をかぶるから、検事総長の責任はなし、ついでに取調可視化法案もストップしてねっ、て取引があったのではないかと邪推したくなるくらいです。
■逮捕したのが間違い。
尖閣諸島は日本が実効支配をしており、日本の領土なんだから毅然と追い払えばすむはなし。これを逮捕した判断が誤り。
逮捕しても、起訴ができるわけがない。
貿易の相手として、今や米国をしのぐ中国と敵対することなんて無理である。しかも、中国は共産党一党独裁で、政経一致の国ある。独裁国が、今回の件で報復してくるのは当然である。
そのことを考えて、逮捕するかどうかを決めるのが、官僚トップや政治家の判断でしょう。現場の海上保安庁や検察庁は粛々と自分の任務を果たすだけの下っ端である。
逮捕を決定した人物が誰で、どのような判断だったのかを検証することが必要です。政治家が関与しているかどうかです。このあたりジャーナリズムに期待したいです。
■意に反して逮捕しちゃったとしても、その後の対策がお粗末
国内法で粛々と処理するなら、勾留満期に正々堂々と、起訴猶予をすれば良かった(そうするから、それまで控えてねって、中国要人に内密に連絡しておけばよい)。
そして、政治家が、「違法の程度は極めて大きいが、故意でなかったようなので、釈放する」と法務大臣などがしっかり政治的説明をすれば良いのです。
それをしないで、那覇地検の次席検事ふぜいに責任を押しつけるなんて、一国のリーダーたちがやるべきことではない。
■逮捕を決定したのは誰かを究明したい。
日本の国益を一番害したのは、逮捕を決めた人間だ。現場の海保が逮捕したいと思うのは当然。でも、それよりも上のレベルの人間が判断しているはず(関与していなかったら、それも問題)。前原国交大臣が決めたのか?
前原大臣が決めたとしたら、国益を一番害したのは前原だ。
起訴しても、日本経済は大打撃をうけて、釈放すれば、外交上の大失態になる。その道を選んだのが前原大臣なら、万死に値する。前原という政治家は、あの偽メール事件と同様に危機管理ができない政治家の資質がない人間ということなる。ただの学生あがり(政経塾)のぼんぼんということだ。
■なぜ満期前の釈放で、那覇地検の独自の判断だなんて言うのか?
これも理解に苦しむ。地検にすれば、勾留満期に起訴猶予すればすむ話で、筋が通る。国内法に従い粛々と処理したということである。満期前釈放では検察も筋が通らない。
■民主党も、これでおしまいか。
民主党。あまりにお粗末。自民党だったら、上手く処理したかどうかはともかく、民主党は、今回、国益を害する大きな失態をしてしまった。
■中国との今後
今年、中国がGDPで日本を抜く。軍事的にもさらに強力になっていく。
10年単位で見たときに、日本にとって、現実的な脅威になることを、まざまざと見せつけた。
今後、尖閣諸島周辺に中国軍が進出してくる(漁民保護の名目で)ということも予想される。
中国人民の不満が噴出すれば、中国政府は政権の安泰のためには、やりかねない。なにしろ共産党一党独裁国家なのだから。
中国は、あと5年、10年して、経済が停滞して、あの階級分裂的な格差に、人民の不満が爆発すれば、反日の気分で不満をそらすことを、中国共産党は当然、やる。
その場合に、海上保安庁でなく、海上自衛隊が対抗せざるをえない。そうなれば、突発的、偶発的な軍事的衝突もありえるであろう。
10年、20年後を見れば、このままいけば経済的に日本が中国からの重大な影響を受け、軍事的圧力を受ける存在になることは必至である。
実際、中国と日本の歴史を見れば、そのような状態のほうが長かったのだから。日清戦争以後のこの100年だけが日本優位であっただけ。
今回の事件は、対中国脅威論を勢いづけ、21世紀、日米同盟維持を日本国民が積極的に支持する分水嶺になることでしょう。民主党政府の愚かな対応は本当に罪深いことです。
■東アジア集団的安全保障体制を
となれば、朝鮮半島の平和条約をつくって、アメリカ、ロシアを含めた6カ国で、東アジア地域安全保障体制をつくるしかないでしょう。
域内での軍事行動は一切行わないことを確認するという方向で、じっくり外向的努力をしていくことしかないのでしょう。
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コメント
中国人留学生です。ブロックを拝読させていただき、見識が高く、とても痛快な分析だったが、中国は「独裁国家」については、もう少し議論する余地があるのでは?
