有期労働契約 最終報告書を読んで
9月10日に厚労省有期労働契約研究会は、有期労働契約の見直しについて最終報告所を提案しました。
総論部分で注目されるのは、次の視点を打ち出したことです。
有期契約労働者の「雇用の不安定さ、待遇の低さ等に不安、不満を有し、これらの点について正社員との格差が顕著な有期契約労働者の課題に対して政策的に対応することが、今求まれられている」として、「いかにして有期労働契約の不合理・不適正な利用がなされないようにするかとの視点が重要」
厚労省の有期契約労働者について、上記のような視点が明確に述べられたのは初めてではないでしょうか。その意味では画期的です。今までは、有期契約労働などの雇用形態の多様化は、労働者のニーズによる選択だという点のほうが強調されてきたと思います。この視点を打ち出したことは、素直に評価したいと思います。
もっとも、具体的な見直しについては次のようなものにとどまります。
①いわゆる入口規制(有期労働契約の締結事由規制)については消極的な姿勢です。
②有期労働契約の年数や回数の上限規制(区切り規制)については積極的です。この規制では、上限の期限が来る前に、有期雇用契約が終了させられるという副作用が生じることになります。
③判例法の雇い止めの法理の立法化は積極的です。
④均等待遇の実施については具体的な提言はありません。
有期労働契約研究会は、上限規制をして正社員化制度などを導入して漸進的に無期化をはかっていこうという方向のようです。もっとも、これについても使用者側の抵抗が強いと思われますが。
私は、有期労働契約締結には、臨時的な業務などの合理的な理由に限定することが必要と考えています。いわば労働契約は無期契約が原則とすべきということです。
原則として無期労働契約となっても、すべて問題が解決するわけではないですが、出発点にはたつことになるのではないでしょうか?
無期原則化すれば解雇規制は緩やかになるかもしれません。しかし、有期労働契約の犠牲のもとでの正社員雇用保障という不公正なルールを変えることのほうが、解雇規制としては公正であり、従来の有期労働者がいっそう保護されることになるのですから解雇規制が緩やかになるわけではないでしょう。
もっとも、無期原則になっても、無期契約=正社員契約ではありませんから、直接的に労働条件の均等待遇が実現するわけでもありませんが。
報告書では、非正規労働者保護法を施行した韓国の実情を随所で触れています。法施行状況と運用の実態について、是非、韓国の政府や裁判所、労働委員会や労働組合にて調査をしてみたいものです。
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