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2010年9月25日 (土)

尖閣諸島 中国人船長釈放

■驚き

公務執行妨害等の被疑事実で勾留されていた中国人船長を、勾留満期前に釈放するという検察には驚きました。

勾留満期に起訴猶予にでもするんだろうと予測していましたが、この時期に釈放なんて、しかも、中国との外交を考慮して釈放なんて、しかも、しかも、那覇地検のたかが次席検事が記者会見で言い訳して検察の独自の判断なんていうなんて???


■なぜ逮捕したのか

そもそも、中国人船長を逮捕したのは誰の判断なのでしょうかね。

海上保安庁の巡視船にぶつけられたって、国外に追い払えばすむはなしです。あえて逮捕するという判断が海上保安庁の現場判断なのでしょうか??

まさか、とうていそう思えません。海上保安庁だけの判断なのか?

海上保安庁は、中国漁船を外に追い払うか、船長を逮捕するのかは、海上保安庁トップが関与しているはずです。もし関与していないのであれば、現場で国益に関する重要な判断をしたとしたら、そちらのほうが問題です。

海上保安庁のトップが関与しているとしたら、国土交通省とも相談しているはずです。大臣などの政治家は逮捕するかどうかの判断に関与していなかったのでしょうか。特に、前原大臣はどうだったのか。

このあたりは、是非、知りたいところです。

■逮捕して、釈放のタイミング

公務執行妨害で逮捕して、まさか起訴なんてことをすれば、外交上の大問題になるということは当然予想された。とすると、ある段階で釈放しなければならない。それは起訴猶予制度のある日本では、国内法に従い、勾留満期の時点で、起訴猶予すればすんだはなしである。

幸い、人身損害はなく、公務執行妨害の故意がなく、逃げようとして、操船を誤った過失犯だ(本当かどうかはともかく)とすれば、起訴猶予の理由にはなり、スジはとおる。

私はてっきり、公務執行妨害罪を強調するから、政府の落としどころがそこなんだろうなあと思っていました。


■ところが、那覇地検の独自の判断、なんて官房長官が言う。(嘘つき!)

那覇地検だけで判断するわけがない。最高検察庁が決めている。(例の大阪地検特捜前田検事の例を見れば、地検レベルで判断できる問題でない)。

最高検が関与している以上、法務省トップと協議をしているのは間違いない。協議していないと考えるほうがばかげている。法務省トップと協議をする以上、官邸(官房長官)と協議をしないわけがない。

にもかかわらず、官房長官が検察の判断だ、といって政治介入はしていないとの弁明は誰も信じない。

政治介入がないと言いつくろうための、嘘である。官房長官が嘘をついた以上、せんごくは辞任すべきである。

大阪地検特捜の問題で、官邸と検察がやりあっているとき、検察が泥をかぶるから、検事総長の責任はなし、ついでに取調可視化法案もストップしてねっ、て取引があったのではないかと邪推したくなるくらいです。


■逮捕したのが間違い。

尖閣諸島は日本が実効支配をしており、日本の領土なんだから毅然と追い払えばすむはなし。これを逮捕した判断が誤り。

逮捕しても、起訴ができるわけがない。

貿易の相手として、今や米国をしのぐ中国と敵対することなんて無理である。しかも、中国は共産党一党独裁で、政経一致の国ある。独裁国が、今回の件で報復してくるのは当然である。

そのことを考えて、逮捕するかどうかを決めるのが、官僚トップや政治家の判断でしょう。現場の海上保安庁や検察庁は粛々と自分の任務を果たすだけの下っ端である。

逮捕を決定した人物が誰で、どのような判断だったのかを検証することが必要です。政治家が関与しているかどうかです。このあたりジャーナリズムに期待したいです。

■意に反して逮捕しちゃったとしても、その後の対策がお粗末

国内法で粛々と処理するなら、勾留満期に正々堂々と、起訴猶予をすれば良かった(そうするから、それまで控えてねって、中国要人に内密に連絡しておけばよい)。

そして、政治家が、「違法の程度は極めて大きいが、故意でなかったようなので、釈放する」と法務大臣などがしっかり政治的説明をすれば良いのです。

それをしないで、那覇地検の次席検事ふぜいに責任を押しつけるなんて、一国のリーダーたちがやるべきことではない。

■逮捕を決定したのは誰かを究明したい。

日本の国益を一番害したのは、逮捕を決めた人間だ。現場の海保が逮捕したいと思うのは当然。でも、それよりも上のレベルの人間が判断しているはず(関与していなかったら、それも問題)。前原国交大臣が決めたのか?

