厚生労働省の有期労働契約研究会の中間とりまとめには、有期契約労働者の人数を次のように記載しています。
有期契約労働者は1985(昭和60)年の437万人から2009(平成21)年には751万人(雇用者総数の13.8%)に量的に増加し、また、特にこの間の2,000(平成12)年から3年ほどその増加のピッチが上昇した後、高止まりしている(「労働力調査」)
「有期労働者数の実数が751万人とは少なすぎないか?」という疑問を持ちました。非正規労働者の実数は2009年で1721万人です。うちパート・アルバイトが1153万人、派遣社員が108万人、契約社員・嘱託で321万人です。(これも労働力調査)
契約社員はもちろん有期契約ですし、派遣社員のほとんどが有期派遣労働契約を締結しているはずです。また、パート・アルバイトも、ほとんどが有期契約を締結していると思われます。パートで有期契約でないというケースは先ず例外的だと思います。そうすると少なくとも、1500万人位は有期契約のはずです
厚労省に有期契約労働者数の統計上の根拠を電話をして聞いてみました。すると、この有期契約労働者数は、労働力調査のうち、臨時雇・日雇の人数を根拠にしているそうです。確かに、総務省統計局の労働力調査に発表されています。次の平成21年基本集計の14頁に非農林業の常雇い、日雇い、臨時雇い別の実数と比率が掲載されています。
http://www.stat.go.jp/data/roudou/report/2009/pdf/summary1.pdf
この労働力調査は、4万世帯10万人に基礎調査票や特定調査票に記入してもらって回収するものだそうです。その基礎調査票に従業上の地位に関する質問項目項があります。常雇、臨時雇、日雇について、次のような定義が調査票に明示されて、その中から回答者が選んで記入しています。
常雇:雇用契約期間が1年を超える者又は雇用契約期間を定めないで雇われている者
臨時雇:雇用契約期間が1ヶ月以上又は1年以下の者
日雇:雇用契約期間が1ヶ月未満の者
正規と非正規を調べる調査でも、同じく労働力調査のうち特定調査票に質問項目があり、職場でどのように呼称されているかを択一の中から選択肢を選んで記入させて集計しています。
とすると多くの回答者が「常雇」を選んでいることになります。
ひょっとすると、多くの人は雇用契約期間の意味を取り違えて回答している可能性があります。つまり、雇用期間が1年を超えて働いている人は、雇用契約期間が1年以下であっても常雇として回答しているのではないでしょうか。
これは労働相談で同一企業で5年以上働いているパートの人は、有期契約を締結しているという意識がない場合がまま見うけられるという私の経験とも合致します。
ちなみに、イギリスでも同じような問題が指摘されています。JILPTの労働政策フォーラム(2010年3月8日開催)で、国際比較・有期労働契約の法制度にて、イギリスのケンブリッジ大学の研究者が、統計上の有期労働の把握が困難であるとして次のように指摘しています。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/dl/s0527-4d.pdf
この労働力調査の有期労働の定義には問題がある。調査に回答した労働者自身、自分を有期労働者と定義している場合と、そうでない場合がある。実際にかなりの有期契約労働者が自分をパーマネント(無期雇用)と称していたことが分かった。雇用契約は有期であったとしても、契約が更新されるので、自分は無期雇用労働者だと考えているわけである。
同じことは日本でもあてはまると思われるのです。
日本が14%程度というのは実態とは異なっているのではないでしょうか。この比率はもっと高く(25%くらいか)、今後も広がっていくでしょう。だからこそ、有期契約労働の濫用防止の法政策(継続雇用の保障と均等待遇の実現)が喫緊の課題となっているのだと思います。
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