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2010年6月17日 (木)

荒木尚志教授の「有期労働契約研究会の中間とりまとめ案」解説を聞いて

■有期労働契約研究会の意見書

今月16日の日弁連労働法制委員会にて、有期労働契約研究会の「中間とりまとめ」について、荒木尚志教授に解説をしてもらいました。なお、有期労働契約研究会の有期契約労働者は、パートもフルタイムも対象としての提言ということでした。でも、実数約750万人、比率約14%って、低すぎないかという疑問はありますが・・・。

■国際比較:有期労働契約の法制度

興味深かったのは、国際比較のお話しでした。JILPTの労働政策フォーラムでのイギリス、スウェーデン、ドイツ、フランスの実情です。

入口規制の国として、ヨーロッパのラテン諸国のフランス、ヨーロッパの北の方のイギリス、スウェーデン、ドイツは出口規制という整理でした。

ところが、イギリスの有期契約労働者は約8%、厳格な入口規制をしているフランスが約14%だということに驚きました。結局、フランスは、入口規制をしても、その例外幅広く認められて、有期労働契約が増加しているということです。

ドイツは、入口規制をしている国と理解をしていましたが、現在は、二年間の短期契約であれば入口規制はなく、2年を超える場合には、客観的な正当理由が必要とされているということでした。有期契約労働者の比率も約14%です。ちなみに、日本も約14%という数値だそうです(この数値は???ですが)。

荒木教授のおすすめでしたので、第16回有期労働契約研究会の資料(HPで公表)を読んでみましたが、大変に興味深い内容でした。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/05/s0527-4.html


EU諸国は、高失業率の対策として、無期労働契約の原則から、有期労働契約の活用にシフトしている傾向がはっきり、当該国の研究者が報告しています。

ただ、ヨーロッパ(EU諸国)は、入口規制か出口規制かはともかく、有期労働契約の濫用を防止し、有期契約労働者の均等待遇の実現を目指しているということです。

有期労働契約のまま、長期間に働かせるということは禁じています。2年あるいは3年を超えて有期契約労働が続く場合には、無期契約とみなすことが定められています。また、均等待遇・差別的取扱いの禁止を法制度としているということです。ただし、比較可能な無期契約労働者を捜すのが困難という課題はつきまとっているということです。

EU諸国の傾向は、有期労働契約の禁止ではなく、高失業率対策、特に若者の失業対策として、有期労働契約の活用・利用を進めており、禁止ではなく、その乱用防止と均等待遇の実現の法制度をつくっているということのようです。各国の労働組合は、その政策には満足せず、反対しているようですが。

■韓国の状況

韓国は非正規労働者保護法が制定され、有期契約労働者を2年を超えて使用すると、無期契約に転化したものとみなすという法律(期間制及び短時間労働者保護等に関する法律)が2007年6月30日に施行されています。そして、2009年7月1日に、その2年が経過した。

この期間制労働者の実態調査の結果が、上記HPで韓国労働部発表資料(仮訳)が掲載されていました。これによると、正規職転換比率は36.8%、契約終了が37%、その他が26.1%ということです。約37%が正規職(無期契約)に転換されているということです。

しかし、法規制の2年上限がくる前であっても、2年以上の働いた者の正規職転換率は38%ということで、特に、法規制による正規職転換効果は大きいとは見られないとしています。

■有期契約労働の濫用防止

有期契約の濫用を防止することは一致します。日本の場合には、有期労働契約のまま、5年も10年以上も使用し、都合が悪くなれば、期間終了で雇い止めをするという実態があります。これだけは是正しなければなりません。この点は、理性的な使用者であれば一致するのではないでしょうか。

■入口規制か出口規制かの選択は単純ではないのか

もっとも、有期契約労働者の保護に、入口規制と出口規制のどちらが、有効かは単純に結論を出せないようです。それぞれの国の労働組織や、雇用慣行、解雇規制の強度、法規制の実効性などを総合的に判断しなければいけないようです。

現状の雇い止めの解雇権濫用法理の類推適用については、適用範囲が明確でなく、不安定です。

■有期契約の上限規制について

入口規制のほかに上限規制も選択肢になるのかもしれません。出口規制として、有期契約の上限(年と更新回数の制限)を定め、上限を超える有期契約は、無期契約とするという規制も選択肢です。しかし、そうなると、上限規制の前に雇い止めをするという「副作用」が生じてしまう。

荒木教授は、その副作用への対策として、「有期契約の終了する際の、終了手当を導入する」ことも一案だとコメントされていました。

夏に有期労働委契約研究会の最終報告(とりまとめ)が予定されています。参議院選挙結果にも左右されるでしょう。例えば、新自由主義のみんなの党が伸びて、民主党と連携するようになったら頓挫するかもしれません。
でも、有期契約労働者の保護の立法化は、若者や、日本の未来にとって必要不可欠だと思います。菅首相の所信表明では、雇用については次のように触れていました。

非正規労働者の正規雇用化を含めた雇用の安定確保、産業構造の変化に対応した成長分野を中心とする実践的な能力育成の推進、ディーセント・ワーク、すなわち、人間らしい働きがいのある仕事の実現を目指します。

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