前原大臣が決めたとしたら、国益を一番害したのは前原だ。

起訴しても、日本経済は大打撃をうけて、釈放すれば、外交上の大失態になる。その道を選んだのが前原大臣なら、万死に値する。前原という政治家は、あの偽メール事件と同様に危機管理ができない政治家の資質がない人間ということなる。ただの学生あがり(政経塾)のぼんぼんということだ。

■なぜ満期前の釈放で、那覇地検の独自の判断だなんて言うのか?

これも理解に苦しむ。地検にすれば、勾留満期に起訴猶予すればすむ話で、筋が通る。国内法に従い粛々と処理したということである。満期前釈放では検察も筋が通らない。

■民主党も、これでおしまいか。

民主党。あまりにお粗末。自民党だったら、上手く処理したかどうかはともかく、民主党は、今回、国益を害する大きな失態をしてしまった。

■中国との今後

今年、中国がGDPで日本を抜く。軍事的にもさらに強力になっていく。
10年単位で見たときに、日本にとって、現実的な脅威になることを、まざまざと見せつけた。

今後、尖閣諸島周辺に中国軍が進出してくる(漁民保護の名目で)ということも予想される。

中国人民の不満が噴出すれば、中国政府は政権の安泰のためには、やりかねない。なにしろ共産党一党独裁国家なのだから。

中国は、あと5年、10年して、経済が停滞して、あの階級分裂的な格差に、人民の不満が爆発すれば、反日の気分で不満をそらすことを、中国共産党は当然、やる。

その場合に、海上保安庁でなく、海上自衛隊が対抗せざるをえない。そうなれば、突発的、偶発的な軍事的衝突もありえるであろう。

10年、20年後を見れば、このままいけば経済的に日本が中国からの重大な影響を受け、軍事的圧力を受ける存在になることは必至である。

実際、中国と日本の歴史を見れば、そのような状態のほうが長かったのだから。日清戦争以後のこの100年だけが日本優位であっただけ。

今回の事件は、対中国脅威論を勢いづけ、21世紀、日米同盟維持を日本国民が積極的に支持する分水嶺になることでしょう。民主党政府の愚かな対応は本当に罪深いことです。

■東アジア集団的安全保障体制を

となれば、朝鮮半島の平和条約をつくって、アメリカ、ロシアを含めた6カ国で、東アジア地域安全保障体制をつくるしかないでしょう。

域内での軍事行動は一切行わないことを確認するという方向で、じっくり外向的努力をしていくことしかないのでしょう。

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2010年9月20日 (月)

有期労働契約 最終報告書を読んで

9月10日に厚労省有期労働契約研究会は、有期労働契約の見直しについて最終報告所を提案しました。

総論部分で注目されるのは、次の視点を打ち出したことです。

有期契約労働者の「雇用の不安定さ、待遇の低さ等に不安、不満を有し、これらの点について正社員との格差が顕著な有期契約労働者の課題に対して政策的に対応することが、今求まれられている」として、「いかにして有期労働契約の不合理・不適正な利用がなされないようにするかとの視点が重要」

厚労省の有期契約労働者について、上記のような視点が明確に述べられたのは初めてではないでしょうか。その意味では画期的です。今までは、有期契約労働などの雇用形態の多様化は、労働者のニーズによる選択だという点のほうが強調されてきたと思います。この視点を打ち出したことは、素直に評価したいと思います。

もっとも、具体的な見直しについては次のようなものにとどまります。

①いわゆる入口規制(有期労働契約の締結事由規制)については消極的な姿勢です。

②有期労働契約の年数や回数の上限規制(区切り規制)については積極的です。この規制では、上限の期限が来る前に、有期雇用契約が終了させられるという副作用が生じることになります。

③判例法の雇い止めの法理の立法化は積極的です。

④均等待遇の実施については具体的な提言はありません。

有期労働契約研究会は、上限規制をして正社員化制度などを導入して漸進的に無期化をはかっていこうという方向のようです。もっとも、これについても使用者側の抵抗が強いと思われますが。

私は、有期労働契約締結には、臨時的な業務などの合理的な理由に限定することが必要と考えています。いわば労働契約は無期契約が原則とすべきということです。

原則として無期労働契約となっても、すべて問題が解決するわけではないですが、出発点にはたつことになるのではないでしょうか?

無期原則化すれば解雇規制は緩やかになるかもしれません。しかし、有期労働契約の犠牲のもとでの正社員雇用保障という不公正なルールを変えることのほうが、解雇規制としては公正であり、従来の有期労働者がいっそう保護されることになるのですから解雇規制が緩やかになるわけではないでしょう。

もっとも、無期原則になっても、無期契約=正社員契約ではありませんから、直接的に労働条件の均等待遇が実現するわけでもありませんが。

報告書では、非正規労働者保護法を施行した韓国の実情を随所で触れています。法施行状況と運用の実態について、是非、韓国の政府や裁判所、労働委員会や労働組合にて調査をしてみたいものです。

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