投稿: 方暁 | 2010年9月25日 (土) 13時45分
独裁っていうのは、プロレタリアート独裁。
とはいえ、「独裁」と「専制」って違うというのは政治学の基礎知識です。専制って言うのは、アジア的な専制君主です。恣意的な横暴な君主という意味です。
これに対して、独裁というのは、ギリシアの古代都市国家(ポリス)で、外敵に攻められたときに、一時的に、独裁官が共同体をまもるために、全権を掌握するということです。
ということで、専制と独裁とは違うんだと、昔、マルクス主義の「プロ独」論争を学生時代したものです。
ただ、政府への自由は批判ができる言論の自由と、政党などの結社の自由がない国家は、民主主義国家とは言い難いというのが、ブルジョア立憲主義・憲法理論です。
まあ、これとは別に、留学生氏が言わんとしていることは、中国の民衆の意向を、もはや中国共産党も無視できないというのことなのかもしれません。
投稿: 水口 | 2010年9月26日 (日) 12時33分
逮捕したのが現場の責任感の強い海保の方がが悪いと
売国奴的意見の多いブログですが
1つだけいわせてもらいます
軍事力による領土の奪い合いがないのだとしたら
尖閣諸島、竹島、北方4島は歴史的にみて
国際法上も間違いなく日本の領土です
また、尖閣諸島を含め日本国土は先祖から預かり子孫に保全してできればよりよい状態にして渡すべきもので、私たちの利益や安全のために売り渡してよいものではありません。
中国との利益関係が崩れようとも、日本人としてこの一点だけは守るべきもののはずです
投稿: 日本人 | 2010年9月26日 (日) 14時31分
尖閣諸島は、日本が実効支配をしており、毅然と強制退去をさせればすむ話です。短絡的に逮捕だ、起訴だとしても、かえって中国を利する結果になります。
この問題で、逮捕の判断をしたのは現場ではなく、前原大臣だと思われます。現場判断では逮捕できないと思います(海保内には判断ルールがあるはずです)。
また、逮捕した以上は、その後、適切な対応をすべきですが、ご承知のとおり、日本政府は、検察官に責任を負わせて、処分保留で釈放という腰砕けの対応しかできませんでした。
この政府の逮捕したり、釈放をしたりする対応を売国的とは言いません(国辱的だとは言いたい気分ですが)。前原大臣も、気持ちとしては日本のためにと思ってやっていることでしょう。ただ日本人の誇りや熱意だけでは、外交上は国益を守れないということではないでしょうか。冷静な対応こそが求められていると思います。
投稿: 水口 | 2010年10月 3日 (日) 00時44分
尖閣諸島は、沖縄県か台湾に属するということは、そもそも沖縄県が日本の固有の土地なのか、台湾が中国の一部なのか、という微妙な問題と切り離せないように思います。
日本が沖縄にやってきた仕打ちというのは、「日本人の誇りや熱意」という言葉を空々しく響かせるのに十分なものだと思います。沖縄の問題をもっと真剣に議論しない限り、そもそも国益を保持するような誇りは熱意にはつながらないと思います。
沖縄の人々がこの問題についてどのように考えているのか、一度聞いてみたいものです。
投稿: Take | 2010年10月 3日 (日) 07時23分
沖縄は、昔、琉球王国であり、中国の冊封体制に組み込まれていた。薩摩藩や明治政府により侵略されて、日本に組み込まれた地域です。
それは1000年前に、大和王朝に侵略されて日本に組み込まれた東北地方(蝦夷)と同じ立場です。北海道も、アイヌ民族の土地であり、江戸幕府、明治政府により侵略されて、とうとう日本に征服された地域です。日本が単一民族国家というのは間違いだということは既に明白です。日本王朝(天皇家)に制服された地域は、ほかにも隼人や熊襲などたくさんあるということです。
とはいえ、蝦夷はもちろん、琉球王国も、アイヌ民族も、国家(国民国家)を形成できていなかったのですから、尖閣諸島が、現在の国民国家の世界システム(国際法)の中で日本の固有の領土であることは明らかでしょう。
ですから、沖縄県民の自己認識が日本国民であれば、どう考えようとあまり関係はないのではないでしょうか。
ただし、民族自決の権利を行使して、沖縄が琉球国として独立するということであれば、日本にも、中国にも、米国に対しても毅然とした対応ができると思います。沖縄問題を本当に解決するためには、本来は、琉球独立の選択肢があるということを明確にしたら良いのにと思っています。
ただし、琉球国が日本から独立しても、中国や米国の属国としか生きていけないという悲しい現実があるのかもしれません。(すみません。無責任なことを言って)
投稿: 水口 | 2010年10月 3日 (日) 11時21分
法的には沖縄は日本の領土だと思います。だから国際法で決着がつけば、それそれでよいと思いますが、なぜかそのような決着はつきません。それがなぜかよくわからないのですが、とにかくそれが現実のようです。
では領土問題は何で決着がつくのかですが、一つはそこに関わる人たちの思いみたいなものがあるのではないでしょうか。よって沖縄の人たちがどう思うのかは大いに関係があるように思います。
一方、台湾はどうでしょうか。全然騒いでいるようには思えません。騒いでいるのは北京、上海、成都あたりです。
ここからは完全に私の推測ですが、ここで騒いでいる人たちは、この問題と台湾問題をリンクさせているのではないでしょうか。
台湾は日本本土と沖縄以上に、中国大陸から切り離されて社会システムや文化を育んできました。台湾が中国の一部であるという主張は中国国民にはとても大事なことです。彼らは尖閣の問題を主張することで、間接的に台湾は中国の領土であることを主張しているようにも見えます。彼等の熱さが日本人の理解をはるかに超えているのは、そのようにしか説明がつかないと感じます。
なお沖縄が独立するという選択肢については、沖縄の人はとっくに考えていると思いますが、日本の都道府県でも最低の所得であるこの地が独立するのは全く現実的な選択肢ではないと思います。おっしゃるように属国になるしかないわけです。
中国人は少なくとも台湾を何とかしたいという気持ちがありますが、一方日本人は、沖縄に対してそのような気持ちを持っていません。現実的には独立できない状況であるのをいいことに無関心なわけです。
本来、尖閣の問題は沖縄の人の生活に関わる問題ですから、もっと騒いでよいのですが、本土の政治にうんざりしている沖縄の人たちにとって、騒ぐ気になれないのは当然のように思います。
投稿: Take | 2010年10月17日 (日) 10時14分
追記ですが、私が言いたいのは要するに、たもがみさんみたいな人が今回の問題でデモを起こすのと、沖縄の人たちがデモを起こすのでは、たとえば水口先生のような方にとっては随分印象が違うのでは、ということです。
それはまた日本政府や中国にとっても違うのではないでしょうか。
投稿: Take | 2010年10月17日 (日) 10時38分