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2010年7月19日 (月)

労働審判5年目シンポ7月24日(土)

■労働審判5年目シンポジウム

2006(平成18)年4月に労働審判制度が施行されました。年間申立件数は、2009年では3468件に達しました。労働審判制度の成果と実績を踏まえて、今後の課題を議論するシンポジウムを日弁連が主催します。【入場無料・事前申込不要】

http://www.nichibenren.or.jp/ja/event/100724.html

7月24日(土) 午後1:00~5:00 弁護士会館クレオ 霞ヶ関駅

個別労働紛争の本訴・仮処分・労働審判の新受件数(全国)

  訴訟 仮処分 労働審判 合計
平成16年 2480 652   3132
平成17年 2410 619   3029
平成18年 1983 466 877 3326
平成19年 2176 388 1494 4058
平成20年 2359 404 2052 4815
平成21年 3125 655 3468 7248

シンポジウムの出席者は次のとおりです。

基調報告を東京地裁判事の早田尚貴氏がこの間の実績と課題を、私が日弁連の労働審判利用者アンケート結果と各地の運用状況を踏まえた今後の課題を報告します。

パネリストには次の5名が参加されます。

東京地裁労働部の渡辺弘判事
労使からの審判員の各1名
使用者側の石﨑信憲弁護士
労働者側の鵜飼良昭弁護士

コーディネーターは、菅野和夫東大名誉教授(中労委会長)

■利用者アンケートの結果

日弁連が利用者アンケートとして、当事者及び代理人に労働審判についてのアンケートを実施しました。回収した数は少ないため(本人71人、代理人219人)に、統計的な数値としては余り意義はないと思われますが、興味深い結果も出ています。私が注目したのは次の2点です。

(1)労働審判制度の前に利用した手続として、労働行政の紛争解決手続(労働局、労基署、労働委員会等)が多かったという点です。

(2)、当事者は労働審判制度の判定的機能への期待が高いという結果が出た点です。

詳細は、7月24日に報告したいと思いますので、興味ある方は是非、シンポにご参加下さい。

■労働局個別労働紛争あっせん手続と労働審判

6月にJILPTから、「個別労働関係紛争処理事案の内容分析」(労働政策研究報告書№123)を送付していただきました。この内容も大変に興味深く読ませてもらいました。特に、雇用終了事案の分析は詳細で、かつ実態に即したもので、大変に参考になります。

この労働局紛争あっせん処理で解決できなかったケース(あっせんで合意成立したケースは約3分の1)を、どう労働審判の司法手続に橋渡しするかも重要な課題だと思います。労働審判ができないので労働局の個別紛争あっせん手続をする当事者も、そこで解決しない場合には、労働審判に申し立てることを検討します。そして、現に、労働審判の利用者に、そのような人が多い。

ネックになるのは、代理人として弁護士をつける点です(弁護士探しと弁護士費用)。

■労働審判手続と弁護士代理人

この点については次の3つの論点(課題)があると思います。

(1)労働審判手続は、弁護士をつけることを原則とする手続とするのか、本人申立でも利用できる制度とするのか。

(2)弁護士費用負担をどう軽減するか。

(3)労働審判手続を習熟した弁護士をどう育てるか。

(1)の問題は、理念(建前)としては、弁護士がつかなくても利用できる制度であるべきでしょう。しかし、3回以内手続で解決するためには、予想される争点を明示して説得的かつ論理的な申立書を書かなければならないし、労働法の知識も必要です。使用者側がほとんどが弁護士をつけているので、労働審判でのやりとりを考えると労働者の本人申立は一般論としては労働者に不利です。

とすれば、(2)の弁護士を求める労働者にできるだけ負担を少なくして、弁護士を依頼する手続をもうける道を充実させなければなりません。その点で、法テラスが受け皿の一つでしょう。弁護士会には労働審判弁護士斡旋制度が作られているところもあり、そこから弁護士に紹介し、法テラスを利用するという方法があります。

これとは別に、最近は神奈川などで、労働審判や労働訴訟を申し立てる労働者に基金を貸し付ける基金がスタートしたことを聞きました。この貸付は、弁護士を通して申し込み、労働弁護士に貸付けて、勝訴すれば回収するとう仕組みだそうです。

この神奈川の基金は、労働組合員に限らないというのが特色です。組合員であれば、労働弁護士を紹介し、費用も貸し付けるという労組は珍しくないですが、非組合員をも対象とする制度は今までなかったと思います。この基金の場合も当然、審査がありますが、労組と労働弁護士が審査をしますので、労働事件に習熟した弁護士か否かは分かります。

(3)最後に、労働法に習熟した弁護士をどう育てるかという問題ですが、弁護士は専門的自営業ですから、最後は各人の努力ということですから、私も勉強を続けるしかありません。

ただ、労働弁護士は多くは共同事務所に(最初は)所属していることが多いので各法律事務所の中でのOJTがあります(準備書面の添削や証人尋問の実施)。また、各地の労働弁護団の事例検討会や研修会がありますので、事務所を超えた検討を行います。

このように複数の弁護士で労働事件を検討・担当していくなかで、知識と経験を蓄積していくということです。どの法分野でもこの点は変わらないとは思いますが。

(あと実は、弁護団会議や労組との打ち合わせの後の飲み会こそ「奥義」や「奥の手」が語られる・・・。もっとも最近の若手は呑まなくなりましたので、この手の昔ながらの「伝授の場」は少なくなりつつあります。)

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